2 公園でハラキリ
そして翌朝、私はいつもの日課の新聞配達に励んでいた。
探偵事務所の仕事があるとはいえ、アルバイトの方もおろそかにはできない。
稼げるところで少しでも稼がないと、莫大な借金はとても返せないのだ。
ああ、十五の身空でなんてかわいそうな私・・・・・・。
まあ、そんな事を嘆いたところで誰も助けてくれないから、結局自分が頑張るしかないんだけどね。
それにしても潟奈ちゃん(・・・)(勝手に親しみを込めて呼んでみる)はまた襲ってくるんだろうか?
人殺しをした事がないなら、そんな物騒な仕事やめて、
もっとまともな仕事をすればいいのに(私もそうだが)。
あの真面目そうな性格と器量のよさなら、どんな仕事でもできそうな気がするけど?
そもそも家庭の事情はどうなっているんだろう?
私みたいに訳ありなんだろうか?
だから殺し屋なんて危ない稼業に手を染める事になったの?
ああ、こんな事を考え出すと、直接彼女と会って色々と聞いてみたくなってきた。
でも今彼女と遭遇したら、彼女は私が柊さんだと思い込んでいるから、また私の命を狙ってくる訳よね?
ああもう、どうすればいいの?
そんな事をモンモンと考えながら公園の前に差し掛かった、その時だった。
公園の砂場の所に人影があるのに気が付き、私は思わず足を止めた。
その人物とは何と潟奈ちゃんで、今日は白鳥学園の制服ではなく、真白な無地の着物を身につけている。
な、何であの子はこんな早朝に、しかもあんな恰好で公園に居るの?
そう思った私は思わず近くの木の陰に隠れ、彼女の様子を観察した。
彼女はひどく思いつめたような顔をしていて、砂場の上に正座をすると、
おもむろに左手に持っていた鞘から愛刀の瞬を抜いた。
そして懐から白い布を取り出して刀身の真ん中あたりを包んで両手に持ち、
切っ先を自分のお腹に向けたではないか。
あ、あれってまさか、せ、切腹⁉
もしかしてあの子、今ここで切腹しようとしてるの⁉
そう悟った私は後先考えずに潟奈ちゃんの方に向かって駆け出し、声を荒げた。
「ちょ、ちょっと何してんのよ⁉バカな真似はやめて!すぐにその刀をしまいなさい!」
私に気づいた潟奈ちゃんは、自分に向けた刀を一旦鞘に納めた。
そして私に三つ指を突き、深々(ふかぶか)と頭を下げて言った。
「昨日はあなたを殺す事ができず、本当に申し訳ありませんでした。
この責任を取り、私はここで切腹いたします」
「いやいやいや!切腹なんてしなくていいよ!
それに私を殺せなかった事を謝らなくてもいいから!私はまだ死にたくないの!」
「そう、なんですか?ですが私は、このまま殺し屋としては生きていけない身の上。
ならばここで切腹し、この命を絶つ他ありません!」
「だから切腹はダメよ!とにかく落ち着いて、あっちのベンチに行って話そう?
何でも相談に乗るよ?ね?」
私が必死に諭すようにそう言うと、潟奈ちゃんは力なくうなだれ、静かに頷いた。




