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シティーガールハンター2  作者: 椎家 友妻
第四話 殺し屋の弱点と人生相談
25/37

1 彼女は未経験

 「えーと、どうして彼女はあの時、あのまま逃げて行っちゃったの?」

 その夜、事務所に戻った私は綾芽に尋ねた。

それに対して綾芽は再びかけたビン底眼鏡をキラリンと光らせ、声高々にこう叫んだ。

 「それは、彼女が処女(ヴァージン)だったからです!」

 「はい?」

 目を点にした私に、綾芽はもう一度叫んだ。

 「処女(ヴァージン)です!」

 「いやそれはもういいわよ!

だからどうしてそれが彼女の弱点で、あの時の行動と結びつくのよ⁉

意味わかんないんだけど!」

 私が怒りの声を上げると、綾芽は右手の人差し指をチッチッチッとやりながらこう続ける。

 「おっと、処女と言ってもアッチの話じゃあありませんよ?

私が言っているのは、殺しの方です。

(またた)きの潟奈(かたな)は実は殺しの処女。

つまり、今まで一度も人殺しをした事がないんですよ!」

 「へ、そ、そうなの?」

 私が頓狂(とんきょう)な声を上げると、(かたわ)らの園真会長が至極(しごく)真面目な口調でこう付け加える。

 「まあ、あっちの方でも処女である可能性は十分あるわね」

 「確かに!」と綾芽。

 「いや、だからあっちの話は今はどうでもいいでしょうが!

それより一度も人殺しをした事がないって本当なんですか?

だって彼女はアヤメビト何とかの、最強の殺し屋なんでしょう?」

 私が尋ねると、園真会長は髪をふぁさっとかきあげながら言った。

 「前にも言ったけど、殺す(・・)能力(・・)と(・)戦う(・・)能力(・・)は(・)別物(・・)なのよ。

どっちかが百なら、もう片方も百とは限らない。

瞬きの潟奈の場合は殺す能力がゼロで、戦う能力は百っていう、

戦う能力だけ(・・)が最強の殺し屋って事よ」

 「そ、そうなんですか・・・・・・」

 園真会長の言葉に、妙に納得する私。

それは私も正直、あの子と話して感じてはいた事だった。

あんな礼儀正しくて性格もよさそうな子が、お金の為に人殺しをするとはとても思えない。

わざわざターゲットに殺人予告状を送りつけるのも、脅迫というより、

無意識に相手に気を付けてとメッセージを送っていたんじゃないだろうか?

もしくは、逃げる猶予(ゆうよ)を与えるためとか・・・・・・。

 そんな事を考えていると、園真会長は腕組みをしてこう続けた。

 「まあそういう訳だから、柊さんの命はしばらくは安全でしょう。

今後の相手の動きを予測するとすれば、

アヤメビトコーポレーションが別の殺し屋を送り込んでくるか、

瞬きの潟奈が殺しの処女(他に言い方はないの?)を卒業し、

再び柊さんを殺しに来るか、

もしくは殺しの依頼主が、しびれを切らして直接柊さんを殺しに来るか」

 「どう転ぶにしても、一件落着には程遠い状況ですね・・・・・・」

 ため息交じりに私がそう言うと、園真会長は私を安心させるような口調で言った。

 「大丈夫よ、向こうは幸いにも詩琴の事を柊さんだと思い込んでくれたから、

殺しの依頼主が直接殺しに来ない限り、()を(・)狙われる(・・・・)の(・)は(・)()()だけ(・・)よ。だから安心して、詩琴」

 「いや全然安心できませんよ!むしろ私にとっては状況が悪化してますよ!」

 「大丈夫ですしぃちゃん!誰が襲ってこようと、また今日みたいに見事に私が撃退してみせます!

しぃちゃんは私が命に代えても守ってみせますよ!」

 「はいはい、それは頼もしい限りだわ」

 綾芽の言葉を軽くあしらいながら、私は大きなあくびをした。

まあ、今日は無事に殺し屋を退ける事ができたから、それでよしとするか。

また襲ってきたら、その時はその時考えよう。

 いつもよりどっと疲れた私は、早く寝て翌朝の新聞配達に備える事にした。



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