4 いきなり最強
「へ?」
頓狂な声を上げる私に、綾芽が言葉を続ける。
「だから、あの殺人予告状は本物の(・)殺し屋からの本物の(・)殺人予告状なんですよ。
柊彩さんは、何者かに殺しの依頼をされた殺し屋に、命を狙われているんです」
「えぇっ⁉だってさっき綾芽も、あの予告状は胡散臭いみたいに言ってたじゃない⁉」
「そう言わないと柊さんが不安になるでしょう?
いきなり本物の殺し屋から本物の殺人予告状が送りつけられたなんて知って、
生きた心地がしますか?」
「そ、そりゃあ、確かに・・・・・・」
綾芽の言葉にグゥの音も出ない私。
そんな私に園真会長はこう続けた。
「あの殺人予告状に、アヤメビトコーポレーションって書いてあったでしょう?
あれは表向きは都市伝説みたいな存在なんだけど、
本当に実在する、少数精鋭の殺し屋集団なのよ。
報酬さえ払えばどんな相手でも殺してくれる。
例えそれが家族や友達でもね。
しかも秘密は絶対守ってくれるから自分は一切手を汚さずにターゲットを殺す事が出来るし、
依頼料は意外と安いから、ちょっとバイトでもすれば人一人殺すくらいのお金は用意できる。
つまり、人殺しのコンビニエンスストアーみたいなものね」
「そ、そうなんですか・・・・・・」
そんな組織が本当にあるなんて。
しかもそんな恐ろしい組織に自分のクラスメイトが狙われているなんて。
これはいきなり、とんでもなく危ない仕事を受けちゃったんじゃあ・・・・・・。
私がとてつもなく不安になっていると、そんな私を励ますように綾芽が言った。
「大丈夫ですよしぃちゃん。
相手がプロの殺し屋でも、それは人を殺す術に長けているだけで、
戦闘能力が高いという事ではありません。そんな相手に私は負けませんよ」
すると園真会長がそれに冷や水を浴びせるようにこう言った。
「あ、ちなみにこの瞬きの潟奈って、多分アヤメビトコーポレーションで一番強い殺し屋で、
戦闘能力もハンパないと思うから、綾芽も今回は命のやり取りをする覚悟をしなさいよ」
「ちょっとちょっと⁉いきなりそんなとんでもない殺し屋が出てくるんですか⁉
最初からラスボスが出てくるようなもんじゃないですか⁉」
「うるさいわねぇ、学校の中で大声で殺し屋って叫ぶんじゃないわよ。
そもそもあっちも仕事で殺しをしてるんだから、
漫画みたいに弱いやつから順番に出てくる訳ないでしょう?」
「そ、そりゃそうですけど・・・・・・」
園真会長の言葉に次の言葉が見つからない私。
でもそれじゃあ、綾芽の身も危ないって事じゃないの?
精鋭の殺し屋集団で一番強い殺し屋なんだよ?
そんなのいくら綾芽でも勝ち目がないんじゃ?
と思って綾芽を見ると、しかし綾芽はむしろ愉快そうに目を輝かせて言った。
「それはおもしろい。最近骨のない相手ばかりだったので、久し振りに本気で戦えそうですね。
腕が鳴ります」
「綾芽、分かってると思うけど、殺しちゃダメよ。
自殺させてもダメ。
相手の依頼主を突き止めなきゃいけないからね」
「わかってますよ」
何か、とんでもなくおだやかじゃないやりとりをしてるんだけど。
やっぱりこの人達の仕事って、こんなにハンパなく物騒な仕事だったのね。
これじゃあ私、命が五個くらいあっても足りないんじゃないの?
そう思いながらとてつもなく憂鬱な気持ちになっていると、園真会長が私に言った。
「詩琴、あなたは殺人予告の土曜日まで、柊さんの近くに居て、
彼女の命を狙いそうな相手を探りなさい。
事前にわかれば殺し屋とやり合わなくて済むかもしれない。
それから綾芽、あなたは柊さんの周辺に殺し屋が来ていないか見張っていなさい。
土曜日が予告の日とはいえ、それが守られる保証はどこにもないからね」
園真会長の言葉に、私と綾芽は真剣な顔で頷いた。
こうなったら覚悟を決めるしかない。
何としても柊さんを、殺し屋から守るんだ。
園真探偵事務所での私の初仕事が、幕を開けようとしていた。




