3 予告状
『突然のお便り、恐縮いたします。
誠に勝手ではございますが、あなたのお命を頂戴したく存じます。
つきましては今度の土曜日の正午、丸山第三ビルの屋上にお越しいただきたく思います。
その際には当方懇切丁寧な殺法にて、あなたの命を頂戴いたします。
尚、この事はくれぐれも口外なさいませんよう、切にお願い申し上げます。
アヤメビトコーポレーション所属、瞬きの潟奈より』
「・・・・・・なんか、えらく丁寧な殺人予告状ですね・・・・・・」
私は率直に思った事を口にした。
それに対して柊さんも、恐怖よりも戸惑いの様子でこう言った。
「はい、私自身、これをどう解釈すればいいのかよくわからなくて」
「物凄く遠まわしなラブレターだと解釈できなくもないですけどねぇ」
綾芽が口をとがらせながら言う。
確かに、これがまともな殺人予告状だとは思えない。
そもそもこれから命を狙う相手に、こんな丁寧な予告状を送りつけるだろうか?
おまけに日にちや時間まで指定して。
これじゃあこっちがその場所に行かなければそれで済むんじゃないの?
そんな中柊さんはうつむき加減で言葉を続ける。
「こんな内容なんで、警察に相談しても取り合ってもらえそうにないし、
かと言って指定された場所に行かなければ、後で何があるかもわからない。
私、どうすればいいのか困ってしまって」
「なるほど、それでウチに依頼をくれたという訳ですね」
園真会長は納得したように頷き、立ち上がって言った。
「この依頼、受けましょう。
おそらくこの予告状の主は、今度の土曜日まではあなたを殺しに来る事はないはず。
そして今度の土曜日、私たちがあなたの代わりに指定された場所に赴き、事の真相を確かめて来ます。
ただのイタズラならそれでよし。
万が一本当に殺し屋が待ち構えていたら、速やかにそれを排除します」
「あ、あの、本当に大丈夫でしょうか?
もし万が一本物の殺し屋が待ち構えていたら、あなた方の命が危険な目にあうんじゃ・・・・・・」
心配そうに柊さんはそう言ったが、園真会長はニコッと笑ってこう返す。
「心配には及びません、それが私達の仕事ですから。
仕事が完了しましたら報告書と報酬の請求書を送りますので、
指定の口座にお金を振り込んでください。それでは」
園真会長はそう言って立ち上がると、スタスタと資料室を出て行った。
それを見た私と綾芽も慌ててその後に続く。
そして廊下を歩きながら、私は園真会長に尋ねた。
「何か、随分あっさりと依頼を引き受けるんですね。
あんなうさんくさい殺人予告状、無視してもよさそうなものなのに」
それに対して園真会長は、至って真面目な口調でこう言った。
「あれ、ホンモノよ」




