10 綾芽の事情
「はぁ・・・・・・」
その日の放課後、バス停へ向かう帰り道で、私は深いため息をついた。
昼休みの事があり、由奈ちゃんはすっかり私と綾芽を心配してしまい、
いつもの明るい笑顔を見せてくれなくなってしまったのだ。
自分が危ない仕事にかかわるかもしれないという不安より、由奈ちゃんを心配させてしまう事が辛かった。
そんな私の心中を察したのか、綾芽は珍しく真面目な口調で言った。
「由奈さんも、私たちがこの探偵事務所の仕事で怪我ひとつしない所を見せれば、
きっと安心してくれますよ。
そのためにも、私はしぃちゃんを絶対に守ります。
それとも、やっぱりこんな物騒な仕事、かかわりたくないですか?」
綾芽に対して私は、気の抜けた声でこう返す。
「そりゃあかかわらなくて済むならそうしたいけど、そうも言ってられないもの。
私は園真会長にお金を返さなくちゃいけないけど、
普通にアルバイトをしてるだけじゃ、とても返せる額じゃないし。
ねぇ、あんたはどうして園真会長の事務所で働いてるの?
あんたも園真会長に多額の借金があるの?」
私は前から疑問に思っていた事を聞いてみた。
すると綾芽は少し困ったような笑みを浮かべてこう答えた。
「残念ながら、その質問にはお答えできません。
しぃちゃんに、せっかくできたお友達に、嫌われたくないので」
「ふうん?」
私に嫌われるような理由?
それは少し好奇心をそそられる事だけど、多分綾芽は本当に言いたくないと分かったので、
私はそれ以上聞かない事にした。
その代わり、違う質問をぶつけた。
「じゃあさ、あんたはこの前みたいに悪い奴をやっつける時、いつも素手で戦うの?
園真会長みたいに武器とか使わないの?」
すると綾芽は一転して目をキランと光らせ、よくぞ聞いてくれましたという笑みを浮かべてこう言った。
「もちろんありますよ。あの時はたまたま素手で戦っただけです。
ちょっとメンテナンスに出していたんでね。
でも、况乃さんみたいな、法を犯したモデルガンなんかじゃないですよ?
もっとカッコよく敵をやっつける、私の相棒なんですから」
「へぇ、それってどんな武器?今持ってるの?」
私がそう言うと、綾芽は右手の人差し指をチッチッチッとやってこう返す。
「今は持ってませんが、今日メンテナンスが終わるはずなので、今から取りに行きます。
しぃちゃんも来ますか?」
その申し出を、私が断る理由はなかった。




