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シティーガールハンター2  作者: 椎家 友妻
第一話 新しい生活と狩人の相棒
1/37

1 忍者のような新聞配達

 タッタッタッタ。

 「ゼェッ、ゼェッ、ゼェッ」

 ポイッ、ゴトン。

 タッタッタッタ。

 「ゼェッ、ゼェッ、ゼェッ」

 ポイッ、ゴトン。

 まだ日が明けるかどうかの早朝。

私は、小脇に新聞の束を抱え、それを決められた家のポストに投函(とうかん)しながら走っていた。

いわゆる新聞配達というやつだ。

 私の名前は習志野(ならしの)()(こと)

この春から近所の()(てい)阪田(はんた)高校に通っている一五才の高校一年生。

本来なら親友の舞川由奈(まいかわゆな)ちゃんとバラ色の高校生活を送るはずだったんだけど、

私の両親が多額の借金を残して夜逃げしてしまい、

その肩代わりをしてくれた園真况乃(そのまましの)会長(同じ四邸阪田高校で生徒会長をしている)の営む園真探偵事務所で助手として働く事になった。

働くといっても給料はなく、逆にこの前悪徳金融業者から守ってもらった報酬と、

肩代わりしてもらった両親の借金、

それに私の生活費や学費もろもろ含めて、

園真会長に返済していかなくちゃならない。

なので私はこうして毎朝新聞配達のアルバイトに精を出しているのだ。

しかも園真探偵事務所での助手の仕事はとにかく体力勝負だという事で、

新聞配達は自転車ではなく走って配達しなさいという園真会長の指示(命令と言ってもいい)で、

私はゼェゼェ言いながら走って新聞配達をしているのだ。

朝っぱらからジャージ姿で新聞配達をする私。

私のバラ色の高校生活は一体どこへ行ってしまったんだ・・・・。

 そんな中、私と同じくジャージ姿で新聞の束を小脇に抱えた、

私より一回りくらい小柄な少女が、住宅街の屋根(・・)の(・)()を、

まるで忍者のような軽快な足取りで駆けていく。

彼女の名前は花巻(はなまき)(あや)()

私と同い歳で、同じ四邸阪田高校に通う高校一年生。

深みのある赤髪を左右に分けてお下げにし、丸いビン底眼鏡をかけている(伊達(だて)らしいけど)。

明るくて能天気で天然でおっちょこちょい。

しかしその正体は園真探偵事務所に雇われている凄腕の始末屋で、

その世界(どの世界かは知らないけど)では

『シティーガールハンター』

という通り名があり、泣く子も黙る恐ろしい狩人として知られているらしい。

 普段はただ騒がしくておちゃらけているだけの女の子だけど、

実は屈強(くっきょう)な大男を素手で(なぐ)り飛ばすような(うで)(ぷし)と、忍者の様な俊敏(しゅんびん)な動きを兼ね備えている。

なのであんな風に住宅街の屋根の上をスイスイ駆けて行くくらい、あの子にとっては造作もない事なのだ。

 そんな彼女、綾芽は、屋根の上から一部の新聞を手に取り、家のポスト目がけて投げ放つ。

それは文字通り矢のように飛んで行き、その家のポストに突き刺さるように納まっていく。

それを次々に繰り返し、物凄いスピードで新聞の束を減らしていきながら、

道路を普通に走る私に手を振りながらこう叫ぶ。

 「しぃちゃん(私の事だ)も、このやり方の方が早く新聞が配れますよ!」

 いや、私は屋根の上をそんなに軽快に走る事はできないし、

新聞を矢のように飛ばして寸分狂わずポストの中に納める事もできない。

つまりあの子は心身ともに普通の規格からは大きく外れているのだ。

私も運動は得意な方だけど、あんな忍者みたいな動きはとてもできない。

でもあの子は園真探偵事務所における私の仕事のパートナーで、

私はあの子と共に、事務所に依頼される様々な仕事をこなしていかなければならないらしいのだ。

本当に、やっていけるのかしら?

私はただただ、不安と絶望感しか湧いてこないのだった。



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