転生しました
ん?
真っ暗だ。
ゲームやりながら寝落ちして夜になってしまったのか。
目が開かない。
体も動かない。
なんだかとても暖かくて気持ちの良いところ、水の中に浮かんでいるみたいだ。
気持ちいい。
このまま寝よう。
*******
突然の光
苦しい!
「んぎゃあああああ」
言葉を発したいのに泣き叫ぶような声しか出ない。
「おめでとうございます!元気な男の子です!」
「おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
突然周りが騒がしくなり、おめでとうの大合唱。
何なんだいったい?と思いながら口から出るのは叫び声だけ。
先程まで気持ちのいい場所にいたのにいきなり苦しい場所に出され、叫ぶことしかできない。周りを見たくても目が開かない。
どんな状況か確認したいのに俺にできるのは叫ぶことだけ。
とたん、柔らかく暖かいものに抱き上げられた。
体が濡れていたようで、一度お風呂に入れられ、体をふかれる。
柔らかい布に包まれ、そっと誰かの腕に渡る。
「生まれてきてくれてありがとう」という優しい声色の声と共に柔らかく抱きしめられた。
腫れぼったい瞼を強引に開き顔を覗く。
俺を見下ろす巨人。
とてつもなく美しい女性。
金色に光り輝く柔らかな髪とサファイヤのような瞳をもつ優しげな笑みを讃えている女性。
大きくて怖いはずなのに彼女に抱きしめられると全身に安心感が行き渡る。
バタン!と大きく扉が開く音が後方から聞こえ、
「生まれたか!」
と威勢の良い、それでいて威厳のある声が聞こえる。
「男の子ですよ」と、俺を抱えた女性が声をかけると女性よりも黄金色に輝く髪の男が近くに寄ってきて俺の顔をじっと見る。
男は端正な顔をしているが正直顔が怖い。眉間に皺を寄せて俺を睨みつけているように見える。
数秒睨んでいたかと思うとその目つきの悪い瞳からボロボロと大粒の涙を流し始めた。
「よくやった、、、」
これはもう間違いない。
俺はどこかに転生して産まれてきたのだ。
この物語の中にしかいないような美形の男女が俺の両親。
ということは俺は死んだのか?
頑張って最後の記憶を思い出す。
「光の乙女の楽園」をプレイしていた。
いつも通り主人公マリアを育成しながら攻略対象者たちを無視して、、、
途端胸の痛みを思い出す。
そうだ、いきなり胸が握り潰されそうなほど苦しくなり暗転した。一瞬テレビの画面が激しく光り、目を瞑っていてもテレビが光ったのを感じ、そこで意識を手放したのだ。
「この子の名前はシャルルだ。
シャルル・ド・リュミエール!」
ちょっと待て。
考え込んでいると父が放った不穏な言葉が聞こえた。
シャルル?
それは俺がやっていた乙女ゲーの「光の乙女の楽園」の攻略対象者である第一王子の名前ではないか。
まさかな、と思いながらもう一度両親の顔をまじまじと見る。
何か既視感を感じる2人の顔立ち、間違いない。
俺が知っているシャルルの顔の面影がある。
俺の転生先は乙女ゲー「光の乙女の楽園」の世界なのだ