私が辿り着いた場所……3/4
目の前の黒い魔物……ダークロードはその眼を見開くと、手を冒険者たちにかざした。
そしてその手から強烈な電撃を発射させる!
『ンッ!うわぁぁぁぁぁぁぁッ』
真っ白な光、そして鼻の奥を駆ける、焦げた臭いと痛み。
全員が感電して悲鳴を上げた。
特に電撃系の攻撃をレジストする護符を装備していなかった、アラン、ニック、ハニーはそのまま気絶してしまう。
「く、くぅぅ……」
ただ一人、電撃に耐えられた“焼き肉串”。
しかし全身の筋肉が引き攣り、その痛みに顔をしかめる。
だが自動回復の効能がある指輪から癒しの力が指から筋肉に沁み渡り、腕を中心に体から筋肉の張りが急速に解けた。
その様子を見て、ダークロードは感心した。
『ほう、今の一撃を耐えるとは中々ではないか。
これは中々楽しめそうじゃ。
ダークロードに戻ったのは10年ぶりじゃから、もう少し楽しみたいのでの。
……“焼き肉女”お前を始末するのは、後にしてやろう』
次に彼はふっと姿を消した。
「!」
彼女はとっさに、気を失っているハニーの方に目を向けた。
……何故かはわからない、アランでもなく、ニックでもなく、ハニーに目を向けた。
そしてそこには手にした杖を、今まさに振り下ろさんとする、ダークロードの姿があった。
「させるかっ!」
女盗賊は叫び、そして瞬時に足を動かす。そして数メートルの距離を一瞬で縮めて見せた。
……縮地と呼ばれる技。
迫った彼女はダークロードの脇腹に、メテオリクのダガーを突き立てた!
『ぐおっ!』
思わず苦悶の声を上げ、そして瞬間移動でその場から離れたダークロード。
「はぁはぁ、はぁ……」
肩で息をし、恐怖に駆られて目線を方々(ほうぼう)に投げる“焼き肉串”。
『お、おのれぇ……』
声は空から響き渡った。
ハッとなって見上げる女盗賊。
そこには紫と銀、赤い色に彩られた服を纏った、黒い男が恐ろしい形相でこちらを見下ろしている。
『女ぁ……この始末は血で贖わせるぞっ!』
そう言うとダークロードは手を空に掲げた。
やがてその声に応えるように、地面から、夕方の空から、あらゆる場所から禍々しきオーラが掲げた手の上に集まる。
(アレはヤバい!)
これが何かは分からないが、明らかにやばいモノであると思えた彼女は、急いで逃げようと考える。
しかしもし逃げたら、気を失っているアランやニック、ハニーはあの一撃から逃げる術がない事に気が付いた。
「…………」
この時彼女は倒れているニックの襟口からペンダントが鎖ごと外に出ているのが見えた。
それはエアタクシーの魔法の様に、瞬間移動を可能にするアイテム、キマイラの翼のレプリカである……
見た瞬間、少し迷った。
だけど次に首を振って自分に言い聞かせる。
(先に待っていてもらおう……)
一人になるのは嫌だと、もう一人の自分が囁く。
それを押し殺して彼女は、ニックの持っているキマイラの翼のレプリカに指を掛けて呟いた。
「……翼よ、彼等をフランフランのマーキング地点へ」
光の柱がこの瞬間空から降りて来た。
そこから逃げるように走り去る”焼き肉串”。
光に飲み込まれる3人の男。
その光の柱に向けて、空中に居るダークロードが絶叫した。
「くらうがいい……大いなる闇の力っ!グレルイン」
振り下ろした手より放たれる巨大な闇の波動は、光の柱をなぎ倒すように飲み込む!
ドゴォォォォォォォォォッ!
空中庭園全体を揺るがすほどの、振動と破裂音。
響き渡る轟音の中、庭園の一部が崩落する!
そこから免れた女盗賊は、仲間達が居た場所を見た。
その圧倒的な威力と被害に驚く彼女に、わき腹から血を流すダークロードが言った。
『チィ、奴等だけでも先に血祭りにあげようと思ったがダメだったか。
経験値も入らなかったわ……』
「はぁはぁ、ふふ……
上手く行って良かったわ」
『減らず口か?小娘……
だが、仲間が居なくなった様じゃのぉ……
これでますます危機的状況になった』
「あらそう?そうは思わないけど」
『何?』
「……男に私の10分の1でも根性があれば、彼等はあんな所に居なかった。此処で気絶もしていなかった。
私一人で十分よ、コウゾウ」
“焼き肉串”がそう呟くと、ダークロードは、思わず目を見開き、此処で強がる彼女に微笑む。
『面白い女だ“焼き肉串”褒めてやろう』
それを聞いて、いつもの挑発的な笑みを控えめに浮かせた。
「ちゃんと名前を言ってくれたありがとうコウゾウ……」
『意地を見せるか……大したモンだ』
自分を褒めるダークロードの言葉……
だがそれを聞いても正直なところ“焼き肉串”は(ダークロードが吐く言葉を聞いているだけで心が折れそうになる……)と思った。
何もできないまま終わりたくない、とにかく自分を奮い立たせたかった、奮い立たせるために、自分は彼等と違うと言い聞かせた。
(動け足、動けっ!)
そして走り始めた女盗賊、彼女に向けて幾つもの氷柱がダークロードのかざした掌から発射される。
ドン、ドン、ドン、ドンッ
空中庭園の床を破壊しながら、その場に突き立つ氷の柱。
それを避けながら、焼き肉串は護符をかざして火の魔法を、空に居るダークロードに発射する。
その瞬間パッと明るむ夕暮れの空。
『小癪な、小娘じゃ……』
その一撃を楽しげに受ける、ダークロード。
(通じて無いの?)
その耐久性に驚く。
そんな彼女の引き攣った表情に思わず笑みをこぼした、ダークロード。
……此処で意外な人物が声を上げた。
「あ、コウゾウさん」
不意に、この戦いを見ていたオスカル・アンドレ・ロマンが口を開いた。
ダークロードは思わず『なんじゃ?』と声を返すと、魔公爵はこう言った。
「こんな時に言うのは悪いが……
壊した庭園は、後で直してもらうからな」
『アン?』
「グレルインと、氷の魔法で壊した分だよコウゾウさん。
だから、これからは氷の魔法ではなく、別の魔法でお願いしたい。
できれば電気とか、風とかの非破壊系の魔法でな……」
『イラン事言うな!
ワシが後で直せばいいじゃろうが!』
「まぁそうだが、今壊さなければ後で楽だと思う」
ダークロードは(いやいや、お前の為にワシは戦っているんだぞ?)と思い、イライラしながら『お前……』と口を開きかけた。
それを察していた魔公爵は、親身な雰囲気を発しながらこう言って話を遮る。
「コウゾウさん、これまで生活の面倒は私が見た。
特に、あのドラ孫の悪行には、私は色々目をつぶって来たぞ。
コウスケに言いたいことがあっても、私は堪えて来た」
それを聞いた瞬間、ダークロードは唖然とした表情を浮かべた。
そしてこれまで孫が起こしてきた色々な問題の数々が頭を過ぎる。
『…………』
目線を斜め上に在る、空のどこかに投げながら口をぽかんと開けたダークロード。
そんな老夫にオスカル・アンドレ・ロマンが告げる。
「……私はコウゾウさんを立てて、きっとこれからも堪える気がする」
『…………』
そう言われて思わずこれからの事も考える、爺さんダークロード。
これからも堪える……と言われてこの魔公爵を黙らせる気持ちが失せる。
そんな彼の胸の内を透かして魔公爵は「コウゾウさんが居なくなっても、私は義理堅い男であるだろう」と言った。
それを聞きダークロードは思わず老後、そして自分の死後あのドラ孫の将来に思いをはせた。
『ふ、ふぅむ』
自分が居なくなった後の事……
戦うこと以外は、大概得意な魔公爵に、自分のアホな孫の面倒を見て貰わないと、孫は破滅しそうだった。
『分かった、壊さなければいいのじゃな?』
思わずそう返したダークロード。
オスカル・アンドレ・ロマンはそれを聞くと、にやりと笑って「ああそうだ」と答えた。
それを聞き、しぶしぶと言った感じで空中から下に降り立つダークロード。
『出力を抑えた技でないと、あの小娘と戦えんとはとんだ足かせじゃわい……』
そうぶつぶつと言う彼に、女盗賊が声を掛けた。
「あら下りてくれて嬉しいわ。
あのまま空に浮いているんだと思った」
『ワシもそのつもりじゃったが、魔公爵殿が力を抑えて欲しいと言うでの。
どれ、手心を加えんと行けんようになった』
「へぇ……ダークロードなのに、魔公爵の手下なんだ。
それも、最も弱い第1デモンズロードの」
『ふふ、まぁワシは彼の先輩で、彼はワシの後輩じゃ。
デーブは口が悪いが器量はある、確かに弱いがそれだけに魔王様から目を付けられることも無い。
長く付き合ってみると、良い所がたくさんある奴じゃ。
だからここの魔物も、皆デーブに逆らわん。
デーブより強い魔物も居るが、デーブを倒そうと言う者は此処には居らんなぁ』
それを聞きながら“焼き肉串”はダガーを構え直した。
そしてダークロードは微笑んでこう告げる。
『せっかくじゃ、お前さんにハンデをやろう。
ワシは魔法を使わず杖で叩きのめす。
これならあのうるさい小僧(オスカル・アンドレ・ロマン)も、とやかくは言うまいしなぁ』
そう言うや否や、ダークロードは掌の中に黒曜石の杖を出現させる。
『この杖はワシの愛用の杖じゃ。
ワシを魔法だけの男と思うなよ、小娘……』
「フン、小娘小娘ってうるせぇよ……クソ爺」
そう言うなり”焼き肉串”は再び縮地で距離を詰めてダガーを振るった。
ダークロードはそれを杖で払いのける。
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