第7の男 奇才・クワタの抵抗!5/6
―続いて2個目の宝石があるバラ園。
「皆さんが知っているヤスイって、まるでインチキ占い師みたいに『皆さん、王妃様のご意思を尊重しなければ……』って真面目腐って言っていたと思うんですけど、アレ違いますからね!」
クワタはハイテンションで、ヤスイの秘密を暴露し始める。
どういうこと?
そう言いたげな感情を表情に出したラ★ニーズに、クワタは物マネを交えて言う。
「普段の奴はこうです!
『クワタぁ、酒ばかり飲んでお前は本当にむかつくぎゃぁ。
サワちゃんは見た目は良いかもしれないギャア、だけど本当の可愛さは中身だギャぁ』
こんな感じですからね!」
クワタの物マネは悪意があるのかエンタメ重視なのか、とにかく変な感じを誇張した。
この芸風に“焼き肉串”達はゲラゲラ笑いだす。
「ヤスイさんがそういう性格だとは思わなかったなぁ」
「アイツは外面、良いんですよ!
マジでアイツのそういう所俺は嫌いだなぁ」
「アハハハは、もうクワッチ(クワタにこの場でつけられた愛称)の話聞いちゃうとさぁ、ヤスイさんの顔を見ただけで、私もうダメかも……笑い出しちゃうよぉ」
歩きながら全員に均等に話を振る事で、口を開かない人を作らない様にするクワタ。
話を振られないと喋らないタイプの、ニックやアランも巻き込み、ヤスイのモノマネを披露しながら楽しませる。
こうしてたっぷり時間を掛けながら、クワタは瞳がルビーそれ以外は黄金で出来たライオンのブローチを渡した。
―3個目の糸杉の道
「……姉さん苦労人だったんですねぇ。
俺、勘違いしてましたわ」
前の庭園で楽しくお話ししていたのも束の間。
宝石を集めて何をするのか?と言う話になり、その流れで“焼き肉串”は自分の過去を話していた。
ハニーやニック、アランと言った面々も初めて聞く話ばかりだったので、皆どこかしんみりとしたトーンで会話をする。
「……私、スチムパンクの街でただの女兵士で終わってたまるかと思って、フランフランに来たんだ。
ここまで来るのにどれだけ大変だったか……」
「姉さん、だから宝石が欲しいんですね。
……そういう過去があるなら納得ですよ」
彼女に存在していた悲しい過去。
そんな昔が有った事を知ると、男達のわだかまりも幾らか解ける。
……こうして不理解から来る、苛立ちと反発心がだんだんとパーティから消えていった。
彼等は此処でトパーズの目とヒスイの胴体を持った亀のブローチを手に入れる。
―4個目は噴水の庭園
「アハハハッ、マジでっ?
世界が狭っ!」
さっきまでしんみりしていた“焼き肉串”は、クワタの告白を聞いてゲラゲラ笑いだした。
「そうなんですよ!姉さんが盗んだオリハルコンの兜は、俺達の先輩でミトさんって言うろくでなしスライムの物なんですよッ」
そう言って明るく面白おかしく話し始めたオオガラス。
「あの兜はミトさんがイカサマ賭博で得た収益を使って買ったんです!
でもそれがバレてあのスライム、博打の胴元の所にドナドナされて、現在タダ働きしてるんです!」
「イカサマ博打ってヤバイねっ!
やっぱあれってバレるもんなの?
……って言うか、魔物も博打やるんだぁ」
「いやあの魔物、病気ですよ!
借金が出来たら『その借金を返すために万鳥券を狙うしかない!』って、歴史に残る名言を吐いてレース場に向かった、男の中の漢ですもん!」
クワタはエンペラスライムの真似を織り交ぜながら、全員を大盛り上げで盛り立てる。
こうしてクワタはヤスイ、マツダ、コウスケ、コージと言った他の魔物仲間のモノマネを次々と披露しながらアメジストの目を持った銀の魚のブローチを渡した。
―5個目は様々な花が咲き乱れる、下界を見下ろす平原のような庭園だった。
そこでアランがポツリと言う。
「俺さぁ、前の世界の記憶が少しあるんだ。
背の高いビルとか呼ばれる建物に囲まれて暮らしていたんだ。
それなのにある日、目が覚めたらこんな所に居た。
どうしてこんな所に居たのか、そして何をすればいいのかも分からなくてさぁ」
それを聞いてニックも「僕もそうだ、分かるよ……」と返し、彼の肩を抱く。
その親しみの溢れる姿に、思わずクワタは貰い泣きをし、そしてこう尋ねる。
「それはさみしいですね、親父やおふくろもこの世界には居ないんですか?」
アランは、クワタの涙に胸を温めながら「ああ……」と返した。
ハニーも目に涙を溜めながら「俺らが兄弟みたいなもんじゃん!」と言って、アランの肩を叩く。
「ありがとう……最高だよ、お前ら」
そう言って涙を流すアラン。
それを見ながら“焼き肉串”は嬉しそうに、涙を流しながら「良かったねぇ……」と語りかけた。
こうして感動を胸に、仲間って良いなぁと思いながら、目がダイヤモンド、体が金で出来たキリンのネックレスをクワタは焼き肉串に差し出した。
―6個目、ブドウ畑。
「ちょっとクワッチぃ、ココは庭園じゃないじゃん」
「すみません姉さん、一応此処もオスカル様的には庭園の一種でして……」
「オスカル様的って……オスカル様ってどんな奴だよ、まったく。
……って、もう夕方じゃん!
もうすぐ太陽沈むじゃん!
ああもうっ、このクソカラスに謀られた!
こいつらの思惑通りに、時間稼がれたよ、クッソぉッ」
「いや、そんな。一応自分的には急いだつもり……」
「アアンッ⁉」
「いえ……何でもないです、はい」
(クワタの立場からしたら、そう言うしかないよなぁ……)
このやり取りを見ながらハニーはそう思った。
相手の思惑がなんであるかを知っていたのにもかかわらずそれに乗っかり、そして大いに楽しんでしまった冒険者達。
笑い過ぎ、楽しみ過ぎ、そして仲間達の本音を確かめすぎてしまった彼等は、もうこのオオガラスを憎む事も出来ない。
ハニーは思わず「もうオスカルに勝てないな、と思ったらココを立ち去っても良いよね」とニックに呟く。
ニックも「笑い過ぎて、戦う気持ちが削がれてしまいました」と返した。
そしてアランも「……こんな気持ちじゃ、気合が入らねぇよ」と言う。
こうして彼等は気付くのだ。
3人共実は“もう帰っても良いんじゃない?”と思っていた事を……
とにかく未だにヤル気があるのは“焼き肉串”だけなのだ。
そんな彼女に絡まれているクワタは「ね、姉さん、とっておきのネタを披露しますから。披露するから許してください!」と言い出す。
それを聞いて『ぷっ!』と吹き出す男たち。
「ああ、ダメだぁ……笑い過ぎて目の下の頬の筋肉がすごい痛い」
「分かります、いかに自分が普段笑っていなかったのか感じますよね。頬が筋肉痛です」
「確かにやべぇ、クワタは良い仕事しすぎだわ。
だけどここまで来たら、とことん笑ってやろうぜ」
『いやいや、とことん笑うて……』
そう言って頬を痛め、そして赤くしながら笑う男達。
因みにクワタが披露したのはオスカル・アンドレ・ロマンのモノマネだった。
……誰も似ているかどうかは分からない。
彼は最後の真珠とサファイアのネックレスを、渡しながら最後にオスカル・アンドレ・ロマンの元へと向かうのだった。
その短い道中で“焼き肉串”は、クワタに尋ねる。
「ああ、もうすぐ終わりかぁ。
すっごく楽しかった。
正直ココまで楽しい道のりになるなんて思わなかったよ、私。
クワッチ、君は凄いよ!」
「ありがとうございます、そう言ってもらえるだけで……」
「それよりクワッチ」
「あ、ハイっ!」
「オスカルってどんな奴なの?」
そう尋ねられてクワタは「オスカル様ですか?」と言うと、空を見上げ暗くなった空に目を向けながら語り始めた。
「キザなんですけど、嫌われない方ですかね。
なんでしょう、ああしろ、こうしろとうるさいはうるさい方なんですけど……
そう言えばオスカル様を嫌うって、人間でも魔物でもあまりいないですね」
「人気があるんだ?」
「人気……ウーン。あまり気にした事は無いけどある気がしますね。
仕事も熱心だし、器量もあるし、だけど女好きだし、うるさいし……
欠点が無い方ではないけど、良い所がたくさんあるので、皆楽しく働けている様な」
「フーン……人間が虐待されているとかも無い?」
「無いですね。
オスカル様は面倒見がいいので、困ったら助けてくれます。
勿論タダではなく、仕事はさせられますけど、それでもフランフランの王様よりずっとマシだって、トーマス達は言ってました」
「そうかぁ、それじゃあオスカルの国を奪ったら、皆に恨まれるね、私……」
「そ、そうですね、アハハハ……」
答えずらい質問……それを曖昧に返すオオガラス。
話しながら曲がって行く、緩いカーブとわずかな勾配。
遮る視界が晴れるとそこから、オスカル・アンドレ・ロマンが待つ屋敷の入り口が見えた。
魔公爵は華美な装いに身を包み、外に引っ張り出したソファーに腰かけて、冒険者達が来るのを待っている。
それを見てクワタが言った。
「姉さんに兄さん方、あのお方が魔公爵のオスカル様です。
皆様をここまで案内する俺の役目も、どうやらここで終わりですね」
「……そうかぁ、寂しいな」
思わず“焼き肉串”が本心から言う。
「俺も姉さん達と楽しく過ごせました、本当にありがとうございまう。
またどこかで会えましたら、その時は……」
「そうだね、クワッチ短い間だったけど楽しかったよ」
そしてアランも口を開いた。
「クワタ」
「アラン兄さんも、ありがとうございました」
「ああ、正直言うと最初はお前の事嫌いだった。
だけど今こんなに仲良くなるなんて思わなかった。もうお前の事嫌いじゃない。
お前は凄い奴だよ、また会えたらいいな」
彼はそう言うとオオガラスと握手をした。
ハニーやニックもクワタと微笑みながら握手をし「頑張れ」とか「楽しかったよ、ありがとう」と言う。
クワタは涙を目に浮かべながら、返事代わりに「それでは!」と元気よく告げて飛び立った。
『…………』
それを沈黙と共に冒険者達は見送る。
こうして夕焼けの空に、溶けるように消えて行くオオガラス。
……冒険者の前に立ち塞がった第7の男、ヨイショ・クワタはこうして彼等を足止めした。
「時間、稼がれたね」
それを知るハニーがぽつりとつぶやく。
だが、それに対して“焼き肉串”は「別に良いよ、それでも私は勝つ気でいるから」と返した。
「みんな、気合入れていくよ!」
彼女はそう言って、気持ちの切り替えを皆に促すと、頬を叩いて自分の体に気合を入れる。
やがて彼女達は夜、沈みかけの太陽を背に、そこから僅かな距離を歩いてオスカル・アンドレ・ロマンが待つ屋敷の入口へと辿り着いた。
……オスカル・アンドレ・ロマン。
鉄の国を治める男、7匹の魔公爵の一人。
彼はその美しい顔を斜に構え、あざ笑うような笑みで、やって来る客を迎える。
それを見て、負けてなるモノかと思った“焼き肉串”は挑発的な笑みを浮かべて語り掛けた。
「オスカル・アンドレ・ロマン、準備に時間がかかった様ね。
おたくの支度が終わるまで、クワタ君が庭園を案内してくれると言うから乗ってきてあげたわよ。
男のくせに、まるで女みたいに支度に手間取るのね、魔公爵様は……」
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