第7の男 奇才・クワタの抵抗!3/6
『…………』
そんな性格上の背景を持ちながら“焼き肉串”は(絶対に退かない!)そう言う眼付きで男達を睨む。
宝石は必ず手に入れると言う意思を込めて。
『…………』
男達の胸に、失望にも似た苦く、言葉にし難い感情が薄く広がる。
理解は出来るが理解をしたく無い。
……そんな思いが込み上げた。
黙って何も回答をしない男達。
そんな彼等を無視して“焼き肉串”が、オオガラスに言った。
「ねぇアンタ、急いでヤスイさんの所に行って戻って。
長くは待たないから……」
「え、良いんですか?」
うっかりそう口を挟んでしまったオオガラス、すかさず彼女は激高して「サッサと行けよっ!」と叫んだ。
カラスはそれを聞き、急いで飛び立った。
その背後で、パーティが言葉も無く二つに割れて睨み合うのを感じる。
「……信じられない、奇跡だ」
飛びながらダメになる筈の話が、上手く行った事に驚くクワタ。
木々の上を飛び、壁を越えて門まで一直線に辿り着くオオガラス。
(あ、コウスケ!)
下界を見ると門の近くで、地面に横たわるオオオウムとスライムの傍らで途方に暮れる、若いダークメイジの姿が見えた。
急ぎ降り立つと、若いダークメイジが「おおクワタ!」と声を上げる。
「ああ、コウスケ君、ヤスイとマツダは無事なの?」
「ああ、酔っぱらって寝てるだけだよ」
「……あの、どういう事?
オスカル様はヤスイとマツダが殺されたって言っていたけど……」
「それがさぁ……」
―2分後
「手短に話すと、そう言う事なんだよ」
若いダークメイジ……いや、悪名高いこのドラ孫の話を全部聞いたオオガラスは、口をあんぐりさせたまま、寝てる仲間の顔を見た。
アホ面のオオオウムは「ミサホちゃーん、どうして君は白いのかギャぁ……むにゃむにゃ、だーいスキィだぎゃ」と、聞きたくもない愛の告白を喋り。
スライムは「こんな世界は滅んでしまえ、ケッケッケッ……」と、寝言をのたまう。
どうやらマツダはテロリスト予備軍だったようだ……
お酒がこいつ等を正直にさせ、聞くに堪えない妄言でこの場所を埋め尽くす。
「嘘だろ、おい……」
これを聞きながらオオガラスは、そう言って頭を抱えた。
そんなオオガラスにドラ孫が言う。
「でさぁ、オスカルが戻って来いって言うんだけど、こいつら放って置く訳にもいかないじゃん?」
「うん、オスカル様……ヤスイとマツダの仇を取ってくれるって言ってた。
だから“ヤスイ達がただ酔っぱらっているだけです”だなんてとても言えない。
しかもその為に、オスカル様が直々(じきじき)に出陣する事になってる……」
「え、そうなの?
へぇ、男だなぁ、さすが魔公爵……」
「そうじゃねぇだろうが、この馬鹿ッ!」
オオガラスは此処でブチギレた!
これを聞き、ドラ孫も血の気を変えてオオガラスに掴みかかる。
「なんだとクワタァッ!」
「テメェ分かってんのかよ!
魔公爵自ら、ヤスイとマツダの仇を取ろうって言ってるのに、こんな事ありえねぇだろうが!
こんな不細工な話、トーマスやヤンにも知られるわけにはいかねぇぞ!」
「なんだと、お前はどっち側だ!
爺ちゃんに雇われたんだろうが!
コッチ側の魔物じゃないのかよッ!」
「ああコッチ側だよッ、だけどお前に雇われた訳じゃない!
皆テメェの嘘で踊らされたんだ!」
「分かってるよ!だけど元はと言えばヤスイがいけないんだぞッ。
コイツがここぞと言うときに、元のポンコツに戻ったのが行けないンだ!」
「いや、お前のせいだッ!」
「じゃあいい、俺のせいで結構だッ。
だがなぁ、この事がオスカルに知られたら俺だけじゃなくて爺ちゃんの名誉も無くなるんだぞ。
それ位は想像つくよな、そうだなクワタっ!」
……確かにこれはコウゾウチームの不祥事である。
その責任は、責任者である老ダークメイジに被せられる。
それに気づき、苦渋に顔をしかめるオオガラス。
”知ったこっちゃねぇ!”と言わない辺り、彼の性格の良さが出たと言うべきだろうか……
とにかくそんなオオガラスの性格の良さを見抜き、悪名高いドラ孫のコウスケは言葉を続ける。
「良いか、俺を嫌いになるのは良い。
だけどお前、爺ちゃんは嫌いか?」
この“悪”は、苦しそうな表情を浮かべたオオガラスを見ながら、人質を取ったような顔でそんな事を言った。
「いや、そんな……」
何かゾッとするような悪い予感を背中に走らせ、オオガラスはそう返す。
……次コイツが言うであろう言葉を想像して。
老ダークメイジのコウゾウにお世話になっているクワタは(実の祖父をダシに平然と脅してくるコイツは何だろう?)と思った。
ドラ孫のコウスケは続ける。
「だったら分かってるよな?
この状況をどうにかしないといけないって。
これがバレたら事だ……爺ちゃんを守るためにお前も手伝え。
な、給料も貰っているんだろ?」
「……う」
「そろそろサワちゃんと結婚だろ、クワタ……
ここでキャリアに傷をつけるのはまずいんじゃないの?ええ……」
オオガラスは信じられないモノを見る目で、ドラ孫を見た。
……邪悪で出来たような、その性格に身が震える。
身内を盾にする事で、形勢を逆転できたと思った邪なるドラ孫は、ニヤリと笑うのだ。
「なぁクワタ、さっきは掴みかかって悪かった。
だけどなぁ、聞いてくれ。
同じチームメイトの俺とお前は一蓮托生なんだよ……だからさ、ヤスイとマツダをどうにかしないといけない。
……俺と、お前で、だ。
分かるだろ?クワタ君……」
「お、お前……」
「言いたい事は分かるぜ、クワタぁ。
だがよく聞け……俺はちょっと狡いかもしれないが、間違いなく優しい男だ。
今日は追い詰められたからちょっと必死になっているが、普段はお前が知る通り、こうじゃない。
そうだろう?クワタ……」
「あ、ああ……」
「俺は、お前の恋のキューピッドでもあるじゃん。
一緒にサワちゃんが居る場所に、合コンしに行っただろ?
今度結婚するんだっけ?良いなぁ、クワタぁ。
そうだ、一つ言い忘れていたことがあるんだけど、サワちゃんの親父さん、俺の爺ちゃんの親友なんだ」
「え?」
「だからさぁ、俺独自のルートでお前の事色々報告できるんだよねぇ。
俺お前の普段を知っているからさぁ……
ああでも安心して。
少し色付けてサワちゃんにお前の良い所たくさん言ってやるよ。
……安心しろよ、お前の悪い所とか一言も言わないから」
「お前は、お前って奴は……」
「あれ、震えてる?クワタ……
俺もお前の幸せが嬉しくて震えちゃうよ。
だからさぁ……二人でこの場を何とかしようぜ。
そうしたら、皆ハッピー、アイムハッピーだ」
オオガラスは、身近にいる奴がとんでもない“悪”だと、この時初めて知った。
……そして、クワタは恐怖に震えながら尋ねる。
「け、結婚の邪魔をするのか?」
「する訳ないじゃん“焼き肉女”追い返したら結婚するんだろ?
祝福するよぉ、なんて言ったって仲間だもん、俺達一蓮托生だもんな……」
「……ああ」
オオガラスはこの時、自分の人生が人質に取られているような気がしたと言う……
恐怖で観念し「分かった」と答える。
それを聞いたドラ孫は、邪悪な笑みを浮かべて嬉しそうに微笑む……
―またまた2分後
オオガラスは、ドラ孫にモバセルラの魔法で、オスカル・アンドレ・ロマンと繋いでもらった。
映像の中のオスカル・アンドレ・ロマンは、出て来た顔がクワタなのを見て少し驚く。
『クワタか、これはコウスケのモバセルラじゃないのか?』
「ああすみませんオスカル様。
コウスケ君は、今自分に通信だけさせて、コウゾウさんを迎えに行ってしまいました」
『何?アイツには“戻って来い”と言った筈だぞ』
「すみません、お叱りは俺が受けます。
実は俺がコウスケ君にお願いして、コウゾウさんの御迎えに行ってもらいました」
『貴様、勝手な事を……』
「すみません、俺命を懸けてコウゾウさんが来るまで時間を稼ぎますから。
オスカル様の手を煩わせない様に、本当に命を懸けて時間を稼ぎます。
少しでも早くコウゾウさんをこっちに呼びたいんです。
後でお叱りは俺が受けます、お願いします、命を懸けますから!」
これを聞いたオスカル・アンドレ・ロマンは『ふぅ……』と溜息を吐く。
そして『分かった……』と言って通信を切った。
通信が切れた事で、オオガラスは安堵の溜息を吐く。
そして、その隣でドラ孫が嬉しそうな顔でポンと彼の肩を叩いて言った。
「お疲れ、クワタ……今のは良かったよぉ、命を懸けるなんてカッコイイねぇ。
さっすがクワタは出来る男だ」
「これで用は済んだんだろ?」
「ああ上出来だ。
これで俺はエアタクシー(魔法)で、空中庭園を出て行ける。
後はそのままこの酔っ払い二匹を、家に連れ帰って中に放り込んでしまえば良い。
後は俺が爺ちゃんを連れてくれば、完全に……問題無しだ」
それを聞いたオオガラスのクワタは、少しでも早くコイツと離れたくて「じゃあ、俺“焼き肉串”の所に戻るから」と言った。
「なに、今度アイツ等の足止め役はお前なの?
それは大変だねぇ、じゃあ頑張ってね、じゃあネぇ……」
そう言うとドラ孫は、エアタクシーの魔法を起動させる。
こうして立ち上がる光の柱、ソレに飲み込まれるドラ孫とオオオウムとスライム。
それを見届ける事無く、オオガラスは空を飛んだ。
そして休憩中だった“焼き肉串”とその仲間達の元に戻る。
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