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あの輝く様な空中庭園の道端で……8/9

(あせ)りは経験の乏しいこの連中から、冷静さを奪いつくした。

その結果、気性の激しい、スライムと若いダークメイジのダメなトコロが露呈(ろてい)する。

若いダークメイジは、頭が真っ白になりかけ、判断と決断を迫られて頭を()きむしった。

そして苛立ち、更に焦燥(しょうそう)に駆られて叫ぶ。


「おいヤスイ!元はと言えばお前が土壇場になって元に戻ったのがいけねぇんだぞ!

テメェ今すぐインチキ教祖に戻れよッ!」


するとオオオウムは(おび)えと、恐怖に鳴きながら若いダークメイジにこう言った。


「だ、ダメだ……コウスケ君、俺怖いよ」

「怖いったって、オスカルが死んだら俺達は終わりだぞ!

明日から無職になっちまうんだからな。

再来週あたり餓死するか、今すぐ死ぬんだったら今死ねよ!」

「そんな、そんな……酷いよ」

「とにかく爺ちゃんが戻るまで、モリポリー位は出来んだろ?

夜になったらまた明日って言えばいいんだからさ」

「無理、無理だよ……見てよ、俺の指」

そう言うとオオオウムは翼の先にある指を見せた。

「見てよコウスケ君。

俺、指が震えて……これじゃあサイコロ触れないよ?」


確かに彼の言う通り、プルプルと震えてもはや彼の指ではないみたいだ。

ヤスイの胸の内を示すかのような、細かい指の動きを見て、若いダークメイジは意を決して尋ねた。


「ヤスイ……もし怖くなくなったら、お前モリポリーできるか?」

「怖くなくなったら?」

「出来るかどうかだけ言えよ」

「や、やってみる……」


それを聞いた若いダークメイジは「良し」と言って頷き、そして自分の荷物から一升(いっしょう)(びん)を取り出した。

そしてそれをスライムとオオオウムの前にズンと置く。


「こ、コウスケ君、コレっ!」


スライムが驚いた声を上げた。

若いダークメイジは、更に二匹の目の前にガラスのコップを置く。


「勝利の暁には飲んでやろうと思って、地下室から盗んできた、爺ちゃんの自慢の一品……

これは高いぞ……純米吟醸酒の“クボタ君”だからな」


そう言うや否や若いダークメイジは、コップに一升瓶の中のお酒を(そそ)ぎ始める。


「コウスケ君!これから戦うって時に何やってるんだよ!」


この様子に抗議するスライム。

そんなスライムに若いダークメイジはコップの中の“クボタ君”をぶちまけた。


「うわっ」


酒を浴びせられ、水分でテカテカと輝くスライム。


(つめ)てぇ……テメェ何しやがる‼」

「いやいや、スライムは確か水気を全身で吸収するんだよな」

「何を言って……うっぷ」

「マツダ、気分は良いか?」

「良い訳ない……うっぷ」


ひっかけられたことで、ドンドンを全身からアルコールを吸収し始めるスライム。

やがて彼はまるでゼラチンの足りないゼリーの様に半ば溶け始める。


「う、うう……ヒック。

バーろーこーすけ、テメェ……ヒック。

覚えとけ……ヒック」

「いい夢見ろよ、マツダ」


焦った事で敵、味方の区別がつかないのか?

とにかく振る舞いになぜか狂気が混じり始める、若いダークメイジ。

そして邪魔者が消えたとばかりに、オオオウムにコップの中の“クボタ君”を(すす)めた。


「飲め、ヤスイ……これは爺ちゃんがこの世で最も愛した命の水だ。

気持ちが落ち着き、俺が起こした色んな苦情(くじょう)も、これを飲んだら忘れるって、昔酔っ払った時に爺ちゃんが言っていた。

きっと恐怖も忘れる、さぁ……ヤスイ」


オオオウムには他に(すが)れるものも無かった……

彼はこの“クボタ君”を飲んで、気持ちが落ち着くと言うならこれに賭けてみたいと思った。


「わ、分かったぎゃあコウスケ君。

の、飲むよ“クボタ君”飲むギャッ」

「ああ、一気にいけ、ぐぅーっと行けっ!」


オオオウムは、勧められるままにコップの中の“クボタ君”を一気に飲み干す。


「ぷ、ぷはぁ」

「お、良い飲みっぷりじゃないかこの鳥野郎!

どうだ、美味(うま)いか?」

「あれ?お酒って初めて飲んだけど、すごく飲みやすくておいしいギャ」

「だろ?爺ちゃんの自慢の一品なんだよ、この純米吟醸酒の“クボタ君”はさぁ。

俺もたまに(くす)ねて飲むんだけど、これがまぁ飲みやすくて美味いんだよ。

見つかるとすっげぇ怒られるからバレない様に、一本ずつ(くす)ねては別の秘密の保管場所に隠してあるんだなぁ」

「そうなんぎゃ……もう一杯飲んでも良いぎゃ?」

「お、早速初めて飲んだ割にはいい飲みっぷりじゃないの……

始めっから良い酒の味を覚えると、不味い酒飲めなくて大変なんだぞ、このグルメな鳥野郎!

え?アハハハハハ」


若いダークメイジは祖父の受け売りを、まるで自分の経験であるかのように語りながら、もう一杯コップの中に“クボタ君”を(そそ)いだ。

オオオウムはそれを飲み干し、一息入れながら若いダークメイジに言う。


「なんだか身体がポカポカしてきたギャぁ。

それにさっきよりも不安じゃなくなったみたいだギャ」

「お、効き始めたな。

これで“焼き肉女”が来てもモリポリーできるな?」

「行けるかもしれないギャ……もう一杯飲んでも良いギャ?

まだ少し怖いギャ……」

「なんだまだ効きが弱いのか?

だったらもっとイケ、一杯と言わず、二杯、三杯……怖くなくなるまで飲み干すんだ!」


こうして若いダークメイジは、次々と干されたコップの中に“クボタ君”を注ぎ入れる。

それを飲み干していくオオオウム。

彼の目が少しずつ、トロンとして行った……


◇◇◇◇


―少し前、坂の下。


小さな体を全身バネの様にしならせ、まるで猛獣の如く、女盗賊はバスケのゴールポストに襲い掛かる。


退()退()け、どけぇっ!」


片手に握りしめたバスケットボール。

細腕に張り付く盛り上がった筋肉。

そして殺意しか感じられない、ギラギラと輝く恐ろしい瞳とその表情。

誰よりも高く飛んだ彼女は、腕を伸ばしそれを(さえぎ)ろうと図る、トーマス、ゴードン、パーシーに向かって叫ぶ。


「殺すぞっ!オラァァッ」


ドッガァァァーン……


激しい音を上げ、3人の男を吹き飛ばし、まるでゴリラのような表情でダンクシュートを決める女盗賊“焼き肉串”。

その気迫とフィジカルに敗れた男達が、バスケットコートに空から落とされる。

その様子をゴールリング掴みながら、頭上から彼女が睥睨(へいげい)する。

まるで、王者の如く……


「ああっと……時間です。

68対21で、僕等……と言うかヤッピーの勝ち」


次の瞬間、どこか悲しげな顔のニックが、得点ボードを指さしながら勝負の結果を告げた。

……つまり彼は出番を彼女にとられたのだ。

勝利を告げられた瞬間“焼き肉串”は「ウッシャァぁぁぁッ来たぞこれっ!」ッと勇ましく叫んでガッツポーズを決める。

それを見ながらハニーがアランに囁いた。


「ヤッピー、すごかったね」


するとアランが感心したようにうなずいて返す。


「ああ、さすがレベル18の冒険者だ。

早いし強いし殺気立ってるしで、あんなの誰も止められないな……」

「うん……女を捨ててたけどね、完全に」

「まぁ……良いんじゃない。

俺の姉貴もあんな感じで俺を散々にいびってくれたし」

「ふーん」

「顔は良いから、いろんな男が騙されていくんだよな」

「……今度遊びに行ってもいい?」

「え?……」

「……良いんじゃない?」

「いやいや、何考えてるんだよ?」


そんな事を二人でこっそり話し合っていた中、勝者となった“焼き肉串”は、トーマス達に言った。


「ハァハァ……さぁ約束よ。

あの門を開けて!」

「クッソぉ……ヤスイさんのように上手く行かなかったか」

「ボードゲームと違ってスポーツは個人技だからね、私はそう言うのが得意なのよ!」

「そうか、こっちの作戦ミスだ……」


そう言うとトーマスは疲労(ひろう)(あえ)ぎながら、ポケットから鍵を取り出し、それをヤッピーに私ながら言った。


「一つあんたに忠告しといてやるよ。

アンタ、バスケしない方が良いぜ」

「なんでよ?」


ここでパーシーがひねた笑みを一つ浮かべながら“焼き肉串”に告げた。


「エッヘッヘッヘッ。

アンタ鏡見たことないだろ……

ダンクを決める度に、まるでゴリラみたいな顔してたんだぜ。

彼氏が見たらガッカリしちゃうんじゃない?」

「アハハハ、パーシー正直だなぁ」


そう言ってゴードンも笑った。


『…………』


“焼き肉串”に表情は無かった。

ただ無表情のまま右手を突きだし、そして中指の爪を親指の腹で押さえて丸を作る。

そして指が白くなるほど力を込めてこう言った。


「デコピンは暴力じゃないのよ、知ってた?」


そして、呆気にとられたパーシーの眉間をデコピンで打ち抜く。


パッチィィィィィィィィィィィンッ!


一瞬でパーシーの頭が揺れ、顎が跳ね上がる。

そしてパーシーは、後ろ倒しに倒れて地面に寝そべった。


「お、おい!」


そう叫んだゴードンの眉間に、次は彼女の左手が付きつけられる。


「……うえ?」


パッチィィィィィィィィィィィンッ!


ゴードンの顎も跳ね上がり、そして後頭部から地面に沈んだ。

……二人は動かず、そしてビクビクと痙攣(けいれん)を始める。


「おい、パーシー……ゴードン?」


この展開に思わず呆然(ぼうぜん)とした、トーマスが仲間に声を掛ける。

それを見ながら女盗賊は感情の無い声で告げた。


「これでチャラにして……」


そう言って彼女は2枚の世界樹の葉っぱと、ポーションの瓶を投げる。


「嘘……ウソだろ!」


世界樹の葉っぱを見て、顔を青くしたトーマス。

彼は急ぎ仲間の元に駆け寄ると、二人の肩を揺らしながら、悲痛な声で叫んだ。


「目を覚ませ‼パーシー。

珍しく喋ったと思ったら眠ったように死ぬんじゃない!

ゴードン、お前も死ぬなぁぁぁぁ!」


そんな彼等を尻目に、鍵を回収した“焼き肉串”は仲間の元に戻って言った。


「ねぇ、私変な顔してバスケしてた?」


うん、してたよ……なんて言える筈も無く“こんな時はお前の役目”とばかりに、ニックとアランはハニーに目を向ける。

ハニーは素敵な笑顔を浮かべた。


「真剣なヤッピーの顔、とっても素敵だったよ!」


男とは……正しい振る舞いが出来る生き物なのである。

ハニーのこの言葉を聞いて、彼女は少し恥じらいを取り戻したような表情を見せた。


「えッ。変じゃなかった?」

「全然変じゃないよ!必死さと真剣な思いが(みなぎ)っていて素敵だったよ。

ヤッピーの新しい側面が見れて、僕は嬉しかったなぁ」


そう言ってハンカチで、愛おしげに彼女の汗を拭ってあげる、遊び人のハニー。

その様子に“焼き肉串”はいつもの豊かな表情を取り戻し「ホント?嬉しい!」と言ってハニーに抱き着いた。

彼女はすぐに(はじ)かれたように「あ、ごめんね、今汗臭くない?」と自分の体臭を気にし始める。


「え、全然大丈夫。僕等も今汗だくだから。

それよりもどうする。休んでから行く?

それとも明日にする?」


するとそれを聞いた“焼き肉串”が答えた。


「ううん、今行こう。

汗臭いのをどうにかしたいけど、もう3日も此処にいる。

早くオスカルを倒して、この国を人間の手に取り戻さないと……」


次の瞬間、彼女の脳裏にミツカベの顔が浮かぶ。

そして「時間が無いの、私……用事があるから」とハニーに告げた。

それを聞いた男達は顔を見合わせて、そして静かに言った。


『ヤッピーが行くなら、一緒に行くよ』


それを聞いて“焼き肉串”は嬉しそうに「うん」と言った。

そして3人は扉の鍵を開け、そして次のフィールドに向かった。


見ていただいてありがとうございます。


もしよろしければでございますが……

つまらなかった、面白かった等ございましたら。

画面下に在る星をつまらなかったら★一つ、面白かったら★5ついただけないでしょうか?

そしてご感想の方を戴けたらなおのことありがたく思います。よろしくお願いいたします。

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