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どうして勇者たちは、死ぬと近くの教会で復活できるの?

「喰らうが良い……ヒヤヒヤロン!」


老ダークメイジが叫んだ瞬間、初級レベルの氷属性の魔法が、勇者たちを襲う!


「キャー!なんでダークメイジにエンカウントするのっ」

「こんなのクソゲ〇だろうがぁ!」


勇者<男>にダメージ48

戦士<女>にダメージ42

僧侶<女>にダメージ41

魔法使い<女>にダメージ49

勇者たちは全滅しました……


◇◇◇◇


「ふぅ、ざっとこんなモンじゃろうて……」


全滅した勇者パーティを見下ろしながら、老ダークメイジは(ひたい)の汗を長いローブの(そで)で拭った。


「それでは……腐ってゾンビ化する前に、さっさと棺桶(かんおけ)()めておくかのぉ」

「爺ちゃん、先にヤスイとクワタを棺桶に入れても良い?」

「なんじゃ、ヤスイ君とクワタ君はもう死んだのか?」

「うん、あそこで潰れてる……」


そう言って若いダークメイジは、地面に寝ているオオガラスとオオオウムを指さした。

それを見て老ダークメイジは「はぁ……」と溜息を吐く。


「ヤスイ君<オオオウム>も、クワタ君<オオガラス>もだらしないのぉ……

マツダ君<スライム>は、いつもちゃんと生き延びてると言うのに……

まぁ仲間をアンデッド化させる訳にはいくまいて……

ゾンビカラスになったクワタ君に、腐った息を吐きかけられても……のぉ。

じゃあコウスケ<若いダークメイジ>棺桶を用意してくれるか?」

「オッケー、じゃあマツダ一緒にヤスイとクワタを棺桶に入れようぜ」

「りょうかぁーい」


若いダークメイジとスライムは互いに声を掛け合うと、手を空高く上げて神に祈りを捧げ始める。


「この世を作った創造主にして、イイダバシに住まう神よ……

ここに眠りしヤスイとクワタのお金を4分の1を受け取りたまえ。

そして、彼等がアンデッドにならないような、万能の棺桶をお授け下さい……」


二人がそう言って創造神にお願いをすると、オオオウムとオオガラスの傍に黒い棺桶が空から降ってきた。

若いダークメイジとスライムは、それを確認すると、()れた手つきで棺桶の(ふた)を開け、仲間をそれぞれのサイズの棺桶に収める。


「もう20回ぐらい詰めているから、随分(ずいぶん)()れたもんじゃのう、コウスケ!」


遠くでは、お疲れの老ダークメイジが2匹にそう声を掛ける。

若いダークメイジはその声を聞きながら、スライムにだけ聞こえるように「31回目だよ……」と、呟いた。

その後、二匹して笑い合う。

それを見ながら老ダークメイジは「ふぅ……」とため息を吐く。

若者二匹が老人を小馬鹿にしている様に、感じられたからだ。


それでも何食わぬ顔で我慢(がまん)している老ダークメイジ。

なんだかんだで、孫が可愛い……


「爺ちゃーん、そこの勇者たち用の棺桶も、神様に頼んでおいてよ」

「お前がやれ、コウスケ。ワシは疲れた!」

「なんでだよ!(いの)るだけじゃんっ」

「お前がやれ、コウスケ。

さもないと給料はやらんぞ」

「チェ、卑怯(ひきょう)だよ……まったく」


祖父の言葉を聞いて若いダークメイジは、不満も(あらわ)に、イイダバシ在住の創造主に祈りを捧げる。

そして先程のオオガラスたち同様に、勇者パーティ専用の棺桶を空から降らせた。

その後若いダークメイジと、スライムは二人で協力しながら。氷漬けの勇者達を棺桶に入れる。

その折、棺桶に勇者を入れながら、スライムが老ダークメイジに言った。


「いやぁ……今回の勇者、金持ちだと良いっすね」

「ふぉっふぉっ……

死んだら勇者のお金の4分の1がワシらの懐に入るからのぉ。

お金持ちを倒した時ほど、この商売は美味しい」


そう言うと老ダークメイジは、悪い顔で笑う。

やがて、その嫌らしい笑みは孫やスライムにも伝播(でんぱ)して、3匹で『ふっふっふっ……』と笑い合った。

その後スライムは、そのプヨンとした触手(しょくしゅ)で、冷たくて固い勇者の(ほほ)を叩いて言う。


「いやーコウゾウさん<老ダークメイジ>流石っすね!

初心者勇者にもマジで容赦(ようしゃ)ないっすわ」

「ふぉっふぉっふぉっ、マツダ君。

とにかく勇者と言うのは、最初に心を折ったらもう旅を止める者が多いモンじゃて。

男の子は誰でも最初は勇者に(あこが)れる……

だけども魔王様の元に来るのはほんの一握(ひとにぎ)りじゃ」

「そうっすねー、積みゲ〇とかよく言われますもんね」

「マツダ君、あまりそう言う事は言わんほうが良いんじゃよ……」


そう言うと老ダークメイジは手近な岩に腰かける。

そしておもむろに、若いダークメイジに声を掛けた。


「コウスケ<若いダークメイジ>、デーブと通信してくれんか。

ワシはもう疲れたわい」

「もう報告しちゃうの?」

「時間をかけるモノでもなかろう、さっさと済ませてしまわんとな。

ヤスイ君とクワタ君の件もあるし……」

「うん。分かった……

でも爺ちゃん、あの件を本当にデーブに言うの?」

勿論(もちろん)じゃ……最近あのガキは調子に乗っておるからの。

ここらで立場を分からせンと、いかん」

「分かった爺ちゃん。

……それじゃあ、行くよ。

スゴバーム城007564に(つな)がれ、通信魔法モバセルラ!」


若いダークメイジがそう叫ぶと、その体から白い光が空に上がった。

次の瞬間空に半透明な映像が浮かびあがる。

映像は、豪奢(ごうしゃ)な貴族の私室らしき場所を映し出した。

そして映像は誰かの姿を探して、右に左に視点を変える。

やがて映像は、ダークメイジ達が探していた者の姿を捕らえた。

その者は、波打つ優美な銀髪をなびかせ、自身の姿を鏡で見つめている。

ほとんどの者の目を奪うであろう、凍り付く様な、怜悧(れいり)美貌(びぼう)……

ダークメイジ達は鏡に映った姿越(すがたご)しにその様子を見る。

そんな空に浮かぶ美貌の男は、老ダークメイジたちの存在に、まだ気が付いていなかった。

彼は鏡に映った自分の顔の角度を、深く変えたり浅く変えたり、そして左や右に変えたりすると、満足げに微笑んで言った。


『やはり、右38度だな……』

「あ、ああ……すみませんデーブさん。

後でそれお願いできますか?」


その声に気が付いたデーブと呼ばれた美貌の男が、(はじ)かれたようにこちらに顔を向ける。


『なんだ貴様ぁ!』


(あわ)てたようなその姿に、若いダークメイジは戸惑(とまど)いながら言った。


「あ、すみません。

コウゾウ爺ちゃんの孫のコウスケです」

『コウゾウさんの?

それよりも貴様……私の名前をその名で呼ぶな!

私は今やオスカル・アンドレ・ロマンだ!

二度と昔の名前で呼ぶなっ!』

「いや、だけど本当の名前はデーブ……」

『うるさいっ!お前の爺にも言っておけっ。

先輩だからって目に余ると承知せんぞ!』

「いや、でも……」

『コウゾウさんは、今はウチの顧問(こもん)で相談役だろうがっ!

上<コウゾウさん>がそうだから、下<コウスケその他>が要らん事をマネするんだ!

直接雇って無いが、あの爺は俺の代理店みたいなもんだろうが!』


名前の事はNGワードだったようで デーブもといオスカル・アンドレ・ロマンは、それはそれは怒りだす。

叱られている若いダークメイジは、そのまま自分の祖父である老ダークメイジの方にちらっと目線を投げた。


「…………」


老ダークメイジは黙って、空に映るオスカル・アンドレ・ロマンの顔を見詰める。


『あ、コウゾウさん……』

「ふぉっふぉっふぉっ……」


ここで初めて、自身の顧問である老ダークメイジの姿に気が付いた、オスカル・アンドレ・ロマンは、動揺した。

そして色々な場所に目線を向け始める。


『…………』

「…………」


魔公爵とその顧問……2匹の間に何とも言いようがない、気まずい空気が流れる。

その気まずさには彼ら以上に、周りの空気を緊張させた。

やがて、いたたまれなくなった若いダークメイジが、スライムに囁く。


「マツダ<スライム>……あの話を言え」

「なにを?」

「ほら、あの世界樹の葉っぱ……」

「ちょっ!なんで俺が……」

「いいから言えよ」

「コウスケ君<若いダークメイジ>、こんな時ばかり……なんで俺ッ」

『うん?何か私に用なのか?』


2匹が互いに言う言わないで突っつき合っていたのに気が付いた、オスカル・アンドレ・ロマンが、空からそう言って二人に声を掛けた。

この魔公爵としても、二匹に話しかける事で、この空気から逃げたかったのだ。

この時若いダークメイジは、ここぞとばかりにスライムを前に押し出した。


「あ、クソ、この……」


スライムは軽い体重のせいで抵抗も出来ず、狡い若ダークメイジに矢面に立たされる。

スライムは自分を押した者を睨みながらも、仕方なく口を開いた。


「あ、ああすみません魔公爵様。

私、コウゾウさんの所で働いているマツダって言いますがぁ。

あのですね……実はたった今勇者どもブッ倒したんですよぉ」


オスカル・アンドレ・ロマンはスライムの話を聞きながら(こいつ、言葉遣いがなって無いなぁ……)と思った。

で、そんな感情が(にじ)んだ、(とげ)のある声音でこう答える。


『ほう、流石がコウゾウさん<老ダークメイジ>やるではないか……

もしかして映像の(すみ)っこで倒れている、4体の人間の棺桶がそれか?』

「ああハイそうです。

今回その報告で通信を繋いだんですけど……

実はウチらも無傷とはいかなくて。

ヤスイ君とクワタ君が死んじゃったんですよぉ。

それで世界樹の葉っぱを貰えません?

あれでパパッと復活させちゃいたいんで」

『そうか、だったら買えばよいではないか?』

「あ、いえ、できればその……

出世払(しゅっせばら)いでお願い出来ませんか?」

『は?』


思わず顔を(ゆが)めながら、スライムの顔をマジマジと見たオスカル・アンドレ・ロマン。

彼がしばらく沈黙した後『駄目に決まっておろう』と答えた。


「え?なんで……」

『マツダよ、お前は間違いなく出世しない。

よって世界樹の葉は与えられない』


それを聞いてショックを受けるスライム。

愕然(がくぜん)とした表情を浮かべ、ワナワナと震えながら空を見上げ始めた

そしてその体スパンスパンと叩きながら、若いダークメイジが嬉しそうに言う。


「マツダぁ!やっぱオスカル様はすべて知っているみたいだなぁッ」

「イテェ、イテェっ!

叩くんじゃねぇよこのバーカッ!」

「アン?なんだその口の()(かた)……

マツダのくせに偉そうだな」

「なんだとコラ、コウゾウさんの孫だからっていい気になってるんじゃねぇぞコラ……

俺はお前の下についてる訳じゃネぇんだからなぁ!」

「やめんか貴様らっ!」


そう言って老ダークメイジが若いダークメイジとスライムの間に割って入った。


「喧嘩は辞めんか馬鹿者!

デーブが見てるじゃろうが!」


こうして一触即発の状態の二人は互いにガンを飛ばし合いながら、互いに離れて行った。


「まったく……デーブすまんのぉ」

『あ、ああ……それは良いけどコウゾウさん、私の名前はもうデーブでは無いのだが』

「うん?」

『いや、だから今の私の名前は……』

「うーん?」

『……いや、もういいよ』

「そうかそうか、耳が遠くなってすまんのぉ」

『……クソ爺』

「なんだと貴様ァ?」

『いや聞こえてんのかよ!』

「うーんッ?」

『もういい、話が進まねぇよっ。

……とにかく今回の仕事に対して成果報酬は来週までに払い込むから。

このモバセルラ通信で成果は確認したから。

じゃあ、もう通信は切らせてもらう……』


こうしてさっさと通信を切ろうとしたオスカル・アンドレ・ロマンを、老ダークメイジは抑えるようにこう言った。


「いや、話は終わっとらんよ」


この瞬間美貌のオスカル・アンドレ・ロマンの顔が、何とも言えない表情に歪む。


『まだあるのか?コウゾウさん』

「ああ、世界樹の葉が2枚必要なんじゃ。

ヤスイとクワタを(よみがえ)らせないといけなくてなぁ……」

『だったら買えばいいじゃないか』

「出世払いで頼めるか?」

『え?』


次の瞬間オスカル・アンドレ・ロマンの表情が固まった。

そして老ダークメイジの顔をマジマジと見ながら言う。


『コウゾウさん、私の配下になるのか?』

「いやならんよ」

『だったら出世って……』

「ワシは転職の神殿で下位転職をするまでは、ダークロードとして魔王様の側近であった。

今でも戻ろうと思えば、ダークロードに戻れるわい」

『まぁ、その事情は知ってるけど……』

「だから出世払いで頼むのじゃ」

『いや、だったら今すぐ転職神殿で……』

「うん?」

『……はぁ。またそれかよ。

分かった、今回は勇者も倒したからボーナスで葉っぱ<世界樹の葉>もつける。

オオダチョウ便で送るから……

ソコの景色だとフランフラン城近くの小川の傍で良いのか?』

「おお、流石はロマン殿、助かるわい」

『調子が良いなぁ、クソ!」


そう言うと、オスカル・アンドレ・ロマンは通信を切った。

このやり取りを見ていたスライムと若いダークメイジは喜ぶ。


「さっすがコウゾウさん!」

「爺ちゃんヤルぅ!」

「ふぉっふぉっふぉっ。

まぁ昔取った“杵柄(きねづか)”じゃよ」

「ふーん……爺ちゃん“キネヅカ”って何?」

「なっ、お前はそんな事も知らんのか?」

「うん……マツダ、お前知ってるか?」

「え?いや……コウスケ君。

そんな古い言葉お爺ちゃん位しか使わないよね」


スライムと若いダークメイジのやり取りを聞いていた、老ダークメイジは、殊更嘆(ことさらなげ)いて言った。


「最近の若い者はモノを知らぬ……

本当に知らぬのか?」

『……うん』


老ダークメイジは頭を抱えて「信じられん」と呻くと言った。


昔鍛(むかしきた)えた腕前や技の事じゃよ」

すると若いダークメイジは不服そうに口を尖らせて言った。

「だったらそう言えばいいじゃん」

「うん?」

「知らない俺がおかしいみたいな言い方は無いと思う……

そう言えばいいだけの話じゃん」


そう抗議した若いダークメイジにスライムが急いで言った。


「コウスケ君、そう言う言い方無いから!」

「え?なんで……マツダだって知らなかったじゃん」

「いやそうだけど、そう言う問題じゃないから。

コウゾウさんに対してあんな言い方は無いだろう……って」

「はっ?

お前だって知らなかったくせにどう言う訳?

お前が自分の事どうして棚に上げてんの?」

「いや上げてねぇし……」

「上げてんじゃねぇかよ!

今この空気はお前が作ってんだろ!

俺が全部悪いみたいなさぁっ。

俺が一番悪いみたいに言いやがってよぉッ!」

「言ってねぇよ、頭悪い事言ってんじゃねぇよ」

「なんだとマツダぁ、コラァ!」

「やめんかコラッ!」


この様子を見ていた老ダークメイジが、再び間に入る。


◇◇◇◇


―20分後


「毎度ぉ、特急便です。

お荷物お届けに上がりましたぁ」


そう言ってオオダチョウに鎮座(ちんざ)した、エンペラスライムがA4サイズの封筒(ふうとう)を持って、この場所にやってきた。


「ああ、ミト君<エンペラスライム>しばらくぶりじゃな」

「あ、コウゾウさん、お久しぶりです。

アソコでぽっくり逝ってる勇者、コウゾウさんが倒したんっすか?

やばいっすね、いい稼ぎになりましたね」

「まぁ、な……」

「それはそうと……なんかマツダの奴ふてくされてません?

今日アイツすっごい態度悪いっすよ」

「ああ、色々あってなぁ」

「コウスケとぶつかったんですか?」

「分かるか?ミト君……」

「まぁ、空気感で何となくは……

大変っすね」


そう言うとエンペラスライムは、受取のサインを貰うと、颯爽(さっそう)とこの場を後にした。

それを確認した老ダークメイジは、ひっそりと溜息を吐く。

やがて彼は、届いたばかりの袋を破り、中から2枚の葉っぱを取り出した。

そして、道のはずれで息絶えていた、オオガラスとオオオウムの体に一枚ずつ置いた。

するとその葉は輝きだし、それぞれオオガラスや。オオオウムの体の中に吸収される。


「う、うう。死ぬかと思った……」

「ぐぎゃぁ……」


次の瞬間蘇りながらそう(うめ)く二羽の鳥。

老ダークメイジは(いや、死んでたぞ?)と思いながら、何も言わず頷いて二羽の様子を見ていた。


「おっ、ヤスイ!クワタ!。無事だったのか!」


立ち上がった二羽を見た若いダークメイジはその姿を見つめるなり、嬉しそうに叫んだ。


「あれ……ひょっとしてコウスケ君、俺達死んでた?」


オオガラスはまだ寝ぼけたような顔で、そう若いダークメイジに尋ねた。


「ああ、死んでたよ」

「マジかぁ……あ、それじゃあ女を3人も(はべ)らしたスケベ勇者は?」

「あれは爺ちゃんが倒した」

「……また経験値が入らなかった。

マツダ君とコウスケ君はレベルアップしたんスか?」

「ああしたよ。お前ら惜しかったなぁ」

「うわぁ、残念……

今度こそレベル7に行くと思ったのにな」

「まぁ次があるさ」


こうして(よみがえ)ったばかりの仲間を交えて楽しげに談笑する4匹。

先程までのギスギス感もすっかり取れた様子を見て、老ダークメイジは「やはりバカは4匹集まった方が楽しいのぉ」と呟く。


「爺ちゃん、バカって俺達の事かよ!」

「おや?聞かれてしまったか。

ふぉっふぉっふぉっ、他に()らんじゃろ」


孫の若いダークメイジはこの言葉に口を(とが)らせ、祖父は眉を嬉しそうに細める。

こうして5匹の魔物は楽しそうにじゃれ合った。


◇◇◇◇


それから間もなく……


老ダークメイジの掛け声に急かされ、4匹の魔物が、青息吐息で棺桶を引いて道を行く。


「さぁ引け、もっと引け!」


良く晴れた南国の日差しの下、彼等は間近にそびえるフランフラン城とその城下町を目指す。

老ダークメイジ追い立てられる、哀れな4匹の魔物達は、その重みに耐えかねて、呪いの言葉を発し続けた。


「爺ちゃん……この為にヤスイ達を蘇らせたな!

ああークソッ、()魔物(オトコ)だと思ったのに詐欺だっ(注、コウスケ主観)悪人だ!

チクショウ……勇者の野郎重いぜ」

「ヤスイしっかりしろ!女魔導士はこの中で一番軽いんだぞ!」

「辛いぎゃ、辛いぎゃぁあぁぁ」

「クッソ女僧侶の奴、栄養が胸に行って見た目より重いぞ!」

「はぁ、はぁ……だったら女戦士お前が(かつ)ぐか?コラッ」


全滅した勇者パーティは、こうして魔物に引きずられて、最寄(もよ)りの人間の町まで向かっていく。


「頑張るのじゃ、人間の町の教会に引き渡さないと、報酬が創造主様から貰えぬでな。

しかし勇者たちは知っておるのかのぉ?

全滅してお金が何故半分減るのか……

4分の1はワシら、そして残りの4分の一は創造主様経由で、協会が棺桶代として貰っていくのだがのぉ」


重労働は若者にやらせる雇用主は、そう言った後に、「ハイッ、ハイっ、ハイッ!」と、手を叩いて若者たちを煽りたてた。


「コウゾウさん、手を叩くのをやめてください!

ムッチャ腹立ちます!」

「ふぉっふぉっふぉっ、クワタ君は給料が要らぬようじゃなぁ……」

「そんな‼(ずる)いヨッ」

「ほらほら、若者は労働せんか。

ハイッ、ハイっ、ハイッ!」


給料を人質に取られ、しぶしぶ従うオオガラス、その他。

その中の一人である、若いダークメイジは、一番重たい勇者の棺桶を引きながら「見てろよ、ぜってぇあの爺を雇って棺桶引かせてやる……」と呪う。

それを聞いたスライムは「コウスケ君、その日が来たら手伝うよ……」と答えた。


『…………』


それを聞いた3秒後の事である、先程までスライムと喧嘩していた、若いダークメイジはにやりと微笑んでこう言った。


「……ふ、ふふっ。

その日が来たら呼んでやるよ、マツダ……」

「ああ、楽しみにしてる」


こうして先程喧嘩していた二匹は理解し合った。

男達は互いに重労働に(あえ)ぎながら、微笑みあって和解を果たす。

(ちな)みに老ダークメイジはそれを地獄耳で聞きながら(20年早いわ、馬鹿者め……)と、思っていた。

しかしまぁ血気盛んな若者の言葉と(とら)えた彼は、何も言わずまた「ハイッ、ハイっ、ハイッ!」と急かした。

それに追い立てられるように、哀れな若い魔物の苦行は続く。




やがてフランフランの町のすぐ(そば)で彼等は、休憩を取った。

草っぱらに寝転び『ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇっ……』と息を荒げる4匹。

老ダークメイジは、近くの岩に腰かけて水筒の中の水を飲みながらその様子を見る。

やがて寝転ぶ魔物の中から、若いダークメイジが声を上げた。


「じ、ジィちゃん……ゼェゼェっ、ウッグ!

はぁハァハァ……創造主も金を、ガメて行くのかよ」

「いきなりなんじゃ……

まぁいいじゃろ、答えてやるとな。

棺桶代じゃよコウスケ、棺桶を一から作る訳に行くまい?

ましてやアイテムとしてあんなデカいのは持って歩けんじゃろ。

勇者が何かあった時の為に、自分が入る棺桶担いで魔物と戦う訳が無い。

ワシらだって同じじゃぁ。

棺桶にも入らず死んで、それで2日ほど放っておかれると、アンデッドになってしまうしのぉ」

「き、汚ねぇ……それが嫌なら棺桶代を払えって言うのかよ」

「ふぉっふぉっ、理解が早いのぉ、流石(さすが)ワシの孫じゃわい。

コウスケや、世の中そう言うもんじゃよ。

まぁいきなり死んだら棺桶に入れられるのにも、ちゃんと理由があるという事じゃ。

……まぁ、死んで生き返らないよりはマシじゃろ、それこそクソゲ〇じゃ。

遺体がある限りは何とかなるもんじゃて」


祖父にそう言われた後、若いダークメイジは何も言わずに、ただ黙って空を見上げた。

そして青い空を(なが)めながら(世界は理不尽で出来ている……)との、真理を確認する。

老ダークメイジも、孫と同じく空を見ながら(コウスケは何を考えているのやら……)と違う事を考えていた。

……そしてふと見上げた空に、(なつ)かしいモノによく似た形の雲がある事に気が付く。

その雲に、自分よりも先に亡くなった、この子の親で、自分の息子のマスターメイジの姿が重なる。


(コウタ……仲直りすればよかったなぁ)


昔を思い出して、思わず涙が(こぼ)れた老ダークメイジ。

やがて“ガキ共に見られたら、何を言われるか分からん”とばかりに、涙を袖で(ぬぐ)った彼は、いつまでも寝ている4匹に声を掛けた。


「さぁ行くぞお前達!

休憩はおしまいじゃ」

『はーい』


こうして若者4匹を従え、老ダークメイジが、残り(わず)かな道を行く。

そしてフランフランの町に辿り着いた彼等は、門番を通じて、教会の司祭を呼び出し、勇者達の棺桶を引き渡した。






……因みにその後の勇者達の事を説明すると。

勇者達は老ダークメイジが言ったように、彼等の持ち金は半分となった上で、復活した。

ただしケチな教会の司祭は、勇者一人だけを復活させる。

つまり他の仲間を蘇らせたかったら別料金と言う事だ。


……こうして勇者達が全滅する度に、死んだ仲間が棺桶に入り。

近くの教会に引きずり込まれて、そこで旅を再開する。

そんな、死ぬと持ち金が25%ずつ移動する世界……


魔物達と勇者は毎日、神々が住まう天上界イイダバシの創造主を呪いながら、今日も元気に死と復活を繰り返す。

これはそう言う世界の物語なのである……


今日はこのテーマです、もし「そう言えばナゼ?」みたいな疑問があればそれをお題にして話を一本考えてみます。


あと数話書いたら終わりの軽い物語ですが、宜しくお願い致します。

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