どうして勇者たちは、死ぬと近くの教会で復活できるの?
「喰らうが良い……ヒヤヒヤロン!」
老ダークメイジが叫んだ瞬間、初級レベルの氷属性の魔法が、勇者たちを襲う!
「キャー!なんでダークメイジにエンカウントするのっ」
「こんなのクソゲ〇だろうがぁ!」
勇者<男>にダメージ48
戦士<女>にダメージ42
僧侶<女>にダメージ41
魔法使い<女>にダメージ49
勇者たちは全滅しました……
◇◇◇◇
「ふぅ、ざっとこんなモンじゃろうて……」
全滅した勇者パーティを見下ろしながら、老ダークメイジは額の汗を長いローブの袖で拭った。
「それでは……腐ってゾンビ化する前に、さっさと棺桶に詰めておくかのぉ」
「爺ちゃん、先にヤスイとクワタを棺桶に入れても良い?」
「なんじゃ、ヤスイ君とクワタ君はもう死んだのか?」
「うん、あそこで潰れてる……」
そう言って若いダークメイジは、地面に寝ているオオガラスとオオオウムを指さした。
それを見て老ダークメイジは「はぁ……」と溜息を吐く。
「ヤスイ君<オオオウム>も、クワタ君<オオガラス>もだらしないのぉ……
マツダ君<スライム>は、いつもちゃんと生き延びてると言うのに……
まぁ仲間をアンデッド化させる訳にはいくまいて……
ゾンビカラスになったクワタ君に、腐った息を吐きかけられても……のぉ。
じゃあコウスケ<若いダークメイジ>棺桶を用意してくれるか?」
「オッケー、じゃあマツダ一緒にヤスイとクワタを棺桶に入れようぜ」
「りょうかぁーい」
若いダークメイジとスライムは互いに声を掛け合うと、手を空高く上げて神に祈りを捧げ始める。
「この世を作った創造主にして、イイダバシに住まう神よ……
ここに眠りしヤスイとクワタのお金を4分の1を受け取りたまえ。
そして、彼等がアンデッドにならないような、万能の棺桶をお授け下さい……」
二人がそう言って創造神にお願いをすると、オオオウムとオオガラスの傍に黒い棺桶が空から降ってきた。
若いダークメイジとスライムは、それを確認すると、慣れた手つきで棺桶の蓋を開け、仲間をそれぞれのサイズの棺桶に収める。
「もう20回ぐらい詰めているから、随分と馴れたもんじゃのう、コウスケ!」
遠くでは、お疲れの老ダークメイジが2匹にそう声を掛ける。
若いダークメイジはその声を聞きながら、スライムにだけ聞こえるように「31回目だよ……」と、呟いた。
その後、二匹して笑い合う。
それを見ながら老ダークメイジは「ふぅ……」とため息を吐く。
若者二匹が老人を小馬鹿にしている様に、感じられたからだ。
それでも何食わぬ顔で我慢している老ダークメイジ。
なんだかんだで、孫が可愛い……
「爺ちゃーん、そこの勇者たち用の棺桶も、神様に頼んでおいてよ」
「お前がやれ、コウスケ。ワシは疲れた!」
「なんでだよ!祈るだけじゃんっ」
「お前がやれ、コウスケ。
さもないと給料はやらんぞ」
「チェ、卑怯だよ……まったく」
祖父の言葉を聞いて若いダークメイジは、不満も露に、イイダバシ在住の創造主に祈りを捧げる。
そして先程のオオガラスたち同様に、勇者パーティ専用の棺桶を空から降らせた。
その後若いダークメイジと、スライムは二人で協力しながら。氷漬けの勇者達を棺桶に入れる。
その折、棺桶に勇者を入れながら、スライムが老ダークメイジに言った。
「いやぁ……今回の勇者、金持ちだと良いっすね」
「ふぉっふぉっ……
死んだら勇者のお金の4分の1がワシらの懐に入るからのぉ。
お金持ちを倒した時ほど、この商売は美味しい」
そう言うと老ダークメイジは、悪い顔で笑う。
やがて、その嫌らしい笑みは孫やスライムにも伝播して、3匹で『ふっふっふっ……』と笑い合った。
その後スライムは、そのプヨンとした触手で、冷たくて固い勇者の頬を叩いて言う。
「いやーコウゾウさん<老ダークメイジ>流石っすね!
初心者勇者にもマジで容赦ないっすわ」
「ふぉっふぉっふぉっ、マツダ君。
とにかく勇者と言うのは、最初に心を折ったらもう旅を止める者が多いモンじゃて。
男の子は誰でも最初は勇者に憧れる……
だけども魔王様の元に来るのはほんの一握りじゃ」
「そうっすねー、積みゲ〇とかよく言われますもんね」
「マツダ君、あまりそう言う事は言わんほうが良いんじゃよ……」
そう言うと老ダークメイジは手近な岩に腰かける。
そしておもむろに、若いダークメイジに声を掛けた。
「コウスケ<若いダークメイジ>、デーブと通信してくれんか。
ワシはもう疲れたわい」
「もう報告しちゃうの?」
「時間をかけるモノでもなかろう、さっさと済ませてしまわんとな。
ヤスイ君とクワタ君の件もあるし……」
「うん。分かった……
でも爺ちゃん、あの件を本当にデーブに言うの?」
「勿論じゃ……最近あのガキは調子に乗っておるからの。
ここらで立場を分からせンと、いかん」
「分かった爺ちゃん。
……それじゃあ、行くよ。
スゴバーム城007564に繋がれ、通信魔法モバセルラ!」
若いダークメイジがそう叫ぶと、その体から白い光が空に上がった。
次の瞬間空に半透明な映像が浮かびあがる。
映像は、豪奢な貴族の私室らしき場所を映し出した。
そして映像は誰かの姿を探して、右に左に視点を変える。
やがて映像は、ダークメイジ達が探していた者の姿を捕らえた。
その者は、波打つ優美な銀髪をなびかせ、自身の姿を鏡で見つめている。
ほとんどの者の目を奪うであろう、凍り付く様な、怜悧な美貌……
ダークメイジ達は鏡に映った姿越しにその様子を見る。
そんな空に浮かぶ美貌の男は、老ダークメイジたちの存在に、まだ気が付いていなかった。
彼は鏡に映った自分の顔の角度を、深く変えたり浅く変えたり、そして左や右に変えたりすると、満足げに微笑んで言った。
『やはり、右38度だな……』
「あ、ああ……すみませんデーブさん。
後でそれお願いできますか?」
その声に気が付いたデーブと呼ばれた美貌の男が、弾かれたようにこちらに顔を向ける。
『なんだ貴様ぁ!』
慌てたようなその姿に、若いダークメイジは戸惑いながら言った。
「あ、すみません。
コウゾウ爺ちゃんの孫のコウスケです」
『コウゾウさんの?
それよりも貴様……私の名前をその名で呼ぶな!
私は今やオスカル・アンドレ・ロマンだ!
二度と昔の名前で呼ぶなっ!』
「いや、だけど本当の名前はデーブ……」
『うるさいっ!お前の爺にも言っておけっ。
先輩だからって目に余ると承知せんぞ!』
「いや、でも……」
『コウゾウさんは、今はウチの顧問で相談役だろうがっ!
上<コウゾウさん>がそうだから、下<コウスケその他>が要らん事をマネするんだ!
直接雇って無いが、あの爺は俺の代理店みたいなもんだろうが!』
名前の事はNGワードだったようで デーブもといオスカル・アンドレ・ロマンは、それはそれは怒りだす。
叱られている若いダークメイジは、そのまま自分の祖父である老ダークメイジの方にちらっと目線を投げた。
「…………」
老ダークメイジは黙って、空に映るオスカル・アンドレ・ロマンの顔を見詰める。
『あ、コウゾウさん……』
「ふぉっふぉっふぉっ……」
ここで初めて、自身の顧問である老ダークメイジの姿に気が付いた、オスカル・アンドレ・ロマンは、動揺した。
そして色々な場所に目線を向け始める。
『…………』
「…………」
魔公爵とその顧問……2匹の間に何とも言いようがない、気まずい空気が流れる。
その気まずさには彼ら以上に、周りの空気を緊張させた。
やがて、いたたまれなくなった若いダークメイジが、スライムに囁く。
「マツダ<スライム>……あの話を言え」
「なにを?」
「ほら、あの世界樹の葉っぱ……」
「ちょっ!なんで俺が……」
「いいから言えよ」
「コウスケ君<若いダークメイジ>、こんな時ばかり……なんで俺ッ」
『うん?何か私に用なのか?』
2匹が互いに言う言わないで突っつき合っていたのに気が付いた、オスカル・アンドレ・ロマンが、空からそう言って二人に声を掛けた。
この魔公爵としても、二匹に話しかける事で、この空気から逃げたかったのだ。
この時若いダークメイジは、ここぞとばかりにスライムを前に押し出した。
「あ、クソ、この……」
スライムは軽い体重のせいで抵抗も出来ず、狡い若ダークメイジに矢面に立たされる。
スライムは自分を押した者を睨みながらも、仕方なく口を開いた。
「あ、ああすみません魔公爵様。
私、コウゾウさんの所で働いているマツダって言いますがぁ。
あのですね……実はたった今勇者どもブッ倒したんですよぉ」
オスカル・アンドレ・ロマンはスライムの話を聞きながら(こいつ、言葉遣いがなって無いなぁ……)と思った。
で、そんな感情が滲んだ、棘のある声音でこう答える。
『ほう、流石がコウゾウさん<老ダークメイジ>やるではないか……
もしかして映像の隅っこで倒れている、4体の人間の棺桶がそれか?』
「ああハイそうです。
今回その報告で通信を繋いだんですけど……
実はウチらも無傷とはいかなくて。
ヤスイ君とクワタ君が死んじゃったんですよぉ。
それで世界樹の葉っぱを貰えません?
あれでパパッと復活させちゃいたいんで」
『そうか、だったら買えばよいではないか?』
「あ、いえ、できればその……
出世払いでお願い出来ませんか?」
『は?』
思わず顔を歪めながら、スライムの顔をマジマジと見たオスカル・アンドレ・ロマン。
彼がしばらく沈黙した後『駄目に決まっておろう』と答えた。
「え?なんで……」
『マツダよ、お前は間違いなく出世しない。
よって世界樹の葉は与えられない』
それを聞いてショックを受けるスライム。
愕然とした表情を浮かべ、ワナワナと震えながら空を見上げ始めた
そしてその体スパンスパンと叩きながら、若いダークメイジが嬉しそうに言う。
「マツダぁ!やっぱオスカル様はすべて知っているみたいだなぁッ」
「イテェ、イテェっ!
叩くんじゃねぇよこのバーカッ!」
「アン?なんだその口の利き方……
マツダのくせに偉そうだな」
「なんだとコラ、コウゾウさんの孫だからっていい気になってるんじゃねぇぞコラ……
俺はお前の下についてる訳じゃネぇんだからなぁ!」
「やめんか貴様らっ!」
そう言って老ダークメイジが若いダークメイジとスライムの間に割って入った。
「喧嘩は辞めんか馬鹿者!
デーブが見てるじゃろうが!」
こうして一触即発の状態の二人は互いにガンを飛ばし合いながら、互いに離れて行った。
「まったく……デーブすまんのぉ」
『あ、ああ……それは良いけどコウゾウさん、私の名前はもうデーブでは無いのだが』
「うん?」
『いや、だから今の私の名前は……』
「うーん?」
『……いや、もういいよ』
「そうかそうか、耳が遠くなってすまんのぉ」
『……クソ爺』
「なんだと貴様ァ?」
『いや聞こえてんのかよ!』
「うーんッ?」
『もういい、話が進まねぇよっ。
……とにかく今回の仕事に対して成果報酬は来週までに払い込むから。
このモバセルラ通信で成果は確認したから。
じゃあ、もう通信は切らせてもらう……』
こうしてさっさと通信を切ろうとしたオスカル・アンドレ・ロマンを、老ダークメイジは抑えるようにこう言った。
「いや、話は終わっとらんよ」
この瞬間美貌のオスカル・アンドレ・ロマンの顔が、何とも言えない表情に歪む。
『まだあるのか?コウゾウさん』
「ああ、世界樹の葉が2枚必要なんじゃ。
ヤスイとクワタを蘇らせないといけなくてなぁ……」
『だったら買えばいいじゃないか』
「出世払いで頼めるか?」
『え?』
次の瞬間オスカル・アンドレ・ロマンの表情が固まった。
そして老ダークメイジの顔をマジマジと見ながら言う。
『コウゾウさん、私の配下になるのか?』
「いやならんよ」
『だったら出世って……』
「ワシは転職の神殿で下位転職をするまでは、ダークロードとして魔王様の側近であった。
今でも戻ろうと思えば、ダークロードに戻れるわい」
『まぁ、その事情は知ってるけど……』
「だから出世払いで頼むのじゃ」
『いや、だったら今すぐ転職神殿で……』
「うん?」
『……はぁ。またそれかよ。
分かった、今回は勇者も倒したからボーナスで葉っぱ<世界樹の葉>もつける。
オオダチョウ便で送るから……
ソコの景色だとフランフラン城近くの小川の傍で良いのか?』
「おお、流石はロマン殿、助かるわい」
『調子が良いなぁ、クソ!」
そう言うと、オスカル・アンドレ・ロマンは通信を切った。
このやり取りを見ていたスライムと若いダークメイジは喜ぶ。
「さっすがコウゾウさん!」
「爺ちゃんヤルぅ!」
「ふぉっふぉっふぉっ。
まぁ昔取った“杵柄”じゃよ」
「ふーん……爺ちゃん“キネヅカ”って何?」
「なっ、お前はそんな事も知らんのか?」
「うん……マツダ、お前知ってるか?」
「え?いや……コウスケ君。
そんな古い言葉お爺ちゃん位しか使わないよね」
スライムと若いダークメイジのやり取りを聞いていた、老ダークメイジは、殊更嘆いて言った。
「最近の若い者はモノを知らぬ……
本当に知らぬのか?」
『……うん』
老ダークメイジは頭を抱えて「信じられん」と呻くと言った。
「昔鍛えた腕前や技の事じゃよ」
すると若いダークメイジは不服そうに口を尖らせて言った。
「だったらそう言えばいいじゃん」
「うん?」
「知らない俺がおかしいみたいな言い方は無いと思う……
そう言えばいいだけの話じゃん」
そう抗議した若いダークメイジにスライムが急いで言った。
「コウスケ君、そう言う言い方無いから!」
「え?なんで……マツダだって知らなかったじゃん」
「いやそうだけど、そう言う問題じゃないから。
コウゾウさんに対してあんな言い方は無いだろう……って」
「はっ?
お前だって知らなかったくせにどう言う訳?
お前が自分の事どうして棚に上げてんの?」
「いや上げてねぇし……」
「上げてんじゃねぇかよ!
今この空気はお前が作ってんだろ!
俺が全部悪いみたいなさぁっ。
俺が一番悪いみたいに言いやがってよぉッ!」
「言ってねぇよ、頭悪い事言ってんじゃねぇよ」
「なんだとマツダぁ、コラァ!」
「やめんかコラッ!」
この様子を見ていた老ダークメイジが、再び間に入る。
◇◇◇◇
―20分後
「毎度ぉ、特急便です。
お荷物お届けに上がりましたぁ」
そう言ってオオダチョウに鎮座した、エンペラスライムがA4サイズの封筒を持って、この場所にやってきた。
「ああ、ミト君<エンペラスライム>しばらくぶりじゃな」
「あ、コウゾウさん、お久しぶりです。
アソコでぽっくり逝ってる勇者、コウゾウさんが倒したんっすか?
やばいっすね、いい稼ぎになりましたね」
「まぁ、な……」
「それはそうと……なんかマツダの奴ふてくされてません?
今日アイツすっごい態度悪いっすよ」
「ああ、色々あってなぁ」
「コウスケとぶつかったんですか?」
「分かるか?ミト君……」
「まぁ、空気感で何となくは……
大変っすね」
そう言うとエンペラスライムは、受取のサインを貰うと、颯爽とこの場を後にした。
それを確認した老ダークメイジは、ひっそりと溜息を吐く。
やがて彼は、届いたばかりの袋を破り、中から2枚の葉っぱを取り出した。
そして、道のはずれで息絶えていた、オオガラスとオオオウムの体に一枚ずつ置いた。
するとその葉は輝きだし、それぞれオオガラスや。オオオウムの体の中に吸収される。
「う、うう。死ぬかと思った……」
「ぐぎゃぁ……」
次の瞬間蘇りながらそう呻く二羽の鳥。
老ダークメイジは(いや、死んでたぞ?)と思いながら、何も言わず頷いて二羽の様子を見ていた。
「おっ、ヤスイ!クワタ!。無事だったのか!」
立ち上がった二羽を見た若いダークメイジはその姿を見つめるなり、嬉しそうに叫んだ。
「あれ……ひょっとしてコウスケ君、俺達死んでた?」
オオガラスはまだ寝ぼけたような顔で、そう若いダークメイジに尋ねた。
「ああ、死んでたよ」
「マジかぁ……あ、それじゃあ女を3人も侍らしたスケベ勇者は?」
「あれは爺ちゃんが倒した」
「……また経験値が入らなかった。
マツダ君とコウスケ君はレベルアップしたんスか?」
「ああしたよ。お前ら惜しかったなぁ」
「うわぁ、残念……
今度こそレベル7に行くと思ったのにな」
「まぁ次があるさ」
こうして蘇ったばかりの仲間を交えて楽しげに談笑する4匹。
先程までのギスギス感もすっかり取れた様子を見て、老ダークメイジは「やはりバカは4匹集まった方が楽しいのぉ」と呟く。
「爺ちゃん、バカって俺達の事かよ!」
「おや?聞かれてしまったか。
ふぉっふぉっふぉっ、他に居らんじゃろ」
孫の若いダークメイジはこの言葉に口を尖らせ、祖父は眉を嬉しそうに細める。
こうして5匹の魔物は楽しそうにじゃれ合った。
◇◇◇◇
それから間もなく……
老ダークメイジの掛け声に急かされ、4匹の魔物が、青息吐息で棺桶を引いて道を行く。
「さぁ引け、もっと引け!」
良く晴れた南国の日差しの下、彼等は間近にそびえるフランフラン城とその城下町を目指す。
老ダークメイジ追い立てられる、哀れな4匹の魔物達は、その重みに耐えかねて、呪いの言葉を発し続けた。
「爺ちゃん……この為にヤスイ達を蘇らせたな!
ああークソッ、善い魔物だと思ったのに詐欺だっ(注、コウスケ主観)悪人だ!
チクショウ……勇者の野郎重いぜ」
「ヤスイしっかりしろ!女魔導士はこの中で一番軽いんだぞ!」
「辛いぎゃ、辛いぎゃぁあぁぁ」
「クッソ女僧侶の奴、栄養が胸に行って見た目より重いぞ!」
「はぁ、はぁ……だったら女戦士お前が担ぐか?コラッ」
全滅した勇者パーティは、こうして魔物に引きずられて、最寄りの人間の町まで向かっていく。
「頑張るのじゃ、人間の町の教会に引き渡さないと、報酬が創造主様から貰えぬでな。
しかし勇者たちは知っておるのかのぉ?
全滅してお金が何故半分減るのか……
4分の1はワシら、そして残りの4分の一は創造主様経由で、協会が棺桶代として貰っていくのだがのぉ」
重労働は若者にやらせる雇用主は、そう言った後に、「ハイッ、ハイっ、ハイッ!」と、手を叩いて若者たちを煽りたてた。
「コウゾウさん、手を叩くのをやめてください!
ムッチャ腹立ちます!」
「ふぉっふぉっふぉっ、クワタ君は給料が要らぬようじゃなぁ……」
「そんな‼狡いヨッ」
「ほらほら、若者は労働せんか。
ハイッ、ハイっ、ハイッ!」
給料を人質に取られ、しぶしぶ従うオオガラス、その他。
その中の一人である、若いダークメイジは、一番重たい勇者の棺桶を引きながら「見てろよ、ぜってぇあの爺を雇って棺桶引かせてやる……」と呪う。
それを聞いたスライムは「コウスケ君、その日が来たら手伝うよ……」と答えた。
『…………』
それを聞いた3秒後の事である、先程までスライムと喧嘩していた、若いダークメイジはにやりと微笑んでこう言った。
「……ふ、ふふっ。
その日が来たら呼んでやるよ、マツダ……」
「ああ、楽しみにしてる」
こうして先程喧嘩していた二匹は理解し合った。
男達は互いに重労働に喘ぎながら、微笑みあって和解を果たす。
因みに老ダークメイジはそれを地獄耳で聞きながら(20年早いわ、馬鹿者め……)と、思っていた。
しかしまぁ血気盛んな若者の言葉と捉えた彼は、何も言わずまた「ハイッ、ハイっ、ハイッ!」と急かした。
それに追い立てられるように、哀れな若い魔物の苦行は続く。
やがてフランフランの町のすぐ傍で彼等は、休憩を取った。
草っぱらに寝転び『ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇっ……』と息を荒げる4匹。
老ダークメイジは、近くの岩に腰かけて水筒の中の水を飲みながらその様子を見る。
やがて寝転ぶ魔物の中から、若いダークメイジが声を上げた。
「じ、ジィちゃん……ゼェゼェっ、ウッグ!
はぁハァハァ……創造主も金を、ガメて行くのかよ」
「いきなりなんじゃ……
まぁいいじゃろ、答えてやるとな。
棺桶代じゃよコウスケ、棺桶を一から作る訳に行くまい?
ましてやアイテムとしてあんなデカいのは持って歩けんじゃろ。
勇者が何かあった時の為に、自分が入る棺桶担いで魔物と戦う訳が無い。
ワシらだって同じじゃぁ。
棺桶にも入らず死んで、それで2日ほど放っておかれると、アンデッドになってしまうしのぉ」
「き、汚ねぇ……それが嫌なら棺桶代を払えって言うのかよ」
「ふぉっふぉっ、理解が早いのぉ、流石ワシの孫じゃわい。
コウスケや、世の中そう言うもんじゃよ。
まぁいきなり死んだら棺桶に入れられるのにも、ちゃんと理由があるという事じゃ。
……まぁ、死んで生き返らないよりはマシじゃろ、それこそクソゲ〇じゃ。
遺体がある限りは何とかなるもんじゃて」
祖父にそう言われた後、若いダークメイジは何も言わずに、ただ黙って空を見上げた。
そして青い空を眺めながら(世界は理不尽で出来ている……)との、真理を確認する。
老ダークメイジも、孫と同じく空を見ながら(コウスケは何を考えているのやら……)と違う事を考えていた。
……そしてふと見上げた空に、懐かしいモノによく似た形の雲がある事に気が付く。
その雲に、自分よりも先に亡くなった、この子の親で、自分の息子のマスターメイジの姿が重なる。
(コウタ……仲直りすればよかったなぁ)
昔を思い出して、思わず涙が零れた老ダークメイジ。
やがて“ガキ共に見られたら、何を言われるか分からん”とばかりに、涙を袖で拭った彼は、いつまでも寝ている4匹に声を掛けた。
「さぁ行くぞお前達!
休憩はおしまいじゃ」
『はーい』
こうして若者4匹を従え、老ダークメイジが、残り僅かな道を行く。
そしてフランフランの町に辿り着いた彼等は、門番を通じて、教会の司祭を呼び出し、勇者達の棺桶を引き渡した。
……因みにその後の勇者達の事を説明すると。
勇者達は老ダークメイジが言ったように、彼等の持ち金は半分となった上で、復活した。
ただしケチな教会の司祭は、勇者一人だけを復活させる。
つまり他の仲間を蘇らせたかったら別料金と言う事だ。
……こうして勇者達が全滅する度に、死んだ仲間が棺桶に入り。
近くの教会に引きずり込まれて、そこで旅を再開する。
そんな、死ぬと持ち金が25%ずつ移動する世界……
魔物達と勇者は毎日、神々が住まう天上界イイダバシの創造主を呪いながら、今日も元気に死と復活を繰り返す。
これはそう言う世界の物語なのである……
今日はこのテーマです、もし「そう言えばナゼ?」みたいな疑問があればそれをお題にして話を一本考えてみます。
あと数話書いたら終わりの軽い物語ですが、宜しくお願い致します。




