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あの輝く様な空中庭園の道端で……5/9

その後彼等は庭園に辿り着き、そして中に入る。

……そこは敵地だという事を忘れさせるような場所だった。

鳴り続ける鐘の音は遠く、常に水の流れる音と鳥の鳴き声が、穏やかに流れる。


キュンキュン、ピーッピーッ……

ザァー……ザァー……


庭園にはそころかしこに珍しい花や、果物が生る樹が植わっていた。

甘い果実の(にお)いや、心を癒す(かお)り高い花の匂い……

目で見るモノも鼻で()ぐ香りも、肌で体験する全てが素晴らしい世界がそこに広がっている。


「すごい……」

「こんな理想郷が、世界に在ったんだ」


4人はこの空中庭園に圧倒されて、導かれるように平和な道を歩いた。

石畳(いしだたみ)の道を踏みしめ、そして長い階段を乗り越えて前へと進むラ★ニーズ。

時間を掛けて3階層を上り終えた彼等は、此処で初めて“誰か”に出会った。

みすぼらしい服を身にまとい、静かに端座(たんざ)して祈りを捧げる、オオオウムと人間の男である。


『…………』


魔物の姿を見た彼等は、早速武器を構え遭遇戦(そうぐうせん)に備える。

しかしそんな彼等に人間の男が、静かに微笑んで言葉を掛けた。


「おや珍しい、王妃様の試練に挑まれる方お越しになったようだ」


そんな事を言われて面食(めんく)らった、ラ★ニーズの面々。

そんな彼女達に、男は言う。


「私はヤン、もうここに住んで長い。

だが隣にいる方はもっと長い。

体は(ほろ)んでも魂を引き継ぎ、そして……王や王妃の理想を語り続ける者。

試練を乗り越えた者に、多くの祝福を授けるのが我らの役目」

『…………』


彼の語り口に神秘(しんぴ)を感じ、思わず戸惑う冒険者たち。

その彼等の前で、祈り続けていたオオオウムが目を見開き、ラ★ニーズの面々を見た。


『…………』


それは美しい瞳をしている、魔物だった。

(けが)れも知らず、憎しみも怒りとも無縁な、全てを悟ったかのような深い色を(たた)えたつぶらな瞳。

オオオウムは清冽(せいれつ)な印象を与える、魅惑的(みわくてき)な笑みを静かに浮かべると、やってきた冒険者にこう語りかけた。


「ようこそ、試練の間へ……

私はヤスイと申します」


“焼き肉串”は、この想像もしていなかった超展開に唖然(あぜん)とし、そしてぼんやりとこの一人と一匹の言葉に耳を傾ける。

ヤスイと名乗ったオオオウムが語りだす。


「私の存在に驚いたか、とは思いますが驚かずに聞いて下さい。

この庭園は聖なる力によって清められた場所。

ここでは一切の武力による闘争は禁じられているのです。

もしもその禁忌(きんき)を犯せば、庭園はあなた様を締め出し、二度とその中に入る事は出来ないでしょう」


“焼き肉串”は先程、透明な壁に阻まれて中に入れなかった魔物達を思い出しながら「なるほど……」と答えた。


「この空中庭園で武力闘争が許されるのは最上階の王の階だけ……

今はそこに(とうと)い方がいらっしゃる」


それを聞いた“焼き肉串”は「もしかして魔公爵?」と尋ねた。

清らかな瞳のオオオウム、ヤスイは「私も名前までは存じません、ただ王妃様に許された存在」と答えた。


「ヤスイさんだっけ……幾つか聞いてもいいかしら?」

「ええ、私の知る事であるなら何なりと」

「ここに来る前、何人もの魔物達が、王妃の力の事を言っていた。

この王妃の事を教えて欲しいの」

「分かりました……

私も王妃様の全てを知っている訳ではないのですが、お答えいたしましょう。

王妃様は今から300年以上前、フランフラン王国の王とご結婚をされました。

王は威厳(いげん)がありそして大変戦に強かったのです、しかしそれは多くの征服事業によってなされたもの……

お優しい王妃様はその事に心を痛めておられた。

そして王はそんな優しい王妃様の為に、理想郷をこの都に御造(おつく)りになる決心します。

それが王国の力の全てを結集(けっしゅう)して造られた聖域、神聖なる空中庭園……

ここでは人間も魔物も、武力で争う事は許されません。

……王妃様が決して望まない故に。

彼女の望んだ心の平穏(へいおん)の為の理想郷は、彼女がこの地から消えたとしても、その理想を引き継ぐ者達の手で今日も(いとな)まれている。

それが私やヤン、そして他の(わず)かな者達という訳です」

「なるほど、ヤスイさん、良く分かったわ。

あともう一つ聞いていい?

もう一回聞くけど、上にオスカルらしき奴が居るの?」

「名前までは分かりません」

「いいわ、どうせ頂上に登らないといけないのでしょ?

ここを通るわよ」

「通るのは良いですが、門の扉は()まっていますよ?」

「……開けてよ」

「分かりました、それでは試練を乗り越えたのならその扉を開けましょう」

「……試練ねぇ。受けなきゃダメ?」

「庭園を後にしたくないなら、受けてください」


女盗賊は(庭園を追い出される王妃の呪いかぁ……)と思いながら「どんな試練?」と尋ねた。

オオオウムのヤスイは隣にいるヤンの顔を見て静かに頷いた。

するとヤンは静かに一つのボードゲームを目の前に置いた。

それを見てハニーが「これは?」と尋ねた。

ヤンは穏やかな目で答える。


「運命ゲームです。

皆様はそれぞれ赤ちゃんからスタートし、勉強や就職、結婚を経てゴールをし、最後に一番多くお金を持ったプレイヤーが勝ちになります」

『…………』


冒険者たちは黙ってこのゲームを見て、動きを止めた。

……やらなきゃダメなのか?と思って。

それを察したオオオウムのヤスイが答える。


「争いが無い空中庭園でも、やはり白黒つけなければならない時があります。

そんなとき武力を用いてはならないので、こういったものを使って勝ち負けを決める事になっています。

アナタは門を通る事を望みました。

それを叶えるためには代償(だいしょう)を払わなければなりません。

それは勝利で(あがな)うのですよ」

「……もし断ったら庭園を追い出されるのね?」

「そう言う事です」


それを聞くと“焼き肉串”は静かに溜息を吐いて「やるしかないようね……」と呟いた。

こうして彼等は勝負に同意し、ベンチとテーブルがある四阿(あずまや)に移動した。

そして運命ゲームを始める。




―3時間後


「いやったぁ、僕いっちばぁーん」


2回目でハニーが強運を引き当て、トップでゲームの勝利者となった。

ヤンとヤスイは『負けたかぁ……』と、悲しげに呟く。


「さぁ約束よ!扉を開けて案内してっ」


“焼き肉串”がそう言うと、ヤンとヤスイは残念そうに微笑んで彼等を上の階へと続く扉の方に案内した。


ギィ……ギギギギギギ……


重たい音を立てて、ゆっくりと開いていく鉄の扉。

しかし扉の先には無数の穴が開いた石の台と、別の扉があった。


「ちょっと、あの扉も開けてよ……」


それを見て、不満を溜めながらそう告げた“焼き肉串”。

そんな彼女に人間のヤンが告げる。


「左をご覧ください……」


言われるがままに左を見る一行。

するとそこには……1カラットほどの大きさのルビーが光っていた。


『…………』


宝石を見た瞬間、じゅるりと、脳からヨダレが垂れる女盗賊“焼き肉串”。

そんな彼女にオオオウムのヤスイが言った。


「あの宝石の脇に洞窟があります、それを最後まで行くと出口があり、そしてあの宝石も含め、全部で12の宝石を回収できます。

一回目の洞窟はルビー、次がサファイアでその次がエメラルド、最後はダイヤモンドが手に入り合計48個の宝石が手に入る。

そして手に入れた宝石は、そこに在る無数の穴が開いた台の穴に入れてください。

……あの台の穴の数も48個あります。

全ての宝石を回収し、ソレで全ての穴を埋めた時、次の扉が開かれます」

「そんな面倒な……」

「ちなみに宝石は王妃様からあなたに下賜(かし)されます」

「え?」

「ですから、王妃様から、あなたに(おく)られるので、持って帰っていいですよ」

「え、ルビーとかサファイアとかも?」

「ええ、エメラルドとか、ダイヤとか……」

「全部?」

「はい、48個全て」


それを聞いた“焼き肉串”は決意のこもった声で言った。


「王妃様の試練……挑むしかないわね」

『…………』


それを聞いた男達は黙り、そして静かに項垂(うなだ)れた。

彼女達はこうして洞窟の中に入る。

松明(たいまつ)を手に中を進む“焼き肉串“達。

途中目立つところに置かれている宝石を手に取り、嬉しそうにはしゃぐ彼女に、男達は愛想笑いを浮かべて見守った。

洞窟の中は罠も何もなく、しいて言うなら最後に木製の扉があったくらいで、それを開けて外に出られた。

因みに扉は外からは開けられないらしく、外に出るともう中には戻れない。

結構な時間を歩き回り、暗闇のもたらす緊張感の中進んだ彼等は、外の光を浴びて安心したように言葉を漏らす。


「結構時間かかったね、次の洞窟って何処だろ?」


ハニーがそう言うと、アランもほっとしたように言った。


「でもまぁ、これで次に進めるな。

次の洞窟を探そうぜ」


その傍で宝石を掌一杯に集め、ご機嫌な“焼き肉串”はその声に応え「そうね、次行きましょ、次!」と声を上げた。

こうして彼等は付近を捜索(そうさく)し、次の洞窟を見つけようと歩き回る。

……ところがどこをどう探しても、今出てきた開かない扉以外に、洞窟らしきものは無い。


彼女達が明らかにおかしいと思い始めたのは、それから大分時間が経ち、夕方近くになってからだった。

夕焼けの光の中で彼等は話し合う。

最初に口を開いたのはニックだった。


「あのさぁ……色々見て回ったけど。

洞窟はココ以外にどこにもないよね?」


アランもハニーも無言で頷く。

そしてニックがさらに言葉を続けた。


「しかもここ、どう見ても空中庭園の入り口付近だよね。

あの建物の形、見覚えがあるんだけど」


4人はそう言うと入り口と思しき場所に在った、小屋に目を向ける。

そしてニックは重たい荷物を背負い直しながら、くたびれた顔で言った。


「どうする、もう一回庭園の中を進んでみる?」


……それは聞きたくない一言だった。

しかし他に道も無いし、くたびれているところに、やる気満々の魔物に出会いたくも無かった彼女達は、安全と思われる空中庭園の中に戻る事にした。

ややお疲れ気味で、途中庭園に生えている果物を(かじ)りながら4人は、先程よりも時間を掛けてヤンやヤスイ達が居る場所に戻る。

そしてヤスイ達二人の姿を見た“焼き肉串”は、少し強めな声でこう切り出した。


「ねぇ、次の洞窟なんかどこにもなかったわよ!」


するとヤンが口を開いた。


「おかえりなさい、ずいぶん時間がかかりましたね。

洞窟は一つしかありませんよ」


この言葉に首を傾げた“焼き肉串”達。

そんな彼女達にヤスイが無慈悲な事を言った。


「ではまた運命ゲームで勝負しましょう。

勝ったらまた扉を開けるので、洞窟をまた潜ってください。

次はサファイアを集められますよ」

「え、もしかして……また?」

「そうです、次が2回目です」

「…………」

「ただ今日はもう遅いので、明日にしましょう。

すぐそこに園丁(えんてい)が寝泊まりしていた小屋があるので、そちらをお使いになると良いでしょう。

ではまた明日……」


そう言うとヤンとヤスイは此処から立ち去った。

その様子を呆然とした表情で見送るラ★ニーズの面々。

精神的にも、肉体的にも疲れ果てた彼等は感じたことも無いような疲労感に襲われながら、言われた通り、近くの小屋に入っていった。

そして互いに見張り番を決めて、交互に寝る事にする。


見ていただいてありがとうございます。


もしよろしければでございますが……

つまらなかった、面白かった等ございましたら。

画面下に在る星をつまらなかったら★一つ、面白かったら★5ついただけないでしょうか?

そしてご感想の方を戴けたらなおのことありがたく思います。よろしくお願いいたします。

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