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あの輝く様な空中庭園の道端で……4/9

そのようにして時間を()た後の事だ……

書類がピカッと光り始めたので、顔を上げるとモバセルラの魔法映像が自分に繋がったのが見えた。


『失礼します、オスカル様!』


見ると城門を守るダークメイジが、青ざめた顔で緊急通報を自分に伝えていた。


「どうした一体?」

『オスカル様大変です例の“焼き肉女”が、今しがた城門を破壊して街の中に侵入しました!』

「……そんな」


今しがた、こちら側で一番強い魔物である、老ダークメイジのコウゾウを、連絡のつかない場所に派遣したばかりである。


「何てタイミングが悪い……」

『奴らは、まっすぐオスカル様のお城を目指しています!』


(あわ)てながらどこか冷静な頭で、善後策を考え始める魔公爵。

彼は静かに落ち着いた声でこう命じた。


「奴等を我が城に入れる事は出来ない。

アソコには財産が貯められているし、それを奪われて財政破綻したら重税を課さなければならなくなる。

顧問のオオスギにこの事を伝えよ。

此処は魔物の数も少ないし、力の差もあるのであの女に戦いを挑んでも被害が出る。

そこで……例の作戦を実行する。

お前達は戦う振りだけを派手にし、奴等を空中庭園に誘導するのだ!」

『分かりました!』


次の瞬間モバセルラの魔法は消え、静けさが戻る。


「……よし、やるか」


オスカル・アンドレ・ロマンは、そう決意の籠った声で呟くと、鎖でぶら下げた小ぶりの水晶を手に持ち部屋を出た。

廊下に出ると、先程自分を苛立たせたアホ孫とその一味が、居間でゲラゲラと呑気に笑いながらくつろいでいる声が聞こえた。


「ああ、アイツ等で良いか……」


そう呟くと、オスカル・アンドレ・ロマンは居間に向かった。


「……だろ、だからミトさんに言ってやったんだよ、俺わぁ」


若いダークメイジがそう自慢げに仲間に、どうでもいい話を披露(ひろう)しているのが視界に入る。

やがて魔公爵は、遠くで自分の存在に気が付いたオオオウムを手招きした。

オオオウムは“自分の事呼んでます?”と言いたげに、自分の顔を指さす。

黙って頷き、再度彼を手招きする、オスカル・アンドレ・ロマン。

オオオウムはやって来るなり「公爵様、どうしましたギャ?」と尋ねた。


「お前、名前はなんて言う?」


オスカル・アンドレ・ロマンがそう尋ねるとオオオウムは「ヤスイと言いますギャァ」と、不安げに答えた。

するとオスカル・アンドレ・ロマンは手から鎖でぶら下げた水晶を、彼の鼻の前で()らし始める。

そして声のトーンを落とし、落ち着いた声音でこう語り始めた。


「ヤスイ、この水晶を見ながら私の話をよく聞け。

実はお前はただの魔物ではない。

お前は特別な使命を持った、特別な存在なのだ」


揺れる水晶は屋敷の外から入る、明るい陽の光を受けて、その色を青に、紫に、赤に緑に……と色を変えて行った。

それを見ながらオオオウムは「そうなんですギャ?」と尋ねる。


「ああ本当だ……

お前は心の奥底(おくそこ)で、本当の自分はこんな所でこんな事をしている自分じゃない……と思った事は無いか?」

「あ、ありますギャ」

「それはだな、ヤスイ。

本当の自分はこんな所に居ないと、実は知っていたからそう思っていたんだ」

「そうなんですギャ?」

「ああ、そうじゃないと、そんな真実を自分で知っている筈ないだろ?

本当のお前は特別な使命を持っている」


規則正しく揺れる、不安定な色を放った透明(とうめい)な水晶。


フォン……フォン……


耳をすまさなければ決して聞こえない、水晶が切る、風の音がオオオウムの耳に届き始めた。


「そうなんだ……」

「ああ、本当のお前はこの空中庭園で、大きな役目を果たす選ばれた者。

思い出さないか?」

「そんな、いや、でも……ギャア」

「思い出すんだヤスイ、あの美しい日々を……

多くの者がお前に敬意を表していた。

お前は(つか)えていた主に信頼され、そして目下のモノにも慕われていた……」


目の前で揺れる水晶、蠱惑的(こわくてき)なオスカル・アンドレ・ロマンの落ち着いた声音(こわね)……

不意にオオオウムの頭の中に、美しい光景が広がり始める。


「……みんなが私に挨拶(あいさつ)をしていますギャ」

「そうだ、それが本当のお前の姿だ。

思い出したか?ヤスイ……」


オオオウムはそれを聞きながら、トロンとした目で頷いて「思い出しました」と答える。


「フランフランの王は慈悲深く、そして王妃は優しい方だった。

そんな彼等の言葉を100年でも200年でも語り継ぐのが、聖職者であるお前の役目だった。

そうだな、ヤスイ……」

「そんな気がします……」

「お前の使命を思い出すんだヤスイ、王はお前にこう言った、例えば……」


◇◇◇◇


―同時刻、空中庭園の下の街。


女盗賊“焼き肉串”とそのパーティであるラ★ニーズの面々は、ガランガランと鳴り続く鐘の音を聞きながら無人の街を歩いていた。


「ヤッピー、ココの連中も僕達を歓迎(かんげい)しないみたいだね」


遊び人のハニーがそう言って“焼き肉串”に、この寂れた町を溜息交じり評した。


「人間の建物が綺麗に残っているのに、皆隠れて出てこない……

本当に、ココの連中は魔物に()びを売っているね、まったく」


女盗賊もそう言って、この現状を嘆いた。

扉や窓の隙間(すきま)から、人間の目線が恐る恐るこちらを見やるのが見える。

オスカル・アンドレ・ロマンが(した)われていると言うよりは、皆フランフランの王が帰って来るのを恐れていた。

……それだけ以前の統治が良くなかったのだ。

それを見ながら女盗賊は、街の住人を鼻で笑い、そして吐き捨てる。


「まぁ、ヒトの目を覚まさせてやるなら、強硬手段を取るのが一番よ。

このまま魔物に媚びを売って過ごす事なんて出来ない……ってね。

こんな狂った日々も、オスカル・アンドレ・ロマンを倒せばすぐに終わるわ」


そう言って堂々と、目の前にそびえるオスカル・アンドレ・ロマンの居城を目指す“焼き肉串”。

戦えば負けない……そんな根拠も無い自信が胸に満ちていく。

踏みしめる一歩は力強く、彼女を栄光へと押し出した。

やがて魔公爵の立派な城の立派な門が視界に飛び込んでくる。


……その時だ。

どこか必死な形相のダークメイジが2匹のオオヒツジを従えて、視界の隅を叫びながら駆けて来たのだ。

ダークメイジは仲間に命じる。


「急げ!オスカル様は空中庭園にいらっしゃる。

城を放棄して庭園を守るのだ!」


彼等は“焼き肉串”達の事に見向きもせず全速力で、そびえたつ“例の”緑の構造物を目指す様である。


「ヤッピー、オスカルは城に居ないって言ってるけど……」


そう言って“焼き肉串”に、今後の方針を求める遊び人ハニー。


ガラーンゴローンガラーンゴローン


鳴り響く鐘の音を聞きながら、今の状況に頭を悩ませる“焼き肉串”……決断をどう下せばいいのか悩む。

しかし今の話を聞いたニックは「でも今のあざとくなかった?」と言った。


「まぁ、確かにあざといと言えばあざとくも見えるけど……」


そう言ってさらに悩む“焼き肉串”。

次に鳥型の羽根の生えた魔物も、空を飛んで数羽空中庭園らしき、緑の構造物目指して飛んで行くのが見えた。


『…………』


それを見ると、魔物が城を放棄しようとしていると思えて仕方がない。

色々考えた末に彼女は「とりあえず、城に行きましょう」と言った。

こうして辿り着いた立派な城門。

ところが門番もおらず、人っ子一人いない。

自分の防御力に自信がある“焼き肉串”は、不意打ちを恐れる事無く、城門の脇にある小さな勝手口を押した。


キィ……


勝手口は特に抵抗も無く開き、中に入っても人も魔物も誰もいなかった。


『…………』


やっぱり居ないのか?そう思いながら黙って中に入った4人。

建物の中に入ろうと扉に手を掛けたが、さすがにそこには鍵が掛かっているようで中に入れない。

そこでハニーに肩車をしてもらって、女盗賊は窓から中の様子を見た。

……が、建物の中にも誰もいない。


「いないみたいだね……」


“焼き肉串”がそう呟くと、アランが「ヤッピーどうする?」と尋ねた。


「どうしようか?私こういう状況になるのは想像できなかった」


それを聞いたハニーが「窓を割って中に入る?」と提案する。

しかしそれを聞いた“焼き肉串”は今見た光景を思い出しながら首を振った。


「駄目だよ、オスカルを倒したらこの城の中に在るのは全部私達のモノになるんだよ?

中は結構豪華だったし、この城を私達のモノにした後、真っ先にやるのが廊下の掃除だなんてもったいないよ!

絨毯(じゅうたん)だって傷ついちゃうよ!」


それを聞いたニックは(あ、もう自分のモノにしたつもりなんだ……)と、思った。

それはそれとして、ハニーが尋ねる。


「じゃあどうする?

オスカルを倒すなら、空中庭園とかいう所に行く?」


それを聞き“焼き肉串”は悩んだ末に答えた。


「とりあえず行ってみようか?

その上で危険なら、一度撤退しても良いし」


その後4人で色々話し合った末、彼等は一度行くだけ行ってみようという事になった。

こうして、パーティはこの城を後にして、緑の構造物を目指す。

道中は人の気配も、そして魔物にすら出会わず、彼等は道一杯に広がって堂々と、目的地に迫る。

そしてついに……先程のダークメイジと2匹のオオヒツジのグループに遭遇(そうぐう)した。


「何てことだ……遂に奴らに追いつかれたぞ!」


そう言って嘆くダークメイジ。

それを聞き……随分前に先行して行ったじゃないか、とラ★ニーズの面々は思った。


「クッソぉ、どうしてこの壁を越えられないんだ!」


それを尻目に、そう嘆いて見せるダークメイジ。

どこか白けた表情の“焼き肉串”達の前で、彼は見えない壁に手を置き、そして右に左に動き回った。


「なぜだ、空中庭園は俺達を拒絶(きょぜつ)するのか?どうしてなんだッ!」


すると隣にいたオオヒツジが口を開く。


「オザワ君、空中庭園は王妃の魔法によって、心の汚れた魔物は入れないって伝承がある!

俺達はひどい事をしていたから王妃の聖なる力に、阻まれては入れないんだよ!」


オザワと呼ばれたダークメイジは「そんな!」と呻いて、次に“焼き肉串”の方を見ながら叫んだ。


「やはり王妃も人間の子と言う訳か……

美しい理想を持つと言われたあの女も!」


そう言うと彼等は、この場を離れるべく走って逃げて行った。


「……壁が、あるんだ」


誰もいなくなった、空中庭園に向かう道を見て、ハニーがぽつんと呟く。

とりあえず、例の見えない壁のある辺りにまで行ってみたラ★ニーズ御一行。

特に壁は無く、すんなりと通れた。


「人間は通れると言っていたよね……」


ニックは戸惑いながらそう告げる。


「王妃の呪いがあるんだって、聖なる力で呪ってるらしいよ」


アランがそう言うとニックは「いや、聖なる力で呪えないから……」と訂正(ていせい)した。

とりあえず帰ると言うのもおかしいので、先に進む4人。

その後ろで他の魔物達が「透明(とうめい)の壁が……」とか「オスカル様に近づけさせる訳にはいかないのに!」と叫ぶのが見える。


「結界が、あるみたいだね」


ハニーがそう呟いた。

それを否定する材料も無い……

なんとなく彼等は静かに頷き、そして空中庭園を目指した。


見ていただいてありがとうございます。


もしよろしければでございますが……

つまらなかった、面白かった等ございましたら。

画面下に在る星をつまらなかったら★一つ、面白かったら★5ついただけないでしょうか?

そしてご感想の方を戴けたらなおのことありがたく思います。よろしくお願いいたします。

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