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あの輝く様な空中庭園の道端で……3/9

そんな感じで少しギスギス空気が流れる中、4人の視界に一本の光の柱が立ち上り、そして消えていった。


「なんだ、あれ?」


アランがそう言うと、ニックが「あれはエアタクシーの光じゃない?」と答える。

目線の先には城壁と緑に覆われた何かが見える。

光はその緑の何かの頂上付近から立ち上った。


「へぇ、向こうでも(エアタクシーの魔法が)使える魔導士は居るんだね。

……僕らはキマイラの翼のレプリカで代用だけど」


光を見たハニーがそう言うと“焼き肉串”が答えた。


「お金があれば別に要らないわよ、アイテムでどうにかできるんだし。

それよりも光った先に山みたいなのが見えるんだけど、アレが何か知ってる?」


そう言って彼女が指さした先には、例の“緑に覆われた何か”が城壁の向こう側にそびえている。

それを見て3人の男は首を(かし)げた。


「なんだろうね、あれ……」

「あんなのが在るだなんて、聞いた事も無いな」

「あれ人工物ですよ、滝がある山があんなに小さいなんて事は無いですから!」


城壁の中にそびえる、緑の何かはそれだけ存在感があり、異様な雰囲気を放っている。


◇◇◇◇


―少し前、空中庭園最上階。


「……デーブ、そんなやり方で大丈夫か?」


老ダークメイジは、空中庭園に在る立派な田舎風の屋敷の食堂で、オスカル・アンドレ・ロマンにこう返していた。

端正(たんせい)な顔に自信を(みなぎ)らせ、魔界詐欺師こと魔公爵オスカル・アンドレ・ロマンは答える。


「ああ、コレしかない。

と言うのも、実はコージが破れたと言う話がフランフラン王国内でも広まったらしくてな。

加えて経験値が数倍も出る事が分かった人間どもが、盛んにこちらを攻撃してきている。

そこで他所から来た強い魔物も、全部ワスプ―ルの橋に回さざるを得ないのだ。

あの例の女盗賊以外はまだ、橋を越えてはいないしな」

「もしかしてそれでこちらを手薄(てうす)にしたのか?

若君(魔戒王子エピリウスの事)の方にはサワちゃんを派遣して?」

「そうだ、エピリウスが()たれでもしたら、私が魔王様に殺されてしまう。

ソレに奴等の目的はどうやらエピリウスではないか?と言う憶測(おくそく)がある。

連中はワスプ―ルの橋を越えたら、脇目(わきめ)も降らずピース村に現れたからな。

橋からあそこまでは相当な距離もあるし、他に行くのにわざわざ遠回り等するまい」

「まぁそうじゃのう。

橋からこの城までは歩いて5時間ぐらいじゃし、わざわざそんな気合の入った遠回りする奴もいないしなぁ」


彼等は知らない、それを実際にした奴等が居た事を……


「デーブや、今この町に護衛の魔物はどれくらいいるのじゃ?」

「コウゾウさん達を含めて15と言ったところだ。

他はサワちゃんか、ワスプ―ルのコージの元に派遣している」

「少なすぎやせんか?」

「私の国では人間達も、私に忠誠を誓っている。

私は善政(ぜんせい)に勤めてきたからな、彼らの支持は万全だ。

むしろフランフラン王が帰って来るのを、人間達は恐れている。

だから反乱の心配はしていない。

それにあの“焼き肉女”は、ふざけた名前をしているが実力は大したもので、コージみたいな強者でもない限り、幾ら集めても足止めにもならないそうだ。

……まぁそんな事も有ってだ、人材層の薄いわが領地では、これ以上(魔物の)(かず)を集めてもどうにもなるまい。

万に一つという事も有って準備は(ととの)えるが、もしも……もしも連中がここまで来たら、この15名で何とかする。

エピリウス領内でもキャンペーンがあるようで、あの国の冒険者がコッチに来ても面倒だから国境は守り続けないといけないしな」

「若君の所でもキャンペーンがあるのか……」

「ああ、そうらしい。

そこで今回コウゾウさんにここまで来てもらったのは、一つお願いがあってな」

「なんじゃ?」

「魔王様に頼んで、魔素を受け取り、上のランクの魔物に上位転職をお願いしたい」

「……なるほど、キャンペーン中だからそれもありか」

「そうだ、キャンペーンも終われば人間達も元に戻ろう。

逆に言うと、それまでの間はコウゾウさんがダークメイジで居る必要は無い。

イイダバシの創造主に処罰をされん。

この方法が部下の配置換(はいちが)えをせずに、私の護衛力を高める一番いい方法だと思う」

「フーム、それは一理(いちり)あるなぁ。

お前さん……賢いなぁ、考えておる」

「ふっ、当たり前だ」

「分かった、ではワシは今すぐ魔王様の元に向かおう。

ただ分かっているだろうが、魔王様の城に着いたら、転職の神殿に入るまでは連絡はつかんぞ」

「分かっている、出来るだけ急いで戻ってきてくれ」

「分かった……それまでの間はコウスケを頼む。

何時頃行(いつごろい)けば良いかの?」

「今すぐお願いできるか?

コウゾウさんが戻るまでの間は私もこの、空中庭園の屋敷に(とど)まろうと思う。

ここならエアタクシーの魔法ですぐに来れるからな。

城に居ると、エアタクシーでは城の玄関までしか来れん。

玄関から私の居る部屋まではかなり距離があるし、コウゾウさんも咄嗟(とっさ)に私の居る場所がどこだか分らんだろ?」

「うむ、この屋敷は小さいからお前さんの居場所もすぐに分かる。

でも良いのか?逆に言うと“焼き肉”とか言う女が攻めてきても、身を隠すところが無いと思うが……」

「空中庭園の最上階まで来られたら、どちらにせよ隠れられん。

出迎える他あるまい……それに城の中をコソコソしていると、部下に()められてしまうだろうしな。

準備は整えたんだ、堂々とここで待つ」

「さすが魔公爵じゃな、10年前のお前さんとは、比べようもないほど立派な覚悟を備えた……

お前さんがそこまで心を決めたのなら、ワシはそれでいい。

……出来るだけ速やかに上位転職を果たして帰ってくる。

それまで待っていてくれ」

「ああ、待ってる……」

「ではすぐに行ってくる。

ここにマーキングして、すぐにこの屋敷の玄関に来れるようにしておこうかのぉ」


そう言うと老ダークメイジは屋敷の外へと出た。

空中庭園の最上階、湿(しめ)りを帯びた(きり)の様な(もや)が流れる、明るい庭園。

色とりどりの花が、規則正しく並べられ、蜂が蜜を集め、鳥が季節の歌を歌う。

そして庭園の外に目を向ければ、高所から見える下界の景色が輝く。

天空を飛び交う雲の陰……ソレが小高い丘や、まばらに散らばる集落の屋根を()ぎった。

美しき、空中庭園の風景。

これを見て老ダークメイジは、しめやかな声で言う。


「フランフランの王は、庭園を造るためにどれぐらいの人民を泣かせたのだろうな。

……これほど贅沢な庭園は他にはない。

だが罪深い事に、流された涙が多いほど、庭園や城は美しいと相場は決まっておる。

この空中庭園はその中でも最も罪深く、そして美しい」

「ああ、壊すのは忍びないので残してあるが、我が領内の人間がフランフラン王を嫌っている最たる理由がこの庭園だろう。

……美しい場所だ、作らせた王や王妃はきっとセンスが良かったのだろうな。

それが理由で帰還(きかん)(こば)まれているのだから、それを才能と呼ぶのには抵抗はあるが……」

「……良き統治を、魔公爵殿」


そう言うと老ダークメイジは、周囲を見回した。

そしてここから少し離れた所に、自分の所で働いている、孫の若いダークメイジ、そしてスライムやオオガラス、そしてオオオウムの姿を見出した。

老ダークメイジはそんな離れた所に居る、若いダークメイジを手招(てまね)きして呼び寄せた。

若いダークメイジは小走りで駆け寄ると「何?」と、祖父に尋ねた。


「コウスケ、ワシはこれから魔王様に拝謁(はいえつ)を願って来る。

それから転職神殿に行き、上位転職してから戻るつもりだ。

それまでの間はお前が皆を束ねよ。

それからデーブの言う事をきちんと聞くのじゃ」


若いダークメイジは「分かった」と言って頷いた。

老ダークメイジはそれを確認すると、オスカル・アンドレ・ロマンの方に顔を向けて告げた。


「それでは、魔公爵殿、孫をよろしく頼みます」


オスカル・アンドレ・ロマンも「ああ……」と答えた。

それを聞いた老ダークメイジは、魔法の言葉を唱え、エアタクシーを発動させる。

空に向かって伸びる光の柱、それに飲み込まれた老ダークメイジは、光と共にこの場所から消える。

それを見送った魔公爵は、溜息を(こぼ)しながら口を開いた。


「それでは、待つとするか……

コウスケ、お前達はどうする?

仕事がないなら人間達の仕事でも手伝っても良いぞ。

たぶん下の階で、(まき)(わり)の仕事とか、(まかない)(ごはん)作りの仕事があるはずだ」


すると、若いダークメイジは目をクワッと見開いた。


「あ、いえ。結構です。

お爺ちゃんから、働くなと言われているモンですから」


魔公爵は(絶対嘘だ……)と思いながら「ならば私の護衛として、屋敷の中にいるがよい、私は屋敷の執務室に居る」と答えた。

後は一切後ろを振り返る事も無く屋敷の中に入る。

その途中で耳をすまして背中越しに、彼等の話し声を聞いた。


「コウスケ君、マジで今のは神ってたわ!」

「いやいや、俺は単純にいつも爺ちゃんが言っている事を守っただけだからさぁ」

「コウスケ君マジで今のは男らしかったギャ!」

「俺じゃなくて爺ちゃんが立派なんだよ」

「そんな事無い、コウスケ君は気持ちが分かる男だ!」

「へへ、俺達は思いが繋がっているんだよ」


オスカル・アンドレ・ロマンは、屋敷に入ると扉を閉め、執務室に向かいながら「あの爺、絶対家庭教育間違えただろ!」と呟く。


「ああ、私の護衛をもっと信用できる奴にしようと思ったけど、これじゃあ無理だな。

まったくあのドラ孫、爺の血縁(けつえん)じゃなければ放り出してやるところだッ!

腹立たしい、本当に腹立たしい。

まったく……ブツブツブツ」


とにかく言ってやりたい気持ちを抑え、自分は公爵なのだからと、言い聞かせる魔公爵。

……偉くなっても、案外大変だ。

こうして執務室に帰るなり、箱一杯に積まれた書類と向き合う事になった彼は、このまましばらく仕事をする。


見ていただいてありがとうございます。


もしよろしければでございますが……

つまらなかった、面白かった等ございましたら。

画面下に在る星をつまらなかったら★一つ、面白かったら★5ついただけないでしょうか?

そしてご感想の方を戴けたらなおのことありがたく思います。よろしくお願いいたします。

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