私に羽が生えた日(後)
「へっ⁉何をいきなり……」
『まぁまぁ』
「イケメン……嫌いな人居ないよね?」
『ですよね、実はイケメンを助けて欲しいんですよ、3人ほど』
「3人も!」
『そうなんですよぉ。
彼等はユミさんほど出来が良くなくてね……
このままじゃあ、ニートになるしかないって状況なんですよ』
「なんで私がそんな事しなきゃいけないの?」
明らかに厄介ごとの匂いしかしない、そのお願いに“焼き肉串”は嫌な顔をする。
しかしミツカベは、あどけない笑みに自信を漲らせながら言う。
『勿論タダとは言いません。
もしご協力いただけたならユミさん。
あなたの本当のお父さんやお母さんに、会わせてあげます』
「え?」
『ユミさん、あなたの本当のお父さんやお母さんは、実はイイダバシに居るのです』
「え、どういう事……」
『実はね、ユミさん……あなたには秘密がある。
あなたはこの世界の人間じゃない。
アナタはこの世界を作ったイイダバシ側の人間なのです』
「!」
『驚きましたか?
アナタは我々創造主側の人間であり、この世界の一般のプレイヤーとも、NPCとも違う。
しいて言うなら……選ばれた人間』
「ほ、本当?嘘じゃないよね……」
『今のご自分のステータスを見ても信じて貰えません?
ユミさん、あなたが今着ているのはジルベストルの服。
腰に在るダガーはメテオリクで作られ、そして頭に在るのはオリハルコン。
持っている各種の技は世界でも限られた者しか覚えられない、超技と呼ばれる凄い技。
それを先程、一瞬で身に付けました。
……選ばれた人間以外が、それを手に入れる事が出来ると思います?
それは絶対に出来ません。
ユミさん……
ジルベストルの服を着ている今のご自分の身なり、そして今のステータスをご覧下さい。
それこそ且つて英雄だった、本当のあなたの姿の、ほんの一部です』
「……そう、なん、だ」
『これまで大変だったでしょう、ユミさん。
でもね、今日から始まる冒険こそが、本当の自分の冒険。
そして、繰り返し言いますが……今の姿が本当のユミさんの姿なんです』
「これが、本当の私。
そうか、そうだよね……そうじゃないかと思っていたんだ!
ミツカベさん、ありがとう!
最初は変な子が来たと思っていたけど、君良い人だね!」
『アハハハ、変な子かぁ……まぁ、良いや。
で、ユミさんお話の続きを言いますけど。
さっき話に出てきた3人の男の子達。
あの子達に、この世界の事を色々教えて、そして独り立ちできるように強くしてあげてください。
そうしたら、本当のお父さんやお母さんに会う事が出来ます。
その時は。もっと素晴らしい物もプレゼント出来ますよ』
「今持ってる物よりも?」
『ええ、比べ物にならない位ね。
……お願いしても良いですかね?』
そう頼まれて、悪い気がする筈も無く、彼女は「任せてよ、ミツカベさん!」と、請け合った。
それを見てミツカベも『それじゃあお願いします!』と言って微笑む。
『じゃあ、ユミさん。早速お仕事の話を始めますね。
あの……アソコなんて名前だっ気かな?
ちょっとド忘れしてしまいましたけど、ユミさんが良く行く酒場があるじゃないですか。
アソコの入り口前で、飲み食いも出来ないくらい、貧しい男の子3人が当てもなく座っています。
名前はハニーとリックとアランです』
焼き肉串は、マスターボルドーの酒場を思い出しながら答えた。
「へぇ、男の子達は期待できそうな名前ね……」
『かっこいいですよ。見た目は期待してくださいね』
「オッケー。うふふふ……」
『でも、まだレベル1なんですよ。
レベル1の新人冒険者が3人セットでいても、皆仲間に入れないじゃないですか』
「まぁ……純粋に荷物になるから、皆できそうな人をパーティに加えたがるよね。
3人も同時に新人の面倒なんて見たくないし……」
『そうなんですよ……
だから3人でバラバラになって、他のパーティに入れて貰えるように、交渉したら良いと提案したんですが……
どうも彼等はこのフランフランに来たばかりで不安らしくて、同じ境遇の3人で固まってしまうんですよね。
それでこれじゃあ、この世界で負けてしまうと思うんで、ユミさんに彼等の師匠役をお願いしたいんです』
「フーン、ミツカベ君も、イイダバシの仕事の関係で、その3人に声を掛けたんだ」
『そう言う事なんです、カサハラさんの指示で……まぁそれは良いですね』
「オッケー、それじゃあ早速、その子達を回収してくるよ」
『お、さすがは英雄のユミさん。仕事が早い!
それじゃあお願いしますね。
後、一つ言い忘れたことが……。
実はあと3か月とちょっと経ったら、強制イベントが始まります。
イイダバシに帰るのはその頃となりますので、イベントの情報に耳を傾けてくださいね。
強い魔物に出会えるようなイベントを企画しますので、それを合図だと思ってください』
「オッケー、じゃあ行ってくるね」
そう言って彼女は、ミツカベを置いてこの場所を立ち去った。
背後ではミツカベが「ユミさん、また会いましょう」と言って見送る。
こうして夕方、赤い日差しの中を、早速酒場に向かう“焼き肉串”。
途中行商人から大きな羽根付き帽子手に入れた彼女は、それを小さくなったオリハルコンの兜の上から、隠すように被せる。
そしてボルドーの酒場にまでやってきた。
(あ、あれかな?)
酒場の前、数段の石段に3人の若い男が、くたびれた顔で佇んでいるのが見えた。
(……さて、どう声を掛けようか。
いきなりやってきて、皆を助けに来たと言ったら、変な奴だと思われるだろうな)
そう思って躊躇い勝ちになっていると、視線を感じた3人の内の一人が、立ち上がってこちらに向かってきた。
「やぁ、僕等を見ていたみたいだけど。
何か用があるの?」
「え、ああ……ごめんなさい。
困っている人なのかなっと思った」
すると、彼は甘い顔に素敵な笑みを浮かべ「あれ、分かっちゃった?」と答える。
「実はね、僕等はこの町に来たばかりで何も分からないんだ。
一応冒険者パーティなんだけど、色々街の事を聞いてもいいかな?」
「ええ、私にわかる事なら良いわよ」
すると次の瞬間、彼は「アリガトォー」と嬉しそうに言って、子犬の様に彼女に抱き着く。
「こんなに優しい人に出会えて僕は感激したよ。
……あ、ごめんね、いきなり抱きついて」
なんか爽やかでいい匂いがする男に抱き着かれ、思わず「い、良いわよ別に……」と答える“焼き肉串”。
男はそのまま、抱きつくのを辞めて、体を放した。
そして近付いた距離をキープするべく、次に肩に手を回して「あの二人が僕の友達なんだ」と言う。
そしてそのまま彼女を自分の仲間の元へと連れていく。
“焼き肉串”は(こいつ上手いなぁ……)と、女の子相手に素早く近寄った彼の手際に感心した。
……悪い気はしない。
顔も良く、良い匂いのする男に近寄られてむしろ楽しい……
「みんな、優しい人に出会えたよ」
そう言いながら、目くばせする良い匂いの男。
それを見て他の2人の男も、嬉しそうに笑った。
(うわ、なんか企んでそうな顔してんなぁ)
とっさに“焼き肉串”は能力の鑑定スキルを使って3人の男のステータスを確認する。
良い匂いのする男のステータスは……
ハニー 職業:遊び人 レベル1
攻撃力4 (装備:そこら辺に在ったサイコロ運+1)
防御力9 (装備:普通の服+3 兜無し 盾無し)
知力47 (装備:今日からジゴロマスター2月号+9)
素早さ26 (装備:履き心地の良い靴+6)
幸運51 (装備:根拠のない自信+12)
特殊能力 褒める、魅了、イカサマ、ハッタリ。
(え、弱っ!)
因みに目の前の二人は……と言うと。
ワイルド風のイケメンと、真面目そうなメガネのイケメンである。
ワイルド風イケメン君のステータスだが……
アラン 職業:勇者 レベル1
攻撃力12 (装備:何かの棒+1)
防御力38 (装備:ダメージシャツ+0 兜無し 盾無し)
知力12 (装備:シニアマガジン2月号+1)
素早さ19 (装備:先の尖った革靴+4)
幸運13 (装備:Gを掲げたウサギのキーホルダー+3)
特殊能力 遠投、バッティング、観察。
(野球少年?)
女は思わずそんな事を思った。
因みに、なぜか野球と言うものがうっすらと記憶に蘇る。
だけど……あまり興味がわかなかったのでスルーして、次は眼鏡君のステータスを見た。
ニック 職業:僧侶 レベル1
攻撃力2 (装備:そこら辺の石+1)
防御力8 (装備:汚れたワイシャツ+2 兜無し 盾無し)
知力45 (装備:これで完璧表計算ソフトの関数EX+2)
素早さ10 (装備:履き心地の良い靴+6)
幸運6 (装備:ツイて無い男の悲観的な思い出―(マイナス)10)
特殊能力 祈る、見ていて悲しくなる表情、親切心。
(あれ、呪われてる?)
3人ともひどいステータスだと思った“焼き肉串”。
それと同時に、こいつらが束になって襲ってきても返り討ちに出来ると知る。
(さて、舐められない様に、一発言ってやろうかな?
さっき目配せして、キナ臭かったし)
ステータスを見て自信を深めた彼女は、舐められない様に、キツめに口を開こうとした。
グ、ググゥゥゥゥ……
この時、一番運が無かったニックのお腹が、せつなげに鳴り響く。
驚く“焼き肉串”と、ニック。
次の瞬間、顔を真っ赤にして俯くニックの姿に、焼き肉串は笑ってしまった。
そして笑い終えると、何とも言えない表情の3人相手にこう尋ねた。
「もしかして3人ともご飯食べてない?」
すると、顔を赤らめたニックが「実は昨日から何も食べてない」と答える。
それを聞き“焼き肉串”はニヤニヤ笑って、こう言った。
「ウフフ……可哀想だから3人とも私が奢ってあげるわよ」
『マジで!』
一様に喜ぶ3人、彼女はそのままこの3人を連れて自分の宿に戻る事にした。
そして彼女は宿屋に併設されている、狭い食堂兼酒場でご飯を奢る。
がつがつ、ムシャムシャ……
料理が運ばれてくるなり。一心不乱に食べまくる3人。
こうして久しぶりに腹いっぱい食べられた彼等は、食事を終えると彼女に感謝の言葉を吐き始める。
「ありがとうお姉さん」
ハニーがそう言うと。他の二人も頭を下げた。
そんな3人に“焼き肉串”は得意げに微笑む。
「別にいいわよ、だって働いて返してくれるんでしょ?」
眼を点にして、彼女の顔を見る3人のイケメン。
そんなイケメンを見据えながら彼女は言った。
「タダで奢る訳ないでしょ。
実はね、私ソロの冒険者なの。
因みに職業は盗賊、レベルは18……」
レベル18と聞いて目を丸くする3人。
正直、まるで雲の上のような存在がここに居ると思う。
そんな3人相手に彼女は言った。
「私も入れるパーティを探していたところなの。
ちょうどここに勇者やら僧侶やら遊び人……
遊び人は……いらないかなぁ」
そう言った瞬間、顔色をさっと青くする3人。
それを見て“焼き肉串”は、支配者のような目で言う。
「嘘よ、嘘……楽しい旅になりそうだし必要よね」
ハニーはそれを聞いて「うん、きっとお姉さんを楽しくさせるね」と答えた。
「ちょ、ちょっと待ってよ、まだ俺はパーティにこの女を加えるなんて言って無いぞ」
これを聞いて言葉を挟んだのはアランだ。
そんな彼の眼前に彼女が掌を差し出し、「それなら食事代返して」と言う。
「…………」
圧倒的なステータス差を本能で感じたのか、逆らわずに思わず黙るアラン。
やがてニックが口を開いた。
「ど、どうして僕が僧侶だと分かったんですか?
まだそんな事言ってないと思うんですが」
「簡単よ、私鑑定の能力があるの。
だからあなたの名前もステータスも知ってるわ。
3人ともレベル1よね」
「うん、まぁ……」
「そしてこのままじゃあ旅支度も出来ないでしょ?お金も無くなったし」
そう言われて、3人は初めて互いを見やり、そしてやるせなさそうに頭を抱える。
全ては彼女の言う通りであり、このままじゃあジリ貧だった。
そんな彼等に“焼き肉串”が告げる。
「私がお金を出してあげるわ、私ね貯金が20000ゴールドあるの」
この女が持つと言う大金に、思わず目を見開く3人の男。
この様子を見て、きっとこの3人は自分に逆らわないと感じた“焼き肉串”は邪悪な笑みを浮かべて言った。
「私があなた達に冒険を教えてあげる。
食事も宿屋も装備も心配しなくていいわ。
だけどもボスは私よ、それでいいなら今日から早速寝る所の心配はしなくていい」
素寒貧にして、レベル1の男達はこの申し出を断る事は出来なかった。
そもそも食事は食べたし、今更食事の代金を返せるはずもない。
それにレベル18の冒険者相手に、戦いを挑んでも勝てない。
結局男達は、彼女をボスにしてパーティを結成する事に同意した。
パーティ名はラ★ニーズと言う。
見ていただいてありがとうございます。
もしよろしければでございますが……
つまらなかった、面白かった等ございましたら。
画面下に在る星をつまらなかったら★一つ、面白かったら★5ついただけないでしょうか?
そしてご感想の方を戴けたらなおのことありがたく思います。よろしくお願いいたします。




