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異世界転生して一番多かったセリフは、どうすんの!? この状況!? でした。  作者: 志島井 水馬
賢者様の正体が最悪というクソデスティニィ
7/100

その1

『カナデ? 今、私達の目の前にいる子はノワ。私と同じ様に国王陛下にお仕えする直属の召喚術士よ。ノワに言って賢者様の所へ連れて行ってもらって』



 頭の中にカカの声が直接聞こえてきました。アニメや映画のワンシーンを脳内再生したみたいな感覚です。声は聞こえないけど声の特徴は脳内でしっかり再現できている。そんな感じ。これが一つ体の中でふたつの人格が会話する感覚なのかー。と思いました。



『わかった。カカは? いろいろアドバイスしてくれるんでしょ?』



『自分の体に復活できたのは確かだけど、何だろう? すごく負担が大きかったのかな? とても眠くなって意識が保てない感じ。ちょっと眠るね。何かあったら全部ノワに尋ねて。ノワはちゃんと応えてくれるから』



 そんな声が頭の中に聞こえてきたきり、カカは黙ってしまいました。それからわたしの感覚でも一つの荒らぶっていた感情がスっと落ち着いたみたいな感じがしました。カカが眠った状態になったんだと思いました。



 カカはわたしに“なにかあったら”と言いました。わたしは自分の周囲を見回しました。



 多分、宗教施設。3人掛けの椅子が縦に15個くらい、左右で2セットづつ。ざっくり180人くらい収容できる施設の入口方向一面が爆発で吹き飛ばされて外から丸見え状態です。



 大人がぎっちり収容されていたから、たぶん180人くらい。全員、死んだ人間が生き返ったり、化物に襲われたり、自分たちのいる建物が内側から吹き飛ばされたりとか、そういう目に遭っています。



 そして犯人の子供が2人、自分達の目の前にいます。



 この状況がわたしにとって“なにかあったら”に該当しなかったとしたら。この後の人生は何が起きても無問題扱いになるわ。え? どうなるの? わたし?



 親を呼んで来いと言われてもこの世界に来てないし。弁償しろと言われてもお金持ってない。け…… 警察? 転生1日目というか転生開始5分で犯罪者!? それに大人に怒鳴られる? わたしは怒鳴られるのが大嫌いです。というか、怖いです。わたしどうしたらいいの?



「ノ…… ノワ……さん? わたし、どうしたらいいの?」



 自分より体も小さくて年下だけれど、頼れるのは目の前にいる女の子ひとりだけです。うう。心細い。ノワさん、不思議そうな顔をしてわたしを見上げた後にわたしに背中を向けました。背筋をのばして大きく息を吸い込むのが見えました。



「聞け!! 皆の祈りが通じ、八千火焔の精霊使い!! 軍神カカ様は皆の目前で復活を達成された!! 皆の祈りのお陰、かくあれと願われた国王陛下のお力のお陰だ!! 喝采せよ!! カカ様はここに復活されたのだ!!」



 ものすごく堂々とした、よく通る大きな声でノワさんがそう言いました。いや、そこ威張るところじゃないでしょ? この建物の弁償どうするの!?



 建物の中にいた大人の中から拍手が沸き起こりました。一瞬で大歓声と大きな足踏みの音と拍手で建物全体が勝鬨の声みたいなものに包まれました。え?



 誰も怒っていない!! これは最大の収穫です!! ノワさん、すげえっ!!



 ノワさんがわたしの方を振り返りました。少し不思議そうな顔をしてから首から幾つも下げている首飾りの一つをつまんで、何か呪文を唱えました。



「こ…… こんにちは…… カ……ナデ? さん? ノワです。どうぞ…… よろしくお願いします」



 声、小さい。たった今、大人の人に向かって堂々とした宣言したのと同じ人と思えない声の小ささです。聞き取っても理解するのに一瞬の時間が必要になるくらい、聞き取りづらい話し方です。



「さ…… さっきは間違ってごめんなさい…… 私は…… 人の魂の形が人の姿に重なって視えるから…… 知らない人がカカの体に入ってて…… 驚いて……」



「初めまして!! わたしの事はカナデって呼んでください。まだ、何も分からないんです!! わたしはこれからどうしたらいいんですか?」



 わたしが質問しました。ゆっくりと大きめの声で話をしようと思ったのはノワさんが何故かわたしに怯えている様な雰囲気があったからです。怖くないよ? っていうか、怯えたいのはわたしだよ!! と思いましたが、とりあえず優しい気持ちを強く持とうと思いました。



 ノワさんが少し首をすくめて下を向いて答えてくれました。なに? なぜわたしを怖がるの?



「カナデ…… さんを賢者様のところへ…… ご案内します。ここは…… 早く出た方がいいです。わたしがいると…… みんなが迷惑するから」



「そうなの?」



 わたしは大穴ぶち開けられた建物の正面を内側から見て思いました。



 ……そりゃ、そうだよなあ。 



 でもわたしにも原因が…… いやいや。無いわ。わたしに原因あったとしても、それはわたしの落ち度じゃない。この建物の被害とわたしは関係ない!!



 でも目の前の小さな女の子一人に全部を負わせるのは非道だとも感じました。とりあえず、カカが目を覚ましたら相談してみよう。

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