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その5

 草原で立ち話をしていたはずなのに体が横になっている様な感じを覚えたので周りを見回したらら天井が見えました。つまり室内。わたしは転生に成功したようです。



 どんなに思い出そうとしても最終的に転生しますとカカさんに宣言した記憶がありません。カカさんは交渉成立とか言っていたけれど!! わたしがいつイエスと答えた!? 展開早いというか、雑!! 



 わたしは花が敷き詰められた箱の中で横になっていました。箱の外から何かの楽器を使った音楽とゆっくりしたテンポの合唱みたいな歌声が聞こえています。なぜか、泣き声も聞こえてきます。天井が見えるので箱のフタは開いた状態です。とりあえず起き上がりました。



 わたしの周りで泣いていた人たちがもっと大声で泣き叫びながら、わたしから逃げ始めました。泣くという行動は同じでもこれはさっきと意味が違う泣き方だというのは察しがつきます。



 ぶっつけ本番で転生して最初に気が付いたことがありました。 ……わたしにこの話をもちかけた本人、ホンモノのカカさんがいません。箱の中にはわたしひとりです。上半身を起こしたら自分の体が見えました。



 とっても細くて長い足をしているのが自分でもわかります。痩せてます。言いたくないけど、これはわたしの体じゃない。もっと上等な感じです。カカさんの体で転生したんだと分かりました。



 でもカカさんの世界に転生してカカさんがいないというのはシャレにならない話です!! ぶっつけにもホドがあります!! わたしはこの世界のことを何もしらないんですが!? 



 どうすんの!? この状況!?



 わたしは一番最初に一番上手にできることを必死にかんがえました。持ち時間は一瞬。周囲の人は泣き叫びながらわたしから遠ざかり続けています。このチャンスを逃したらわたしは孤立します。



 そのへんの呼吸は転校初日体験で経験済みです。わたしは周りを見回しました。大丈夫。大人の人もたくさんいます。大人を味方につけるのに一番効果的なのは困っている自分をアピールして大人の善意につけこむ事です!!



「……オモイダセナイ。ココはドコ? ワタシは??」



 まわりの人たちが戻ってきました。異世界転生、ちょろい。と思いました。



 思った瞬間に部屋の中にスゴい音が響きました。音の方を見るとドアが力で吹き飛ばされていたのが見えました。臭い。すごい臭い匂いが風にのってやってきました。



 室内と言ったけれどすごく広いことにも気が付きました。入口が遠くにあって…… 椅子がたくさんあって……。 部屋の一番奥の壁際でわたしは清潔な服を着ていて……。 わかった。今、わたしのお葬式の最中だったんだ。



 そら、逃げるわな。みんな。



 扉をぶち破って入ってきたのは大きな化物でした。大きさはカバかサイくらい。動物園でみた記憶比です。



 デカいわ。なに? って思いました。外見は「ねーわ、これ」の一言です!! 臭いの原因もこいつでした!! こいつ。腐りハゲゴリラにしか見えない。ハゲ頭の耳のあたりから肩があってマッチョな長い腕があって、足が短くて腰が曲がっている。あと、全体に死体っぽい。つまり、腐りハゲゴリラです。



 3人座りの木のベンチを腐り(略)が薙ぎ払うとベンチが粉々になりました。腐り(略)が意味わかんない叫びを上げました。



 壁が震える音量です。うるさい。



 生き返ったわたしを見て逃げだした人達が腐り(略)の姿を見てわたしの方に逃げ帰ってきます。わたしに、何か期待してる顔です。困るわ。



 この状況はつまり、転生は成功したけれど人生のやり直しは失敗しそうってことです!! わたしの寿命、ぼったくられた!! と思いました。草原で好きな歌でも歌っていたほうがまだ平和だった。と後悔しました。


 

『心配しないで、カナデ!!』



 頭の中でカカの声が聞こえました。あ、ひとつ体の中で同居する話だったっけ。それじゃあ周りを見回しても見つからないわけだよね。考えたら初対面の時から呼び捨てにされていたのでわたしもカカを呼び捨てで呼ぶことにしました。



『どうにかしてよ!! カカ!!』



 わたしは白い花で埋め尽くされた箱の中から立ち上がりました。わたしの意志ではなかったです。声も出ました。

 

 


「私の爪は新月より数えて2日目を刻む爪。刮目せよ」


「私の高指は天部の衆善奉行を誓う指。傾聴せよ」


「私の掌は自浄其意の教えを宿す。屈して首を差し出せ」


「私の言葉は絶対の命令。成し遂げよ。ウクスマ!! 不浄を許さぬ力を示せ!!」



 言いながら分かりました。あ、これはこの体をつかってカカが言っている。



 わたし本人の爪は三日月が健康そうと親に言われるくらいしか特徴ないしナナシユビとかタカユビが指の何を説明してるのかも知りません。でもこれは… 便利なことだ! ピンチの時にはカカが魔法を使ってくれる!!



 わたし(というかカカ)は腐り(略)に向かって右手を突き出して、こう言いました。



「火矢を放て、ウクスマ!!」



 わたしの目の前1メートルくらいの所で空中が燃え始めました。焚火みたいな感じではなくてアホ大きいヘビ花火が燃えくるいながら拡がる感じです。トンネルを掘る円盤ドリルくらいの大きさに広がりました。炎の円盤の上が天井に届いています!! デカいって!!



 ヤバい勢いで燃えまくる円盤ドリルがトンネルを掘る様に腐り(略)に突進していきました。腐り(略)、直撃。 炭っぽくなったのが一瞬見えて砕けて消えました。



「これは…… 矢じゃない。 矢ってこうじゃない!!」



 炎の円盤は腐り(略)を粉砕した後も順調に前進を続けて建物の入口も粉砕して外へと直進していきました。



 これはピンチだ!! わたしはコレの止め方を知らない!!



 おかあさん助けて!!

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