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その4

 異世界転生っていうのは輪廻の1ジャンルとしてはもうメジャーです。そんなコトにビビるわたしじゃないです。でも魔王軍と戦うってなに? 転生しても痛い思いしながら早死にする結末しか見えてこない。



 ここで死んでるのとほとんど変わらないというか、状況むしろ悪化じゃん!



「えっ…… と魔王軍てなに? カカさんと一緒に戦うって? なんで子供が戦うの?」



 カカさんが手袋をはずしました。まず、わたしの質問に答えろよと思いました。



 カカさんの手には変な模様がたくさん描かれていました。タトゥー? 爪もネイルアートじゃない何かもっと、マガマガしいものが描かれていました。 伸びてきたらどうするんだろう? その爪?



「私は自分の体に精霊との契約を刻み付けた召喚術士。見ていなさい」



 そう言ってカカさんは色々描いてある手を上に伸ばしました。こっちが謙虚な態度で質問したら、とたんに上からの命令口調です。こいつ、ナチュラルボーン長女。しかも物心つくまでは一人っ子だった系長女だと思いました。わたしの姉そっくりです。



 カカさんが大きな声を出しました。これで何も起きなかったり気分的に違いがどうこう言い始めたら、やっぱりこの子は強いお薬必要系な子なんだと思います。



「私の爪は新月より数えて2日目を刻む爪。刮目せよ」


「私の名無し指は魔界の公爵との契約を証だてる指。傾聴せよ」


「私の掌は朝日差す温もりを宿す。屈して首を差し出せ」


「私の言葉は絶対の命令。成し遂げよ。鏡の精霊・ジャバウォック! カナデの世界を鏡に映し出せ」



 カカさんの真横に、光る円形の魔法陣が浮かび上がってきました。



 …… ガチだ!! やっべ、この子ガチの力を持ってる子だった!! ヤバい方じゃなくてヤバい方のガチだった!!



 魔法陣から黒曜石で作ったような綺麗な全身鎧を着た背の高い男の人が現れました。うっわ強そう!!



「ジャバウォック。カナデのお母さんの様子を鏡に映して」



 ジャバウォックと呼ばれた男の人が頷きました。そして何もない空間に大きな鏡が現れて鏡の向こう側に違う世界が映りました。



 わたしが事故にあったという連絡を受けた母の姿が映っていました。 ……その様子を詳しくは説明できません。 わたしは悪い子だったと心から思いました。 自分の娘が死んだなんて報せを母親に届けるのはとんでもない親不孝だと知りました。



 わたしは!! 親不孝のままで死ぬわけにはいかない!! とにかく生き返らなきゃ!!



「…… カカさん! わたしは自分の世界に帰りたいです!! 賢者様…… っていう人のところへ連れて行ってください!!」



「私と一緒に魔王軍と戦うのね?」



「あ、それは別の話。ムリ。わたし、戦うとかしたことないんだけど? わたしに何を求めているの?」



 わたしの質問もカカさんは想定済みだったみたいです。 うんうん、て頷いてから言いました。



「カナデは本当ならあと85年生きるはずだったんだよ。体は壊れてもカナデの魂は85年分の寿命をまだ持っているの」



 うっそ、そんなに生きたくない。死ぬころババァになってるじゃん!!



「でもカナデは事故のショックで寿命を残したまま魂が死後の世界に来てしまった。私は魔法の使い過ぎで体は無傷でも寿命がなくなってしまったの。私にカナデの寿命の半分を頂戴。カナデには私の世界で私の体に転生させてあげる。私の体を自由に使わせてあげる。私にも使命があるから1日の半分の時間だけだけど」



 カカさんの話。ごめん、まったく理解できません。自由っていっても多分、兵隊さんに囲まれて目の前で戦争やってる環境です。そんな環境での半日の自由なんて、いらない。



 でも一度は生き返らないと、わたしを知っているという賢者様には会えないし当然モトの世界にも帰れない。



 異世界転生ってもっとこう? 金は余ってるけど使い道がねえ。みたいなチートなお土産付きの物語なんじゃないんですか?



 キビダンゴなし、動物の言葉わからない状態でスタートの桃太郎と同じくらい途方にくれる設定じゃないですか? わたし??



 わたしは突然、運命っていうものの本質を理解しました。運命というのは選択肢がねえ。という事です。なんというクソデスティニー。



 わたしが思い切り考え込んでいるのを無視して、カカさんが首から下げている首飾りのひとつを手に取って自分の口元に近づけました。



「ノワ!! カナデを見つけた。交渉も成立した。わたしとカナデの魂をわたしの体に戻して!!」



 ノワって誰!? って思ったらカカさんが口元に持っていった首飾りがものすごく光り始めました。あ、それ通信機みたいなモノ?

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