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その3

「死の世界の入口で…… ひとりで歌を歌っている子供…… ほんとにいた!!」



 美少女がわたしを見てものすごく驚いた顔と口調でそう言いました。日本語です!! 顔は日本人じゃないのに、違和感すげえっ!! 美少女、わたしの顔をじっと見ました。



「……枯れ木色の肌をしている。顔は…… 不具合の詰め合わせ福袋みたいに面白い。人の言葉を理解できるのかしら? 歌は歌っていたけれど……」



 枯れ木色の肌って? あと顔のこと何か言った? この人ほどじゃなくても!! わたしも顔は全体的にみたら普通レベルだと思うんですけど!? こいつ失礼だわ!!



「あなた日本語しゃべれるのに日本人に会ったことないの? わたし、普通なんだけど!!」



 わたしがそう言ったら美少女がめちゃくちゃ驚いた顔をしました。



「言葉が通じる!! ああ!! 賢者様!!」



「わたし!?」



「あなたのことじゃないよ!! ちょっと黙ってて!! 私は驚いているんだから!! 賢者様っ!! 私は賢者様のおっしゃった子供を見つけました!! でもあんまりです!! 本当にコレを連れて帰ってこいとおっしゃられるのですか!?」



 話がまったく読めません。なに? こいつ? でもわたしに用があるのは何となくわかりました。もちろん、わたしの方はこの人に何の用もありません。逃げようと思いました。隠れる場所もない地平線が見えるレベルの草原だけど。



 美少女が両手で自分の顔を覆い隠して勝手に嘆いたあとに、やっぱり勝手に立ち直って自己紹介をしてきました。



「私はコンダルセ王国国王陛下直属の召喚術士、カカ。私のいる世界では八千火焔の精霊使いとも軍神とも呼ばれている召喚術士よ。貴方は歌が上手なカナデね?」



 なに? そのざっくりとしたわたしの評価? なんでわたしの名前を知ってるの? それにナントカ王国の召喚術士? 軍神?



 強いお薬が手放せない系の生活を送る子なんだろうなと思いました。まだ若いのに気の毒に。まあ死んだ後の世界で出会ったから、この子も死んでいるんだろうし。若いのと気の毒は関係ないか。と思いました。 あと、なぜわたしの名前を知ってるの!?



「わたしの名前をどうしてあなたが知っているの!? あなた死神か何か? ……違うよね。わたしと同じくらいの年に見えるよ? わたしと同じ年くらいの神様なんて聞いたことない」



 14歳のわたしには神様という役目は務まらない。謙虚な自己評価です。わたしに神が務まらないとき、わたしと同い年の子に神は務まるか? 連立方程式の応用です。数学をまじめに勉強しておいて良かったと思いました。論理的だぜ、わたし。 



 きちんとした自己紹介にはなりませんでしたが、わたしの名前はカナデ。というのを確かめることが出来たからカカさんという美少女は満足したみたいです。



「死神ではないわ。分かりやすく言うと異世界から来たの」



 おおう…… どっから来ても合流したのが死後の世界ならわたしに関係薄い話だな。と思いました。わたしの名前をどうして知っているのかという方が重要です!!



「どうしてわたしの名前を知っているの?」



「ここは死の世界の入口で、私も自分の寿命を使い果たしてここに来たの。でも死ぬ前に賢者様が教えてくれたの。死の世界の入口で歌の上手な子が一人で歌を歌っているはずだって。名前をカナデと名乗ったら伝えて欲しい事があるって」



「賢者様って誰!?」



 心当たりなんてないです!! 知らない人がわたしを知っているというのはSNS世代に生きる受信専門職としては恐怖です!! 職業じゃないけど!!



「賢者様を知らないの? 賢者様はカナデのことを知っていたよ? 伝言があるの。賢者様はカナデが生きていた世界への帰り方を知っている。生き返らせてあげたいから自分のところに来て欲しいって」



 そんな美味しい話があるわけない!! わたし別に特別な存在とかじゃないよ?



 え? もしかしてその認識が間違っていて、わたしは凄く特別な存在だったりした? 異世界でも有名なくらいに? しかも歌が上手ってことで? だってカカさんが自分でそう言ったし。



 心当たりを考えてみました。ないけど事実は受け入れよう。わたしはきっと、特別なんだ。



「ありがとう。帰り方だけど今ここで教えて?」



 カカさんがバカを見る目でわたしを見ました。 それはもう、初対面でも通じてしまうくらいハッキリした“こいつバカなの?” という顔でした。



「賢者様から、カナデをつれてきて欲しいって言われただけだよ。私が帰り方なんて知る訳ない。それにタダじゃないよ」



 金か!! 世知辛いな!! 14歳のわたしから幾らとるつもりだ!? と思いました。もちろん、お金なんて持ってないです。 タダじゃないと言われても渡すものなんか何もありません。わたしは今、手ぶらです!!



 カカさんはわたしの顔をみてわたしの考えが分かったみたいでした。



「ついてこなかったら、カナデはここで死ぬわけだけど? 賢者様はカナデを家族のところへ帰したい、特にお母さんのところへ無事に帰したいって言っていたよ?」



 なぜ、母の事まで知っているの!?



 あと、ここで死ぬっていうのはもう死んでるわたしに対して切り札になるの? と思いました。



 なるわ。 家族の心がバラバラになったのが寂しいから死にたいとは思っていたけれど14歳でさっそく死のうと思ってたわけじゃないし、わたしがこのまま‟死ぬよ”と答えたら母がすごく悲しむと思いました。



 でも怪しすぎる話です。わたしはビビる心をおさえてカカさんに質問しました。



「…… タダじゃないって、わたしはどうすればいいの?」



 カカさんが嬉しそうな笑顔をみせました。ちょっと、好きになりそう。そんな綺麗な笑顔でした。美少女まる得。畜生、わたしもこのレベルで美人に生まれたら人生ちがっていたかな。と思いました。



「カナデには私と一緒に私の世界に転生してもらう。そこで私と一緒に人類を滅ぼそうとしている魔王軍と戦い魔王を倒す手伝いをしてほしいの。魔王を倒せたらカナデは自分の世界に生きて帰れるって賢者様は言っていたわ。詳しい話は賢者様から聞かなければ分からない」



 死んでいた方がましだと思いました。わたしの人生経験に魔王も倒すも人類滅亡も一度も絡んできたことないです。 やったことないコトを成功させないと生き返れない? わたし一人が生き返る条件が人類を滅亡から救う? なに? そのクソデスティニー!?

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