その1
最近、わたしの家では家族の心がバラバラになっている。そう感じています。
2年前、わたしが小6だった頃はそんなことなかったんです。5つ年上の姉は晩御飯のときに高校の話をいろいろ話題に出していたし、母はいつもわたしの好きなおかずをたくさん用意してくれていました。
父は自分の書斎から小学生だったわたしでも読める神話の本を選んできてはわたしに貸してくれたりしていました。その本の感想を父と話し合うのが好きでした。
今は心がバラバラです。姉は彼氏が出来た瞬間からわたしより彼氏との通話を優先するようになったし、母は野菜たっぷり和食のおかずを晩御飯に出すようになりました。父の健康を考えて、とか言っていますが育ちざかりのわたしのことは無視ですか!? じゃなくて無視ですよ!!
そして父はわたしが中学生になった途端に、家族全員で遊園地とかの1日旅行に行くのを自粛しはじめました。いや、最初にウザがったのはわたしだけど。親と遊園地行って喜ぶのは小学生までじゃん。
でも実際にどこにも行かなくなるって、ないでしょう!? しかも父と母は最近ふたりで高い喫茶店とかに行くようになりました!! デートだそうですがキモっ!! 親がデートとか不純すぎです!!
ああもう。わたしの家族はお終いだと思いました。家の中に家族の絆というものが見えない。わたしは孤独だと最近ヒシヒシと感じています。
特に父との心の距離感がスゴい。中学生になってからハタと気が付いた事があります。
わたしの父は3か国語が寝言で出るレベルで堪能です。ゆっくり考えれば6か国語まで仕事で使えるレベル、だそうです。
海外から冷凍されたお魚を輸入する会社に勤めています。ないわー。と思う。それだけの語学力があったら政治とかファッションとかの分野で海外と取引すればいいじゃん。なじぇに冷凍のお魚? と思います。
あと重度のアニヲタなのもキモい。アニヲタがキモいんじゃなくて、50代のおっさんがまだハマっているという事実がキモい。日本のアニメ作品をe-bay経由で買って外国語ふきかえと英語字幕で見て納得しているのもキモい。
日本の声優さんの偉業に土下座して詫びろと思います。父に言わせると、その国の言葉の旬の言い回しとかを手っ取り早く耳にできるから仕事にも役立つそうですが。知るか。と思います。
ああもう。なんか、こんな寒々しい家庭でなかったら。わたしはもう少し幸せな人生に挑戦できるのに。と思ったら、ひとつの解決策として手っ取り早く死んでみたりして。というアイデアが浮かびました。
そう思っていたらその日の通学中に車にひかれて死にました。
自分の願望実現力が怖いと思いました。
死んでからするものではありませんが、わたしの名前は回向奏。えこう、かなで。と言います。享年14歳。とっても短い人生でした。