おっさん、不惑が見えても迷うもんは迷う。
不惑も見えてるっていうのに、俺も本上さんも迷いまくりだあ。
水の問題は森の中であれば蔦がどこにでも生えているので問題ないと思うが、改めて二人でどちらに向かうかで迷っている。道がありそうなので、その道を進めばいいと簡単に考えていたのだが、
「街とか村まで三日間とかだったら、結局途中で死ぬよ。餓え死に。餓死よ」
と本上さんがもっともな事を言い、じゃあ山を登って人里らしきものを探そうかとなったのだが、
「登るの面倒。うごきたくない〜」
など先程格好いいなと思った自分を殴りたい程、本上さんが面倒な事を言い出しているのだ。どうせいっちゅうねん。
「かと言って、こんな死体まみれの場所に留まるのも嫌でしょうが」
「だってここに来たのも死体が増えたのも私のせいじゃないし」
「俺だって来たくて来てるわけじゃねえし放っておいたらアンタが死体だったんでしょうが」
結局山まで登る事にした。どちらにせよ、人里を見つけずにただ移動しても危険だから、まずは周辺の地理を把握する他ないのだ。そして移動したらしたで面倒ごとは増える。
「ブモモモモオオオオオ」
なんかね、出るんですよ森の中って。今回はミノタウロスっぽい牛人間です。
「うらあ!」
面倒だなあ、と思うまもなく、先程鉈と交換して鉄棒を持つことになった本上さんが、牛人間に駆け寄るなりその鉄棒を勢いよく振った。靴は大丈夫っぽいな。
斧を構えた牛人間の頭部が吹き飛ばされ、殴られてグシャグシャの頭だけが木に激突して落っこちて転がるのと同時に、頭を吹き飛ばされて血の噴水をあげていた、硬直する胴体がどうっと地面に倒れる。
グロいが慣れって怖い。だって出発してから二時間くらいでもう四回目なのよ。豚と牛とさっき猿もいたか。
「これで私が三件、佐藤くんが四件かあ、殺人カップル爆誕、みたいな」
「こええし、カップルらしさゼロだし、そもそもカップルじゃねっす」
「それな」
そしてこれが大量殺人なのか連続殺人なのかで盛り上がる二人。んー現実逃避。この流れ森抜けるまで続くんだろうか。前科何犯つくんだろう。