おっさん、ようやく故郷に帰る。
俺は故郷に帰る、と聞いてすぐにカルメンとか答えるおっさんではない。流石の俺もそこまでおっさんじゃあない。
手を振る幼女、あくまで俺から見てだが、に手を振りつつ、あれに手を振って送られる俺たち何なの?という疑問や不安などはすべて魔王城に置いとくことにし、俺と本上さんはボロボロのママチャリに乗って、魔王城を出る。背広のクリーニングや、本上さんのタイトスカートやらヒールやらの回収もすべて魔王が
「あらあらまあまあ」
て言いながら一晩でやってくれたので、ジョバンニ扱いすればいいのか、見合い強制ババア扱いすればいいのか悩む。本上さんはどっちでも良いそうなので、普通に放置だな。つっこんだら負け系だ。
そのうち、周囲の景色がぼやけ始める。本上さんと俺だけがくっきり見え、周りがぼんやりと薄くなっていく中、見慣れた都会の景色が被るように浮かび始めた。おお、すげえな異世界チャリ。
「よかったの佐藤くん、あっちで魔王様と一緒にいてもよかったのに」
本上さんが笑いながら聞いてくるが、
「上司が元の世界に戻って仕事するって言ってんのに、部下が仕事放棄できないでしょ」
俺は真顔でそう答えた。けして、ネットが無い遊びが無い、城に幼女っぽい恋愛脳邪神系魔王と二人きりの状況に不安を感じたわけではない。いやそこも不安ありまくりだけど。
考えたがやっぱり、チームや本上さんに迷惑かけらんないと伝える。
あらそう、と本上さんは少し落胆した顔をした。なんでだよ。上司なら喜べよ。
「俺までチームから抜けたら、本上さん終電逃し率百パー超えますよ」
「別に今までだって終電間に合わないわけじゃないけど」
「嘘だ。深夜何回呼び出されたと思ってんの。家が近所だからって」
俺は顔を顰める。もちろん、そうじゃない理由で呼び出したりしている節もあるのだが、俺はそういう罠には引っかからない男。だから年齢イコール彼女無しなんだねって、何回も酒の席で、本上さん含めて何人にも言われていてもだ。おっさんは頭は固くて結構。誰も困らないだろうが。
俺と本上さんはその後、黙ってチャリを漕いだ。二人はいつの間にか会社のすぐ近く、つまり俺の家のすぐそばの大通りにたどり着いていた。しかも無くなったと思っていた鞄がチャリの前の籠に入っているというおまけ付きで。




