後編 その31 破魔
『流砂』
「うお! すげぇ」
「お、やべぇ!」
「土魔法が・・・」
ハルキが唱えた魔法によって、ユーシとマナトとジョーが砂に飲み込まれていく。
「凄いね・・・」
腕組みをしながら、横で見物しているカズがつぶやく。
ユーシとマナトとジョーの下半身が埋まってしまうまで、ほんの数秒。
ハルキは魔法の行使をやめる。
「へぇ、きれいに埋まるじゃん!」
「そうそう、でも、土魔法が使えると、一応、脱出ができる・・・ない?・・・痛たた」
ユーシとジョーはそう言いながら、土魔法を使うが、がっちりと砂に食い込んでいる。
「よいしょっと」
マナトが最初に脱出する。
「え、早!」
「どうやって!?」
「足の裏の砂だけを持ち上げる感じで・・・」
マナトが説明するとユーシが脱出に成功する。
「なぁ、ハルキ、僕にもやってみてくれ」
「いいよ、もうやっていい?」
「あぁ、やってくれ」
『流砂』
ハルキがカズの希望に応えて、魔法を使用する。
流砂の魔法は、対象の足元の砂の下方に、大量の空気を送り込むという単純な仕組み。
送り込まれた大量の空気は、出口を求めて上へと、大量の砂を巻き上げながら吹き上がる。
つまり空気で足元の砂を崩し、その穴に自重によって、対象を落とし込むというもの。
この魔法の面白いところは、魔法を止めると、巻き上げられた砂がすぐに落ちてきて、対象を埋めてしまうことだ。
地震の時に発生する液状化現象を、空気で強制的に発生させると考えればわかりやすいだろうか。
「お、どうやった?」
「さすがカズ・・・フェザーフォールだな?」
マナトがすぐに分析する。
カズは、自重を軽くすることで、砂に飲み込まれずにいたが、ふらふらと安定しないようだ。
ハルキが流砂の魔法をやめると、すくっと立つカズ。
「うーん、埋められるのは防いだけど、不安定だな」
「それでも、すげぇぜ!」
ユーシが素直に誉める。
さきほど、土魔法を使って防ごうとしたものの、埋まってしまったマナトはちょっと悔しそうだ。
砂場ステージの端。
すでに夕方、もうすぐ、夕食の時間。
太陽のない、この世界に光を供給しているはるか上方の円形の何かは、生意気にも今日は夕焼けの色に染まっている。
ハルキはクリスマスツリーを思い出す。
ハルキの家のクリスマスツリーは、根元に光源があり、そこから光ファイバーで枝に光を伝え、キラキラと光っていた。
もしかしたら、この世界はどこかで元の世界とつながっていて、あの上部の光は、元の世界の夕焼けを、そのまま映し出しているのではないのかとも思ってしまう。
「ハルキ?」
カズが空を見つめているハルキに気づいて声をかける。
「あ、え・・・えっと、でも、この魔法、砂地じゃないと、全然使えないし」
ハルキが空に見とれていたことを隠すように、魔法の弱点を暴露する。
土の下に空気を送り込んでも、柔らかいところを見つけて、そこから吹き出すだけ。
砂、それも乾いた砂地でしか、うまく発動しない。
「あ・・・そうか・・・うーん・・・でも、逆に砂地じゃ面白いよね」
マナトが納得するが、ハルキとは意見が異なるようだ。
「砂地じゃ、水が少なくて、泥沼の魔法が使えないから、その分、覚えておいて損はないな」
カズが少し考えて、マナトに賛同する。
「いいからさ、俺にも教えてくれよ!」
ユーシは楽しそうだ。
ドゥォガァーン!
「うわ!」
「え?」
「は?」
突然、大きな音がする。
音のする方向を見る4人。
そこには、今まで砂の中で動けずに放置されていたジョーが、力任せにこぶしで砂地を殴りつけ、その勢いで脱出していた。
「へっ! やってやったぜ! はぁ、はぁ・・・」
「大丈夫かよ?」
ユーシがびっくりして駆け寄る。
「大丈夫・・・」
そう、いいつつ、へたり込むジョー。
「ま、これも脱出方法の一つか」
「そうだな」
マナトとカズは冷静に分析する。
「ジョー、大丈夫じゃ、ねぇだろ」
「大丈夫だよ・・・おっと」
「いいから、砂の鎧を外せよ」
「えっと・・・やべ、焦って思いっきり魔力込めたから・・・はずれねぇ」
ジョーは思いっきり地面を対して、力を込めて殴っても大丈夫なように、自分の体を鎧で覆っていた。
それもいつもよりも分厚い、丈夫そうな鎧。
確かに砂からは脱出はできたかもしれないが、次は自分の鎧から脱出できない。
ユーシが助けようとするが、ジョーは動けない。
いや正確には消耗しているジョーは砂の鎧の重みで動きにくい。
「ちょっと、まってくれ、少ししたら、魔力がきれる・・・はず?」
「おい、もうすぐ晩飯だぞ、食いっぱぐれるぞ」
「そ、それは困る」
ジョーの窮状を見かねた、マナトとカズがジョーの鎧に魔力を放つ。
魔法の鎧はその中の込められた魔方陣によって、魔力を供給されながら、その形を維持している。
すなわち魔方陣が破壊されれば、鎧は崩れる。
魔方陣を崩すには、魔力をぶつけて破壊するのは、常道。
「え?」
「あ・・・」
二人は魔力をかなり込めたつもりだが、ジョーの砂の鎧は崩れない。
ジョーの魔方陣が強固に作られているということだ。
「ジョー、だめだ」
「自分じゃ無理? 俺、結構、魔力込めたけど無理だぞ。壊せない」
マナトとカズがあきらめる。
「えぇ、晩飯・・・腹へった、立てる・・・」
「大丈夫かよ」
砂の鎧を着たままよいしょと立ち上がるジョー。
心配するユーシ。
「大丈夫、重いだけ、歩ける・・・」
ジョーはふらふらと歩きだす。
そこに無言で近寄るハルキ。
「「「「?」」」」
ハルキは左手をジョーに向ける。
すると、ジョーの砂の鎧はあっさり、砂に返る。
「おぉ、ハルキ、心の友よ!」
ジョーが感激してハルキに抱きつく。
「よかった・・・じゃ、メシ・・・」
「「「待てっ!」」」
カズとマナトとユーシがハルキを呼び止める。
「「?」」
ジョーとハルキはなぜ止められたはわからない顔をしている。
その顔を見て、カズが眉をしかめながらハルキに問う。
「今、何をした?」
怪訝な顔をするハルキ。
「何をって・・・魔力をぶつけたけど」
「いや、そんなすごい魔力は感じなかったぞ!」
「え、いや、そうかな?」
「絶対、おかしいって!」
カズはハルキを問いただす。
そのカズとハルキを見て、何かが引っ掛かるマナト。
そういえば、前にも、こんなことがなかったかなと思うが、すぐには思いだせない。
その横からユーシが嬉しそうに叫ぶ。
「今の魔法を壊す魔法じゃね?!」
「「「!」」」
ユーシの指摘に4人は顔を見合わせた。
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もう一緒に寝てくれない子供たちの寝物語として
かつて作ったお話を書いているだけですが、
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