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後編 その28 夜会

「いらっしゃーい!」


 上機嫌に微笑む姫。

 姫の右側には、フェニックス、オウル、スワン、そして空席。

 姫の左側には、ホーク、タイガー、ベア、そして空席。


「遅れてすみません」

「すみません」


 モエミとハルキは謝罪すると、誰にも言われずに空席に座る。

 顧みれば、この世界に来た時に、同じ動物園前のスペースで、14人と一緒に食事をした。

 今日は9人。

 当時と同じテーブルを使用する限り、空間が気になるのは仕方がない。

 テーブルの上に並ぶ料理。サラダの上にのせられたカリカリに焼いたベーコン。大根と一緒に和えられているのはゆでた豚肉。棒棒鶏。そしてビーフシチュー。肉の量が、若干、控えめなのも今なら、理由がよくわかる。

 それでも、1階の食堂で食べるときよりも、肉が多い。

 他愛のない話をしながら、食事をとる。

 食事をするスペースのうち、出入口となっている面と、奥の練習室を隔てる面の2面を除いて、檻になっている。

 その檻の中に種々の動物が飼われている。

 最初にここで食事をとったときに、姫から、決して触るなといわれているが、見るなとは言われておらず、それをいいことに、ハルキはしばしば、こっそり、動物を見に来ていた。

 運がよければ、ユニコーンやペガサスが見れるのだ。

 こんなすごいことはない。

 ハルキは、今も、動物たちに囲まれながら、ユニコーンやペガサスが出てこないかなと思いながら、檻を眺めている。

 一方で、目につく動物たちは、おとなしく、みんなの食事を見つめるのみ。

 動物園でみた動物とは明らかに違う。

 こちらを見つめ、何かを目で訴えでもしているのか。

 動物にみられながら、弾まない会話が進む。

 誰もいなくなった人間のことを言い出さない。

 暗黙のルールなのか。


「えっと、ここにいるメンバーが正真正銘の4階組ってことは、いいかな?」


 食事が落ち着いた頃、姫が話を始める。

 人がいなくなったのに上機嫌の姫。

 すくっと立ち上がると、にっこりと周りを見回し、話を続ける。


「えっと、それでね。本格的にこの世界から脱出する方法を、研究していきたいと思います!」


 なぜか片手をあげてポーズを決める姫。


「本格的にですか・・・」

「脱出かぁ」

「帰るの?」


 場が、ざわつく。


 パオーン。

 ガオー。

 バサバサ。

 チチッ。


 まるで姫の声が聞こえているかのように、周りの動物たちが騒ぎ出す。

 静かに姫が振り向くと、それに合わせて動物たちが静かになる。

 まるで姫とは意思疎通ができているかのように。


「現実的に考えて、脱出が可能とお考えですか?」


 少なくともモエミとハルキが、今まで見たこともないような、厳しい顔で、フェニックスが姫を追及する。


「姫の言葉は、この世界では、とても重いものです。期待だけさせて、後で、「ごめーん、やっぱり無理だった、てへぺろ」ということであれば、今まで不可能だったことを考えると、仕方のない部分があるにしろ、影響を考えますと、小さな子たちには、ちょっと酷な気がします」


 フェニックスが言うのはもっともなこと。

 返る方法が見つかっていないという事実から、いろいろな方法で気をそらす役割を担うのはフェニックスたち。

 日頃の苦労が水の泡になる。


「えっと、大丈夫だよ。ね、モエミちゃん!」


 突然の無茶ぶりに、心の中で慌てるモエミ。


「あ、いえ、がんばり・・・ます?」

「え~、どうして疑問形なのよ! とにかく、もっと積極的に脱出の方法を探っていくわよ!」

「積極的に・・・なるほど・・・そういうことなら・・・、では、今までよりも帰る方向での魔法の練習に切り替えるということですか?」

「うーん、えっと、そうだね! そうなるかな!」


 モエミにはよくわからないが、フェニックスは納得できたらしい。

 スワンは、オウルに、元の世界に戻っても、魔法が使えるのかな、などと話しかけるが、隣のオウルは、姫が話を始めてから、ずっと黙ったまま、モエミの顔を見ている。

 視線が怖い。

 何かやらかしたのだろうか・・・。


「ところで、姫、クロウとウルフの件だが・・・」


 とうとう、ホークが爆弾を投下する。


「えっと、帰ったんじゃないかな!」

「そう・・・ですか・・・」

「えっと、寂しい? ホークくん、寂しいんだ」

「え、いや、そういうわけではなく、最近、立て続けなので・・・」

「えっと、そうだよね、次々だよね・・・私も寂しいから、新しい動物を作りました!」


 そう言うと、姫は立ち上がり、後ろの檻の方へ。


「えっと、どこかな・・・あ、いた・・・ほら来てよ、あそこあそこ、あっちの木の下を見て!」


 みんなを呼び寄せると、奥で縮こまっている動物を指さす。


「えっと、だめだよね、オオカミのくせに、小さくなってちゃね」

「オオカミ・・・」


 タイガーが絶句する。


「あの、姫、大変、申し訳ないですが、ウルフがいなくなって、すぐにオオカミを作るなど、ちょっといかがかなと・・・」


 ホークが姫に、当たり障りのないように、言葉を選んで伝える。


「え、そっかなぁ、ダメなの? では・・・」


 バサバサと羽音がして、オオカミの横に、1羽の真っ黒い鳥が降りたつ。


「えっと、カラスもだめかな?」


 姫は美しく微笑んだ。


お読みいただきありがとうございます。

ブクマや評価をいただければ大変、嬉しいです。

子供に寝物語に作ったお話を書いているだけですが、

励みになります。

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