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後編 その22 逃避

吹雪の中を木の葉のように舞うハルキ。

もちろん、コントロールはきかない。

ただ動かないモエミを離さないように抱きしめていた。

ゴウゴウと唸る風。

肌を突き刺すような寒さ。

上下の間隔をも失う中、時間の感覚も喪失する。

短い時間だったか、途方もなく長い時間だったか、気が付くと、真っ暗闇の中、雪だまりの中で倒れていた。

とっさには、なぜここに倒れているのかを思い出せない。

雪が冷たい。

取りあえず起き上がろうとすると、暗い中、モエミが倒れているのを目にする。

モエミの姿を見たとたん、全てを思い出すハルキ。


「姉ちゃん!」


 駆け寄り、呼びかける。


「姉ちゃん・・・大丈夫?」

「ん・・・大丈夫・・・じゃないわね・・・うふふ、寒い。きつい。だるい・・・最悪」


 ハルキはモエミを起こし、体育座りさせようとする。


「あ・・・持ってきちゃった」


 モエミが片眼鏡をポケットから取り出すと、それをハルキに差し出す。


「ぽっけに入れとくと座りにくい」

「わかったよ。持っててあげるよ」


 片眼鏡を預かるハルキ。

 さっき姫が魔道具と言っていた。

 魔道具・・・魔道具!

 男の子的にはちょっと心惹かれる単語。

 明るいところでしっかり確認したいが、今はそれどころではない。


「ちょっと待ってて、周りを確認してくる」

「いやだ。一人は怖いよ、寂しいよ」

「ちょっとだけ、すぐそこまで」

「ウサギは寂しいとしんじゃうんだぞ!」


ハルキはモエミの意味不明な言葉には答えず、周囲を確認する。

 どうやら城から少し離れた草原と森の境目のあたりのようだ。

 城の方はまだ吹雪でつつまれており、青く輝く城が、雪の嵐の向こうに見えるという、幻想的というか、ファンタジーな光景。

 吹雪は城を中心に一定の範囲で吹き荒れており、余波はあるが、風はそんなに強くない。

 風向きの関係で、ここらあたりに雪がたまったのか。

 それとも、その境目が森と草原を形作っているのかわからないが、森に入ると、温度が上がるような気がする。

 姉のほうに駆け戻るハルキ。


「森の中のほうが安全だし、雪もない。ちょっと移動しよう」

「・・・夜の森とか怖い」

「そんなこと言ってる場合じゃないと思うけど」


 駄々をこねるモエミをなだめすかして、歩かせる。


「ハルキ、明かりつけてよ、私、魔力がない」

「明かりつけたら、普通に見つかるだろ」

「・・・そっか」

「・・・森に入るまで待って」


 雪の吹き溜まりを抜け、森に入る。

 寒さが緩和される。


「どこかで、火、起こそうか?」

「・・・寒いけど・・・火は悪手かな・・・逃げちゃったからね」

「あの場合、逃げるしかないと思うけど」

「・・・そうね・・・ごめん、座りたい」


 倒木を見つけ、腐ってないことを確認すると、モエミを座らせる。

 モエミは震えていた。


「大丈夫? 寒い?」

「・・・うん、寒い・・・もう死ぬ」


 ハルキも魔力がそんなに多く残っているわけではないが、とりあえず、モエミの風よけとなる小さな壁を作る。

 さっそくその壁によりかかるモエミ。


「ありがとう」


 素直にお礼を言うモエミ。

 素直すぎて怖い。その言動に、本当にモエミに限界がきていることを、ハルキは理解する。

 城からの角度を考える。

 木々もある。

 ハルキはモエミのすぐ横に、もう一枚壁を作る。

 壁は城側。


「ちょっと待ってて」


 ハルキは、小枝や枯れ葉を集める。


「壁をつくったから、多分、見えないと思う」


 少し暖を取らないとまずい気がする。

 そう言うと火をつけた。

 

「・・・あったかい・・・やっぱり生きる」

「燃えるものを探してくる」


 炎の光がが、可能な限り漏れないように、たき火のまわりの土を少し高くする。

 そして、小枝や枯れ葉を少し離れたところに探しに行くハルキ。

 人の手がほとんど入っていない林の中では、簡単に手に入れられるものばかりだ。

 戻ってくると、たき火のまわりの土壁をさらに高くして、シェルターを形成していく。


「ありがとう・・・結構、器用ね」

「・・・作るの、好きだから」


 素直にお礼を言われたことに少し照れつつ、少し落ち着くハルキ。


「横になれるようにしようか? それ、枯れ木だから、やれるかも」

「本当? お願い」


 ハルキはモエミが座る枯れ木の形状を変化させ、平らにしようとする。


「うわ、これ難しい・・・」


 土で簡易の壁を作るよりも、かなり多くの魔力を消費するが、なんとかギリギリ、モエミを横にすることができるようにする。


「やるわね・・・私に魔力が残ってたらよかったんだけどね・・・」

「受け渡しができれば、いいのにね」


 ようやく落ち着く2人。

 パチパチと何かが、たき火のなかではじける。

 夜の虫が微かにどこかで鳴いている。

 自宅の前の公園よりも少ない声。

 雪に濡れた服が乾くと、睡魔が襲ってくる。

 ハルキは睡魔と闘いながら、モエミの様子を確認する。

 モエミは寝息のようだ。

 安心したハルキは、自分も本当に寝てしまおうかと、体を土の上で横にしようとする。


「・・・」


 何かがすぐ近くで動いた気がした。


「・・・」


 動きを止め、聴力に集中する。


「・・・」


 やはり、何かが枯れ葉か、枯れ枝を踏みしめる音がする。

 それも、複数な気がする。

 せっかく寝たモエミを起こすわけにはいかない。

 少しでも安静にしておかないと、魔力も回復しないはず。

 ハルキはそっと、小さなシェルターから抜け出す。


 パチリ・・・パチリ。


 枯れ葉や小枝を踏みしめる音。

 何かがゆっくりと近寄ってくる音。

 それも3方から。


(オオカミとか・・・確か、いないよね?)


 ハルキは黒い何かと対峙した。


お読みいただきありがとうございます。

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