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後編 その18 泉門

「寒い、寒い、寒い、寒い」


 モエミがつぶやきながら進む。

 水着から普段着に着替えをしなければならず、加えて、女性であることを原因として、泉プールからの撤収が遅くなった女子たち。

 霧の林の中を小走りで抜けていく。


「わ、私、走るの苦手なのよね」


 スワンが泣き言を言う。


「・・・ちょっと・・・おいてか・・・ないで」

「ミコっち、がんばって!」


 モエミ、ハルナ、エリカは、運動部でもあり、小走り程度は何ともない。

 スワンもなんとかついてくる。

 しかし、ミコトは疲労の色が濃い。


「早くしないと、方向がわかんなくなるわ」

「うふふ、ミコト、着替えるのが遅いから」

「・・・そんなこと・・・言っても・・・こぼれるし・・・走ると・・・重いし・・・」

「Un? 今、ちょっと、自慢した?」

「・・・違う・・・はぁ」

「もう、喧嘩はいいから。道まで出ないと、迷うわよ」


 スワンがたしなめる。


「それに、今回は濃いわ。もっと暗くなるわよ。霧にあわせて姫が空気に入れ替えをするから、その準備も必要なの。早く帰らないとがっつり怒られるわよ」

「そんな・・・いっても・・・もう・・・ちょっと」

「プールがみんなにばれるわよ」

「!? がんば・・・ります」


 霧がどんどん濃くなってくる。

 それにともない、例えようがない、不安感が掻き立てられる。

 歩いても大丈夫かもしれないのに小走りになる。

 きちんとした道でないことも焦燥心に拍車をかける。


「こっちでよかった?」

「こんな木、あった?」


 少しパニックになる女子たち。

 城に戻れなくなる恐怖。


「あっ道だよ!」


 先頭を走るモエミが嬉しい声を出す。


「こっちね!」


 モエミが走り出す。


「「「「違うよ! こっち!」」」


 すぐに立ち止まるモエミ。


「え・・・そ、そうだね、わ、わかってたよ」

「「「「・・・」」」」

「さ、い、急ぎましょう!」


 プールで体力と体温を消費したあと、霧の中を走る。

 霧が体温をさらに奪う。

 全力疾走ではないのに、疲労感が強くなる。

 水辺に出る。


「やった、水上ステージよ! こっちね!」


 モエミが走り出す。


「「「「違うよ! こっち!」」」


 すぐに立ち止まるモエミ。


「あ、ごめん、ちょ・・・ちょっと、間違ったね、そうそう、こっちだね!」

「「「「・・・」」」」

「こ、ここまでくれば、大丈夫だよね?・・・だよね?」


 モエミ、方向音痴疑惑、浮上。

 疑心暗鬼の目をモエミに浴びせつつ、皆の歩みは、小走りから徒歩に移る。

 息を整えながら、城へ。

 本来、もう近くのはずだが、城も白を基調としているからだろか、霧の向こうに城が見えない。

 しかし、女子の関心は、城よりも別のところにあった。


「うふふ、モエミちゃん、もしかして・・・」

「モエミにも弱点あるんだね!」

「え、なに? あ、城だ、城だね、着いたよ、よかったね!」


 必死でごまかすモエミ。

 大騒ぎで帰ってきたモエミたちにケモミミたちがタオルを持って駆け寄る。


「心配申し上げました。疲れているところ恐縮ですが、準備に取り掛かってください。あ、モエミさんは、畑にお願いします」

「畑ですか?」

「はい。吹雪避けが必要です」

「・・・あ、ね」


 以前、フェニックスのお手伝いで、畑の雪避けの魔道具に魔力を込めたのを思い出す。


「えっと、でも、結構数あったよね?」

「ええ、ハルキさんにもお願いしています。先ほど向かわれました」

「・・・わかったわ、畑ね?」

「ありがとうございます。ご案内します!」

「そのまえに・・・くちゅん」


 小さくくしゃみをしたモエミ。


「濡れすぎちゃったから、ちょっと着替えていい? 急ぐから・・・くちゅん」


 もう一度、くしゃみをした。

お読みいただきありがとうございます。

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