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後編 その16 消耗

 城の裏手の水上ステージと沼地ステージ。

 そこに流れ込む小川は、木々の間を縫うように流れている。

 その上流へと、林の中、道なき道を進む3人の少女。


「もう・・・どこに連れていくのよ! 道すらないじゃない!」

「・・・へへへ、内緒」

「内緒じゃないわよ! 私、後で姫からしごかれるのよ! 体力温存しないとまずいのに!」

「それをいうなら魔力でしょ! 大丈夫!」


 モエミはハルナとミコトに苦情を言いつつも、2人について歩く。

 木々の間を縫うように歩く。

 道から外れているが、意外に大きな草は少ない。

 しばらく歩くと、大きな岩々が見える。

 岩々は不自然に一カ所にまとまり、その岩の下から、小川が流れ出ている。


「うふふ、あそこよ」

「大丈夫! ついたよ!」


 岩々に近寄る。

 よく見ると、小川は岩の下からではなく、岩と岩の間に岩の模様の布が張られており、その張られた布の下から流れ出ていた。

 ハルナとミコトは一度振り向き、意味ありげににっこりほほ笑むと、布をめくって、岩と岩の間に入り込んだ。


「すごいカモフラージュね。遠目じゃ、わからないわ」

「うふふ、そうでしょ」

「びっくりだよね! 私もびっくりしたよ!」


 岩と岩の間は狭い。

 足元はほとんどが小川。

 わずかにしか残っていない小川の川べりを踏んで歩く。

 ちょっとすべりそうだ。

 ハルナとミコトの後ろから、岩々の間を抜けると、そこには小さな泉が広がっていた。


「すごーい! こんなところがあったのね!」

「うふふ・・・半分は作ったんだけどね」

「へぇ~」


 岩々に囲まれた泉は神秘的な雰囲気・・・ではなく、どこかで見たような景色。

 おそらく、出入口は、今の1カ所のみ。

 泉のすぐ横には、なぜか、ビーチによくあるリクライニングできるベッドが5つ置いてあり、そこに横たわりながら、ごろごろしている2人の少女。


「あ、エリカちゃんに・・・スワンさん!?」

「Wellcome!」

「いらっしゃーい、モエミちゃん」


 空気が溜まるのか、それとも日当たりの関係か、岩場の中は暖かい。


「あ、あのカモフラージュの布は、スワンさん?」

「うふふ、そうよ」


 スワンが立ち上がってやってくる。

 普段とは違い、なぜか大きなタオルを羽織っている。

 なぜかちょっと嫌がるエリアかの手を引く。

 エリカも大きなタオルを羽織っている。


「あのね、モエミちゃん、確か、貸しがあったよね?」


 スワンさんがにっこりとほほ笑み。

 心当たりがある。

 入れ替え戦の時の衣装、スワンさんに作ってもらった。

 眉毛の上に愛の文字も書いてもらった。

 あのコスプレの影響は大きかったと思っている。

 ピーコックさんは、私が砂の魔法が得意で、砂の魔法対策をしてきたはず。

 しかし、私が使ったのは水素を使った爆発魔法。

 スワンさんの頼み事は断れそうにない。


「い、いきなりですね・・・えっと・・・はい、何をすれば・・・」

「モエミ! 私のプールで泳ぎたいっていうお願い、聞いてくれるっていったよね?」


 エリカはなぜか涙目。


「あ・・・」


 泉は不自然なほど、整えられている。

 なぜか、手すりがあり、水中に入るための階段も備え付けられている。

 そう、泉というより、もうプール。


「水がちょっと、冷たいのよ」


 エリカが訴えかける。


「冷たい・・・もしかして・・・」

「うふふ、振動関係の魔法も得意でしょ? お願いだから、水を暖めてよ」

「え! ハルナ! これだけの水量だよ!?」

「お願い! モエミン! あなただけが頼りです!」

「ミコト、キャラ、変わってない?」

「お姉さんからもお願いするから。ちゃんとご褒美があるわよ」

「ご褒美ですか・・・」


 プール型泉に近寄る。

 泉の一部を無理やり拡張して、コースを作っている感じだ。

 串の真ん中に泉が刺さっていて、串の部分がプールのコース。

 コースの部分はちょっと深く、また壁の部分はまっすぐだ。

 泳げるし、その気になればターンもできるかもしれない。


「泳げる温度でいいんですよね?」

「あ、やる気になった」


 スワンが喜ぶ。


「もちろんよ。お風呂に入りたいわけじゃないから」

「それなら・・・」


 水辺に歩みよるモエミ。

 水に手を入れ、水の感触を確かめるように、水を見つめる。


「いったい何ジュール必要なんだろう・・・えっと、水分子に対して電子レンジの要領で、振動させて温度を・・・」


 モエミがそれなりに魔力を浪費し、水温を上げる。

 スワンとエリカがモエミに付き添う。

 その間に、ハルナとミコトが、岩陰に行ってしまう。

 スワンとエリカが見守る中、モエミが魔法に集中する。

 なぜかハルナとミコトはきゃーきゃー言っている。

 しかし、モエミの集中力はすごい。

 まったく耳に入らないように魔法を重ねていく。


「ふぅ・・・こんなもんですかね」

「えっと、言いにくいけど、向こうの方は、まだ冷たくない?」

「leave it to me! ・・・本当だ、まぜなきゃ。私が少しまぜるね」

「お願い!」


 そのうちハルナとミコトが、スワンとエリカと同じようにタオルを羽織ってやってくる。


「こんなところかな?」

「・・・すばらしい。こんなところね」

「やっぱり、モエミすごいね。魔力の量が違うのかな。効率かな?」

「両方だと思うわよ」

「いや、でも、結構、疲れましたよ?」


 モエミが汗をぬぐうと、ハルナとミコトのタオル姿を視認する。


「え、もしかして・・・」

「うふふ」


 スワンはプールサイドに格好をつけて仁王立ちする。

 そして、羽織っていた大きなタオルを脱ぎ捨てる。


「じゃーん」


 そこには見事な肢体をきわどいビキニが覆っている肉体美があった。

 出るところは出ており、引っ込むところは引っ込む。

 グラビアモデルでも通用しそうである。


「「「おぉ!!」」」


 思わず拍手する少女たち。

 スワンはポーズを取りながらくるりと一回転。


「新作なのよ~」

「さすがです! スワンさん!」

「きれいです! スワンさん!」

「美しいです! スワンさん!」


 褒められて素直に喜ぶスワン。


「さぁ、続いて・・・こらっ、エリカ、来なさい」

「Wait・・・えっと、あっと」

「えい!」


 大型のタオルを無理やり剥ぎ取るスワン。

 そこには日本人離れした真っ白な肌を強調するかのような、黒いビキニの水着が現われる。

 普段のような、ちょっと気難しい雰囲気から一転した、小悪魔的な水着。

 決して大きくはないが、美しいプロポーション。


「いやん」

「うふふ、すばらしい」

「黒ですね! 黒!」

「自分で作っといて何だけど、大胆ね!」


 囃し立てる少女たち。


「ハルナちゃんと、ミコトちゃんもどうぞ!」


 スワンがすすめると、ハルナとミコトもタオルを脱ぐ。

 ハルナはスポーツで鍛えられた美しいプロポーション。

 ミコトはちびっこであるが、かなりのわがままボディを披露。


「二人とも素敵ね!」


 エリカが声をかける。


「よく似合うわ! うれしいわね!」


 妖艶に微笑んだあと、モエミを見つめるスワン。

 そこでやっと気が付くモエミ。

 1歩、2歩とゆっくりとさがる。


「ふふふ、モエミ、逃がさない」


 ハルナがモエミを捕まえる。


「どこにいくのかなっ! モーエーミーン!」


 ミコトもどこかの伯爵のようなセリフと動作に迫り、モエミの腕を固定する。


「No way.逃げられないわよ。私だって着たんだから」


 エリカが反対の腕を固定する。


「え、なにそれ! これって罰ゲーム? 私、がんばって働いたじゃん!」

「モエミちゃん、さぁ、水着作ってあげるから」

「ひゃん、スワンさん、どこ触ってるんですか!」

「ふふふ、さわらないと、サイズ、わかんないじゃない」

「きゃぁぁ」


 岩々に挟まれた場所であり、残念ながら、モエミの悲鳴は遠くまで届かなかった。


お読みいただきありがとうございます。

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