後編 その14 邂逅
そろそろ伏線回収を開始します。
ぶーんと蜂が飛んでいる。
小型の蜂、おそらくはミツバチ。
花を捜しているのか、草原の中を低空で飛ぶ。
バシィィィィィィ!とは音はしていないが、イメージとして、そのような感じで、突然、何かの塊が草原から飛び出し、ミツバチをたたき落とした。
土の上でぴくぴくとするミツバチ。
それをぷちっと踏みつぶすのは黒い獣の足。
黒ウサギの足だ。
片目に傷を負ったウサギは、ミツバチにとどめを刺すと、近くの2羽に向かってアイコンタクトする。
アイコンタクトをもらった黒ウサギたちは、元のポジションに戻り、すかざす耳をいろいろな方向に向けて警戒を始めた。
3羽のウサギの警戒網の真ん中には、大きな岩がいくつもある岩場があり、その岩陰に、ウサギ穴があった。
「ここ、快適ね」
モエミが驚嘆している。
「ティーセットを持って来て、お茶したいくらいだわ」
入口は、ギリギリ、人ひとりがしゃがんで入れる程度であるが、中はモエミがギリギリ立てるくらいの高さの部屋。広さは畳4畳分程度。
ここから、いくつもの穴が伸びているが、人が出入りできる大きさの穴は1つだけで、他の穴は、ウサギサイズ。他にもウサギサイズの部屋があるようだ。
黒ウサギの本拠地。
「土がひんやりしてるからじゃね?」
ハルキが適当な答えを返す。
「こんな基地を作ってるなんで、さすが、男の子ね」
「いや、俺の基地じゃねーし、ウサギ師匠の家だし」
「見事だわ~」
「で、話ってなんだよ。城でも外でもないところっていう、無茶ぶりに応えたんだ。早く言えよ」
「えっとね」
モエミが「ラクミン=田沼」説について、掻い摘んで語る。
「・・・じゃぁ、ケモミミたちは、もともと、みんな人間の可能性が高いってこと」
「多分」
「・・・なんで、ケモミミにさせられたんだ?」
「・・・想像では、心が弱かったりして、適合できない子が、ケモミミ化させられるんじゃないかなと」
「あ~、田沼さん、馴染めなかったもんね・・・え? じゃぁ、姫は? 姫もケモミミじゃん」
「・・・そこがね・・・わかんないのよ」
「姫だけ本物とか?」
「・・・もしくは、フェニックスさんが、姫を操ってるとか・・・」
「姫を? ・・・姫、強いよ」
「だよねぇ~、模擬戦で圧勝してたもんねぇ、フェニックスさんに・・・」
2人も模擬戦で、姫が手抜きをした上で、フェニックスに勝っているのを見ている。
多分、覚えている魔法の系統から考えても、相性がフェニックスにとって良くない。
ハルキが何かを思いついたように顔を上げる。
「あの、そのケモミミ化の魔法って解けないの?」
「やってはないけど、なんか腕輪にしこまれてる感じだったのよ。実験するつもりで解いて、結果、腕輪壊したら、やばそうじゃない?」
「そうかぁ・・・実験も危険だね・・・」
「そうなのよ」
腕輪。
ケモミミたち腕につけている。
赤と青のガラス玉がついている。
「通信機だとおもってたけど」
「そうよね・・・」
「すげぇ、魔道具じゃん! 俺、きちんと調べたい!」
「いや無理だよ・・・」
ハルキが残念な顔をする。
しかし、ハルキがまた顔を上げる。
「あ」
「何?」
「姫は腕輪してない」
「そうだね、姫以外は、全員、腕輪してるよね? やっぱり、別に考えないといけないのかな・・・」
「大人になると腕輪がはずれるとか・・・」
「どこまで現実で、どこまでファンタジーなのかが問題よね・・・そろそろ帰らないと・・・」
「あ、帰る気あるんだ」
「何言ってんのよ! あたりまえじゃない!」
「・・・勉強が遅れるから?」
「違うわよ! 冬アニが始まっちゃうでしょ!」
「・・・そう」
ペタペタと足音が聞こえる。
土の床の上を歩く音。
ほんとうに微かな音だが、静かな空間でははっきりわかる。
「音って結構きこえるのね」
「あれ? 1羽じゃないね? みんな帰ってきちゃった?」
「黒ウサちゃんたち、ありがたいわね。とりあえず、城内と、ミツバチがいるところでは、情報はダダ漏れだと思ったほうがいいものね」
「ちょっと待って、え? なんで勝手に・・・腹減ったのかな?」
出入口からウサギが1羽顔を出す。
黒ウサギ。
でも、なぜか服を着ている。
「え?」
モエミの驚きに対し、素早く立ち上がり、臨戦態勢をとるハルキ。
黒ウサギのクロウサの後ろから、茶色のウサギと、白色のウサギが顔をだす。
2羽とも服を着ている。
「・・・あら、クロウサちゃん、チャウサちゃん、ウサミンちゃん、いらっしゃい・・・とは言っても、私の基地じゃないけど」
モエミはなんとか、努めて明るい声で歓迎の辞を述べた。
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