後編 その13 秘密
そろそろ伏線回収を開始します。
「あれ~・・・、イチゴってこれだけしかなかった?」
「本当? おかしいねぇ・・・」
遠くにケモミンたちの声が聞える。
「ねぇ、モエミお姉ちゃん、これを植えるの?」
「私もしてみたい」
「いいわよぉ」
ちびっこたちが農作業を手伝ってくれる。
目の前には牧歌的な風景が広がる。
ちびっこたちは貫頭衣に近いものを着ているため、見方によっては、西洋の絵画の中に入り込んでいるようにも見える。
もっとも、みんな黒髪、黒目だが。
見上げる空はなく、巨大な発行する円形の何か。
フェニックスさんは、自力で帰れないと言い切った。
曰く、この世界は円柱状の壺のような形状らしい。
壁と底は破壊できないことが確認済み。
ハルキが捕まえたコオロギを牛乳瓶に入れていたのを思いだす。
コオロギはガラスで滑って脱出できない。
ぴょんぴょん飛び跳ねるが、角度が悪くて、飛び出せない。
「嫌なものを思い出しちゃった」
気を取り直して、ジョロに水を入れる。
子供たちが近寄ってくる。
癒しだ。
「植えたら、しっかり水をあげるんだよー」
「「「はーい」」」
そのとき近くにいたケモミンたちの腕から、声が流れ出す。
「落下物、落下物。支給、トランポリンに集合」
ケモミンたちは、耳をピンとすると、トランポリンのほうに駆けだす。
「こら~! ウサミン行くよーん!」
「えー、面倒くさいです~」
「だめだよーん、仕事だよーん」
「えっと、わ、わたしは?」
ラクミンが戸惑う。
「減速の魔法使えないと思慮。農作業、継続で」
フォックが通り過ぎつつ、断定的に言う。
「あの、あ、はい」
そわそわしていたラクミンが停止する。
自分が役に立たないと思ったのか、ちょっと、しゅんとしているように見える。
「ラクミンちゃん。いいんじゃない? ああ言ってくれてるから、作業の続きをしようよ」
「あの、はい、わかりました、モエミさん。ありがとう」
少し静かになった畑。
「あの、植え付けが終わったのなら、奥の畑で、メロンを収穫したいのです」
「はーい、では、私、少し片づけてから行くので、ちびっこどもよ! ラクミンを手伝うのだ!」
「「「はーい」」」
ラクミンがちびっ子を引き連れて、最も城から離れている畑に向かう。
やはり牧歌的だ。
モエミの心は、裏腹。
この風景を愛でたい心。
偽りだと弾劾し、破壊したい心。
作業し、少し汗ばむが、この世界では微風しか吹かない。
その心に引きずられたかのように現実が変化する。
「あの、ド、ドロボー!」
「こらぁ、だめでちゅ!」
奥の畑からの声。
とっさに顔を上げるが、木の陰になってよく見えない。
走り出すモエミ。
距離はわずか。
すぐに到着すると、ちびっこたちはおらずウサギがいた。
「ウ、ウサギ?」
戸惑うのは一瞬。
畑の奥の林から声が聞える。
「か、返すのです!」
「きゃはははは、やだよーん」
聞いた声。
「ルナ、ヒナ!」
再度、走り出すモエミ。
そのとき、まるで何かに押し出されたかのように、林から転げだすラクミン。
「返して!」
「ちょっと!」
モエミの声を聞かずに、林に突入するラクミン。
「きゃはははは、しつこい・・・って、変化の魔法は、ケモミミに聞きにくいって!」
「しつこいから、やってみるのよ」
モエミが林に入ると、ちょうどラクミンが目の前で魔法にかかったところだった。
そぐそこにはルナ、ヒナ。
「うわ、モエミだ」
「きゃははは、タイミング、最悪、退散しよ!」
「こら、メロン、重い!」
ルナ、ヒナは逃げ出す。
モエミは、犯人は放置し、ラクミンに駆け寄る。
みるみるうちに、ウサギになるラクミン。
「大丈夫? すぐに魔法を解くね。あいつら、まったく・・・」
何度か解いた経験のある変化の魔法。
モエミは集中する。
ラクミンに対し、魔法を維持し続けている魔法陣を視る。
「あれ? ピーコックさんのとは違う?」
発動した後の魔法陣を書き換えできる力。
モエミだけの才能。
至近距離で、短時間のみしか使えない。
「ん? 二重?」
魔法の持続にかかわる部分を書き換える。
魔力の供給が枯渇し、魔法陣が消える。
「これでいいかな」
目の前でウサギから田沼になる。
「・・・え? どういうこと・・・」
しかしそれは一瞬で、腕にはめられた腕輪から、薄く見えなくなっていた魔法陣に魔力が供給されはじめ、すぐに田沼はラクミンになる。
(これは・・・)
すぐに周りを見渡すモエミ。
(誰もいないよね? これって、この秘密より、この秘密をしってるほうが、まずいパターンよね?)
「あ、モエミさん・・・」
「大丈夫? た・・・ラクミンちゃん」
「ええ・・・、私、確か、魔法をかけられて・・・」
ラクミンが自分の手や体を見て呟く。
「あ・・・レジストしたんじゃない?」
「れじすと・・・ですか?」
ラクミンの腕輪から声が聞える。
「ラクミン、ラクミン、応答願います。モエミちゃんやちびっ子もいないけど、しらねーかな? 今、どこにいるかおしえてほしいぜ」
モエミはラクミンを見る。
「とりあえず、状況を説明してもらえるかな。私、ちびっ子を助けてくるね」
「あの・・・、はい、えっと、こちらラクミン・・・」
腕輪に話しかけ始めたラクミンを置いて、林から畑へ向かう。
ウサギがたむろしている。
きっと、このウサギは、ちびっこたちだ。
魔法を解くために、一番近い、ウサギへ近寄るモエミ。
「・・・闇が深い・・・わね・・・」
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