後編 その11 秘密?
モエミが回復すると、頭なでなでをしていたオウルが、モエミの耳元で囁く。
「フェニックスさん、気を付けて」
「わかってる」
小声で応えるモエミ。
オウルは立ち上がり、ゆっくりとドアに向かいつつ、ハルキに向けて呟く。
「ビット・・・知りたい?」
「は、はい! 知りたいです」
「後で来るといい」
「はい! ありがとうございます!」
「ベネ」
かすかに微笑んだと見えたのは幻か。
オウルはドアを開ける。
そのまま出ていくかと思いきや、立ち止まり振り返る。
「待ってるみたい」
「「え!」」
オウルに続いて、そそくさ部屋からでると、フェニックスとホークが雑談か何かをしながら待っていた。
「あ、すみません。待ってらっしゃったんですね」
「ごめんなさい」
「いいのよぉ~、じゃ、いきましょうか」
フェニックスはいつも通り二パッと笑うと、3人を連れて階下へ。
オウルは手をひらひらさせながら、離れていく。
夕餉の香りがまだ、城内に残っている。
すでに外は暗くなっており、城内は神秘的な青い光で包まれている。
階段を下りていくが、さすがに自分たちの部屋に入っているのか、1階に降りるまで誰ともすれ違わない。
窓際に光源を置いてあるのか、仕切りのカーテンに影絵のように、人影が映る。
おとぎ話の世界に立ち入ったような世界。
世界樹が静かにたたずむのを横目にしつつ、子供たちの生活音や笑い声をBGMに1階におりると、そのまま調理室へ。
「ど、ど、ど、ど、どこに行くんですか」
モエミはフェニックスにひきつった顔で尋ねる。
「静かにね~」
そう答えて、ホークに目配せするフェニックス。
ハルキは、なぜ姉が怖がっているか理解できない。
「大丈夫だ、誰もいない」
静かにフェニックスは頷く。
「OK、では、4階組にしか教えてない秘密の一つを御披露しましょう」
また二パッと笑った。
一行は調理室の隅っこに設けられた、地下室への階段を下りる。
城内は青白い水晶の光で包まれており、その恩恵は地下室にまだ及んでおるが、若干暗いのは否めない。
魔力はすっからかん。先頭はフェニックス、最後尾はホークに挟まれている。
ここで何かあっても逃げられない。
魔力の使い過ぎを後悔するモエミ。
何かあれば、魔法発動前に、フェニックスを人質にとれば大丈夫かな?
ホークさん対策としては、フェニックスさんを人質にとれば、きっと楽勝ねとは思う。
「あ、あの、手を繋いでもらってもいいですか?」
「あら~、かわいいわね~、いいわよ~」
フェニックスが手を繋いでくれる。
いざとなれば、このまま電流を流して、フェニックスを人質になどと、モエミが不埒なことを考えていると、フェニックスは地下1階の野菜庫で立ち止まる、空いた右手を前に出して、短く何かをつぶやくと、炎が手の平の上で揺らめいた。
「おい、温度が上がる。これを使え」
一番後ろのホークが何かを投げる。
「おっと、投げない!」
慌てて火を消して、懐中電灯を受け取ったフェニックスは苦情を述べる。
「ここは、やっぱり、雰囲気的には魔法じゃないんですか?」
ハルキがつっこむ。
「食料を保存してあるんだ、寒くないとだめだろう」
「いや、光の呪文とか・・・」
「・・・覚えてない・・・この懐中電灯の乾電池は、俺が魔法で充電したぞ」
「本当っすか! 今度、教えてください!」
「ああ、いいぞ」
ハルキが満足したところで、フェニックスが一度、モエミの手を離す。
「あ・・・」
「大丈夫よ」
懐中電灯をランタンモードで光を灯し、再びモエミの手を取る。
「以外に、甘えっ子さんねぇ・・・」
「あ、いや・・・」
そして、いよいよ下の階へと歩みを進める。
下の階の入口から、下の階を除くと、青い光の加護が明らかに弱くなっている様子。
コツン、コツンと階段を下りる。
ドクン、ドクンと心臓が高鳴る。
いざとなったら、電流を流してやると、手を繋いでもらったことへの感謝を踏みにじる決意を固くしつつ、暗闇に身を沈めていく。
冷気が追い打ちをかける。
かなり気温が低い。
階段の材質が木から土にかわる。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう。きっと巨大な包丁やのこぎりがおいてあって、大きな解体する作業台があって、そこで切り刻まれるのよ! 大きな肉塊や骨が・・・)
「ここが、要冷蔵関係の貯蔵庫よ」
モエミの妄想をフェニックスの言葉が打ち消す。
思ったより、広い空間。
上の貯蔵庫と同様に、いくつもの棚がある。
棚の一番上は、バケツ。
きっと、氷が入っているバケツ。
見たくはないが、棚を見る。
たくさんの真空パックに入れられた食べ物。
「真空パック!?」
肉が真空パックに入れられて保存されていた。
それも、かなりの巨大サイズ。
バーベキューの材料を買いに行った業務用スーパーで、見たような気がする。
「豚肉」とか「牛肉」とかラベルが貼ってあるのが見える。
「こんなにたくさんのお肉が・・・」
「人数を考えればそうでもないのよ。ま、もちろん、贅沢は無理だけど、そこそこの在庫はあるのよね・・・」
「落ちてくるんですか?」
「落ちてくるのよ、不思議なことに・・・」
ありえない。
なぜ食料が落ちてくるのか。
それも、都合のよいパッケージで。
見渡してみると、ウサギの肉と思われるものも保管してある。
きれいに解体してあるので、あまり怖さは感じない。
肉の塊が天井からつるされているということもない。
あやしげな大きな骨なども放置されていない。
巨大な包丁やのこぎりや、解体する作業台も見当たらない。
純粋な保管庫のようだ。
むしろ、各種調味料、味付けを簡単にするレトルト食品、乳製品関係も保管されている。
スーパーまではいかないが、かなりの品ぞろえだ。
「すごい、ですね、これなら畑がなくても・・・」
「それは無理。生鮮食品がないと、多分、病気なっちゃう」
「あ、はい」
納得はいかないが、一旦、引き下がるしかない。
新しい情報が整理しきれない。
「あ! なるほど! この部屋が、4階組の秘密なんですね!」
モエミが我が意を得たりと主張する。
即座にフェニックスが突っ込む。
「違うし」
「へ?!」
この時のモエミの変顔は、ハルキをしばらくの間、思い出し笑いのネタに困らなくさせるのであった。
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