後編 その10 駄姉
「てい!」
ハルキは自分のベッドを飛び越そうとジャンプするが、思ったより飛んでいかない。
ベッドを飛び越えず、スポンとベッドの上に落ちる。
「おっかしいなぁ・・・てい!」
今度はきちんとベッドを飛び越える。
4階組みの男の子は現在6人。
ウルフに勝ったので、強引に部屋を入れ替えるということもできたのだろうが、この世界に落ちてきたときに、モエミと一緒に使っていた、広い客室を、とりあえず、次の入れ替え戦までは使っていいことになり、引っ越しも面倒くさいので、そのまま使っている。
したがって、ハルキの部屋は広い。
バタバタできるくらい広い。
ジャンプできるくらい広い。
「自分を軽くしているから、遠くに飛べると思ったんだけど・・・てい!
再度、ハルキは自分のベッドを飛び越そうとジャンプするが、ベッドを飛び越えず、スポンとベッドの上に落ちる。
「えー・・・なんでだろう・・・2つも魔法を発動させてるのに・・・」
テーブルの上のノートを取り、2枚やぶる。
その1枚を固く丸めて投げる。
飛んでいく。
もう1枚を軽く丸めて投げる。
あまり飛ばない。
「空気抵抗かな・・・軽すぎてもだめなのか・・・うーん」
何度かベッドと飛び越える。
何度かベッドの上に落ちる。
「あ、もしかして。てい! お!」
ハルキは天井に激突しそうになる。
「あぶねぇ! でも、わかった! 力をくわえる瞬間までは、軽くしちゃダメなんだ、力を加えた後に軽くすると・・・お!」
今度は慌てない。
「ほうほう、これなら、かなりの距離をジャンプできそう・・・でも・・・2つ発動させるのは面倒くさいな」
しばしの沈黙。
「1つの魔法陣を作れないかな・・・そういや、姉ちゃんが・・・」
右手と左手で別の魔法陣を作成して、発動させずに待機させる。
「おぉ、やればできるじゃん。思ったより、魔力を削れられるけど・・・」
左右の魔法陣を見比べる。
「これを見ただけではわかんないねぇ・・・でも、似たような模様がある・・・」
1つは重力軽減の魔法陣。1つは筋力増強の魔法陣。全く違う魔法陣なのに、似通っている部分がある。
「これって、パーツをばらして、違う場所にはめ込んだらどうなるんだろう・・・」
ガチャン!と大きな音をたててドアが開く。
モエミが乱入してきた。
「うぉ!」
びっくりして魔法陣が霧散する。
「ハルちゅん、助けて・・・」
「ノックくらいしろよ!」
「ほいっ!」
ハルキの抗議は無視して、奇妙な掛け声を出してモエミがベッドにダイブする。
「あー、もう、またここで寝るの?」
もともと2人で使っていたので、ベッドは2つあるから問題ないのだが。
「寝ない、寝ない、ちゃんと帰る」
「嘘! 昨日もそう言ってたじゃん!」
「いいから、治癒魔法かけてよ・・・お姉ちゃん、死んじゃうよ・・・」
「・・・あー、もう!」
ハルキも治癒の魔法が使える。
「ほら!」
「あーん、癒されるぅ・・・」
「・・・姉ちゃん、これって効果あるの?」
「何言ってるのよ! 過酷な練習の後の回復魔法での超回復と、毎日の魔力の使い切りは鉄板設定なのよ! 意味があるに決まってるじゃない!」
「意味、わかんないし」
「・・・体力ついたと思わない?」
「・・・ついた・・・かな?」
「ついてるわよ・・・絶対」
コンコン。
「油断大敵・・・ドア開いてる・・・女の子だよね?」
オウルが入ってくる。
「あ、オウルさん、あ、オウルさん・・・」
モエミはオウルの言っっていることは聞かず、ベッドの上でじたばたする。
「天真爛漫」
そうつぶやくと、そっとベッドに近寄り、モエミの頭をなでなでする。
「不可抗力」
「ふぅ、観天喜地・・・、あ、オウルさん、防御の魔法、ありがとうございます。すごく役に立ってます。えっと、報恩謝徳? 何と言ったいいか、習ってなかったらヤバかったせす。ほんと、感謝感激雨あられ・・・」
「・・・以心伝心・・・」
フェニックスから、化学の実験を習う間、これはまずいと思ったモエミは、こっそり、オウルから防御系の魔法を習っていた。
「あの、六角形の氷のやつすごいですね」
「ビット?」
「ビット!」
なぜかハルキが反応する。
コンコン。
再度のノック。
「ドア開いてるけど、一応ノックしたわよ・・・こら、モエミちゃん! 女の子がドア開けたまま、ベッドでくつろがないのよって・・・どういう状態?」
フェニックスが入口から顔を出す。
オウルは静かにほほ笑むのみ。
「・・・ハルくんの部屋でしょ・・・ドア閉めて・・・」
結局、オウルも開けっ放しだったことに気づき、モエミが要求を行う。
「そもそも姉ちゃんが開けっ放しにしたんだろ!」
「いいじゃん!」
「自分がしろよ!」
「シャー!」
「威嚇しても、だめだからね!」
「・・・私が閉めますね」
2人のやり取りを見たフェニックスがあきらめ顔で閉めようとする。
が、閉まろうとした、ドアが急に開く。
「あ、ごめん、忘れてた。回復が終わったら、2人に見せたいものがあるので、時間をちょうだいね?」
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