後編 その9 即戦力
「あの、あそこ、なんですけど」
メガネをかけたラクミンが、倉庫の端っこを指さす。
「あの、もう、ジャガイモの準備ができてますね」
みんなを見渡して同意を求める。
ジャガイモ・・・そういえば、そういう気もする。
ゴミじゃなかったんだ。
捨てなくてよかった。
「あの、これを植えてしまいましょう!」
目の悪いラクミンに、姫のアイデアで、田沼さんのメガネを掛けさせたところ、いきなり畑の作業小屋の中で優秀さを発揮する。
「あの、これはエンドウ豆の苗ですね。これもそろそろ植えないとダメですね」
祖母の家で大根やジャガイモをひっこ抜く手伝いをする程度しか、農作業をしたことのないモエミとハルキの100倍は即戦力だった。
しかしながら、土を耕したり、物を運んだりと、できることをとりあえず真面目に頑張るのが2人のよいところ。
できることはやる。
できないことはがんばる。
早くもケモミンたちに混ざって奮闘中だ。
「あの、灰ってありますかね。ものを燃やした後の灰・・・」
「おれっちが、もってくるよーん」
ケモミミが一人飛び出す。
「タイガーさん、とりあえず、良かったですね」
「うむ、大変助かる・・・スパローの抜けた穴は大きい・・・」
タイガーさんも不安だったんだろうと思うモエミ。
「ところで」
タイガーが真剣な顔をする。
まぁ、いつも、彼は真剣そうな顔をしているが、特に今は真剣そうだ。
「スパローは、本当に帰ったと思うか」
「えっと、あの」
不覚にもとっさに答えられない。
「スパローは、畑の要だ。最近こそ豊かになったが、以前は、そうだな、スパローが畑に目覚めるまでは、よくなかった。今、野菜がたんまり食えるのは、スパローのおかげだ。それなのに・・・」
タイガーが真剣にモエミを見つめる。
「いなくなる前に、合わなかったか?」
「え? 私ですか?」
「ああ、ピーコックがスパローを拉致ったというところまではつかめたのだが、その後が不明なのだ。ピーコックは、モエミのところに行ったのでないのか」
「い、いえ、しりませんよ」
ここは、はぐらかす一択だろうと、とぼけるモエミ。
「そうか・・・」
「そうですよ、例え、私のところにピーコックさんが仕返しにきたって、スパローさんが一緒なら、なおさらそんなことだめよって、止めてます。ただら来るわけないじゃないですか。・・・ピーコックさんだけなら、復讐にきた可能性もありますけど」
「・・・ま、そうか。そうとも言えるかもしれん。・・・だが、スパローは流されやすいからな・・・」
うーん、困ったなと思うモエミ。
バトルして、コテンパンにしたことと、行方不明の因果関係は不明だが、痛くない腹は探られたくない。
「あの、結構、熟れた果物がありますね、みなさーん、少し収穫するので、手伝ってくださーい」
来て早々にもかかわらず、リーダーシップを発揮しはじめるラクミン。
その声に助けられるモエミ。
「はーい。タイガーさん、いきましょう」
「お、おう」
「あ、私、脚立を取ってきますね」
「・・・頼む」
タイガーのスパローへの気持ちはなんとなくわかっていた。
心配なのだろう。
それに、例え戻っても、戻って出会えるかどうかは、また1つのハードルであるのは間違いない。
倉庫に向かいながら考える。
「片思い? 両想い? うふふふふ、リア充ってやつ? ・・・あ!」
急に上を見上げるモエミ。
「ここって、リアル?」
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