後編 その7 新しい仲間
朝の水やりと収穫。
もはや農家のようだ。
農家2日目にして、何となく口にした言葉が爆弾発言となる。
「ねぇ、タイガーさん。収穫して空いた土地には、次に何の野菜を植えるんですか・・・」
「・・・」
立ち止まって、モエミを凝視するタイガー。
「あの、もしかして」
「・・・い、いままでスパローさんが全部決めてたから・・・、どうすればいいんだろう・・・グレイ、クロミン・・・」
タイガーは、近くで話が聞こえていたと思われるケモミミたちに話をふる。
「え? そんなこと急にいわれてもわかんなぜ。なぁ」
グレイはクロミンに同意を求める。
「そおっすよ、言われたとおりにやってただけだから、わからないよーん」
いつも通りおどけて答えるクロミン。もちろん、何の解決にもないっていない。
「でも、既に空いている土地もありますけど、植えなくても大丈夫ですか」
「う、植えないとだめだろうな・・・。とりあえず、朝食後、みんなで考えよう」
「ええ・・・」
頷いて、水やりに戻るモエミ。
(思ったより、スパローさんの抜けた穴は大きいわね。よく、こんな調子にで、自給自足してきたわね・・・自給自足?)
水やりをしながら、畑に植えられた野菜や、周辺に植えられた果樹を、今一度確認する。
(今まで食べてきたメニューから考えて、野菜や果物は自給できるけど、よく見れば米がないわよね? パンは小麦だろうけど、小麦もないわよね? そういえば、脱穀とかも見たことないし・・・どういうこと? まとめて育てておいてるだけで、今は、植えている時期じゃないってことかしら・・・)
「よし、こんなところだろう、では、トマトの収穫を頼まれているので、トマトを少し持ってかえる」
「「「はーい」」」
タイガーが呼びかけると、ケモミミたちがテキパキと働く。
全く働き者だ。
モエミはハルキと水やり道具の片づけを行う。
早朝の清涼な空気の中の労働は、適度に汗ばむ程度で、大変気持ちいい。
みんなで、歩いて、城に向かうと、ベーコンを焼くにおいがしてくる。
「べ、ベーコンだぜ!」
「やったよーん」
「!」
ケモミミ男子たちは、トマトの籠をケモミミ女子に押し付けて、走り出す。
「ちょっと! あー、もう」
「低劣です」
ケモミミ女子は愚痴る。
(だから、そのベーコン、どこから持ってきてるのよ!・・・燻製しているところは、見たことないわよね?)
トマトは、ウサミンとフォックが、調理室に運んでくれるということになったので、モエミとハルキは、タイガーと一緒に、城の正面から入る。
いつもと様子が違う。
入口の向こう――つまり、いつもみんなで食事をしている広い空間――で、みんなが上を見上げているのが外からも見て取れる。
「ん、何事だ?」
タイガーが疑問を口にする。
3人は城の入口から入る。
子供たちは広場の中央の巨大な木を見上げているようだ。
モエミも、木を見上げる。
そこには、巨大な木の実が、木にぶら下がっていた。
「桃の実? タ、タイガーさん、あれは?」
「・・・ああ、桃の実じゃない、ケモミ実だ・・・」
「・・・はい?」
モエミが、問いただそうするが、姫が階段を下りてきたことから、喧噪が広がり、モエミも思わず、そちらに気を取られる。
「姫! 新しい仲間です!」
「姫! お願いします!」
「姫!」
フェニックスとホークがいつもの壇上にあがり、その他の子ともだちは、壇上から降りる。
姫がゆっくりと壇上にあがる。
姫は、みんなを微笑みながらゆっくりと見回す。
「えっと、はじめるね!」
「「「おぉぉぉぉぉ」」」
盛り上がる子どもたち。
『空の天蓋を支え、地の土塊を纏める、偉大なる世界樹よ。その使徒たるケモミミを降臨させたまえ!』
『『『『『降臨させたまえ!』』』』』
姫が魔法を行使したようだ。
姫から魔力を感じる。
(何の魔法? さっきのって詠唱? 世界樹? 何が何らや・・・)
熱狂している中で冷静な観察と感想を行うモエミ。
「うぉぉ!」
「降りてきた!」
桃の実状の巨大な塊がゆっくりと降りてくる。
「タイガー! 念のため手伝え!」
「おう!」
タイガーが壇上に駆け上がる。
桃の実は、タイガーが手を伸ばせば、もう届く高さ。
ホークとタイガーが桃の実に手を添える。
桃はゆっくりと壇上に置かれる。
ホークとタイガーは、実が転がらないように注意している。
姫とフェニックスがアイ・コンタクト。
「それではみなさんいいですか?」
フェニックスが問いかける。
「では、姫お願いします!」
「はい!」
姫が、にっこりほほ笑んで、前に出る。
「では~、1、2、3、ダァ!」
(誰よ、それを姫に教えたのは・・・)
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」
モエミの感想をよそに、ぱっくりと実が真ん中から、観音開きに左右に割れる。
そこから、丸耳の少女が現れた。
きちんと、みんなに見えやすい角度で、45度くらいの角度で、横たわっている。
「ニューケモミミ!?」
思わずつぶやくモエミ。
「ケモミ実! ケモミミが生まれる実! ケモミミって、木から生まれるの!」
横にいたクロウサが答えてくれる。
「ですです! ケモミミは世界樹様から生まれてくるのです!」
「そう・・・なんだ・・・な、なんてファンタジー!」
おもわず声が大きくなるモエミ。
「!?」
もえみの大声にびっくりするクロミン。
「ご、ごめん・・・で、みんな、そうなの?」
「で、ですです! そうなのです!」
「そう・・・なの? よく、生まれるの?」
「いえいえ、久しぶりなのです! グレイが生まれてから、ずいぶん経つのです!」
「へぇ・・・ちなみに、服を着たまま生まれるんだ」
「ですです! ケモミンブレスレットも腕にはめたまま生まれるのです!」
クロウサが、自分の腕にはめている、小さなガラス玉がはまったブレスレットを指し示す。
「あ、ケモミミたちが、通信で使っているブレスレットね・・・って、そんなことが・・・」
『目覚めよ~』
モエミが疑問点を整理する時間は与えられない。
事象は進む。
姫が壇上で、大きな声でポージングしながら、叫ぶ。
すると、丸耳の少女が目をぱちくりと開けて、うんしょ、うんしょと立ち上がる。
「えっとぉ、ラクミンと命名します! それからぁ・・・」
姫がラクミンに近寄り、ふんふんと臭いをかぐ。
そして、みんなに向かって発表する。
「土魔法系が得意なようです! 畑担当でがんばってもらいます!」
「「「おぉぉぉぉぉ!」」」
(おぉぉぉぉじゃないわよ! なんて都合がいい・・・)
「さぁ! 歓迎の朝ごはんにしましょう!」
フェニックスが場を切り替える。
「モエミおねぇちゃん、ラクミンちゃんさそって、いっしょに食べよう!」
「ねぇ、ねぇ、いこいこ!」
ちびっ子たちに微笑みながら、新たに生まれた疑問への答えはでない。
(確かに畑担当は足りない。都合もタイミングもよすぎる。どうなってんの?)
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