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ハルキ、最初の授業

 暗闇の中から現れたのは、眉間に皺を寄せた姫だった。

 フェニックスの顔にドロップキックを命中させたのはコーレムらしい。ぴょこぴょこと姫のもとに帰る。


「えーっと、自主練習はすばらしいですけどぉ、フェニックスさん、炎をいっぱい使うと、酸素不足になりますって、何回もお伝えしてますよね。ね? もう、うまの耳……、ええっと」

「馬耳東風」


 突然、登場した姫の苦言に、オウルが助け舟を出す。


「そう、それ。馬耳東風ですねぇ。いけませんよ。デコピンですよ」

「す、すみません」


 小さくなるフェニックス。ほっぺたをぷくっと膨らます姫。姉ちゃんはあんな顔はしない。というか、マンガの中でしか見たことがない気がする。


「オコはメ」


 オウルは、姫を皮切りにお菓子を配り始める


「あら、焼き菓子ね。ありがとう。お部屋でたべていいかな。お持ち帰り~。では、ほどほどにね~。おやすみ~」


 姫は大喜びして、コーレムを引き連れて帰っていった。ちょっとコーレムかわいい。ほしいかも。

 しかしながら、嗜好品は本当に大変貴重なようだ。効果抜群。オウルは、最後にモエミに焼き菓子を渡すと、じっとモエミを見つめた。どうやら、食べてみてほしいようだ。モエミは焼き菓子を口にしながら正解を模索する。


「えっと、美酒佳肴」


 念のために四文字熟語で感想を伝えた。


「ベネ」


 オウルが眼鏡の下で、ニッコリとほほ笑む。

 モエミが自分の対応が間違ってなかったことを理解したところで、その夜は解散となった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ステータス! メニュー! オープン! 鑑定!」


 先に起きている姉ちゃんが意味不明なことをしていることは、夢うつつに知っていた。

 目を開ける。いつもと違う天井が見える。


「知らない……ぐふぇ」

「ちょっとまちなさい!」


 いきなり口をふさがれ、その次に掛布団でぐるぐる巻きにされ、そしてベットから押し出され、床に落とされるハルキ。


「これは私がやるの! ……知らない天井だ……うふ」


 姉の不可思議な行動は理解できない。


「……何してるの?」


 ハルキが尋ねると、しまったという顔した後に、


「な、な、な、なんでもないわ」


 とモエミは怒ったような口調で答える。


(まぁ、いいか)


 昨夜は屋上から帰ったあと、姉ちゃんと取り合いをしながら練習を重ね、第2段階である紙をクリアした。姉ちゃんも羽毛は浮くようになっている。早くもっとすごい魔法が使いたいものだ。朝練を開始した。

 しばらくすると学校のチャイムが鳴る。何事かと、様子を見にドアを開けると、同じ階の半分以上のドアが開き、人が出てくるのが見えた。小さい女の子が走ってくる。


「おっはよー、朝ごはんのチャイムだよー」


 朝からテンションが高い。昨日とはうってかわって、奇妙な服装のフェニックスは2人が起きていることを見て取ると、田沼の部屋に突入を開始していた。

 新人3人が連れだって階段を下りると、1階ではスワンを中心に、年少組が朝ごはんの準備をしていた。パンのいい匂いがする。ステージの前にテーブルが出され、その周りに椅子が置かれている。通常はここで食事をするのだろうか。姫も手伝っている。姫の衣装は白雪姫だった。


「おい、まさか、今日はまた小人になれというわけじゃないだろうな」

「え!? 白雪姫だったら小人でしょう ほかに何があるの!?」

「ちょ、ちょっと待て」


 一緒に降りてきた、フェニックスとホークが言い争いを始める。


(そうか、フェニックスさんの服、小人なんだ)


「ちょっと、小人はやめてよね」

「小人の衣装など、我が装束として似つかわしくない」

「かんべんだぜ」

「前回あれほど言ったよね」


 ピーコックとクロウとウルフも言い争いに加わる。フェニックス形勢不利。


「わかったわよ! もう、さぁ、ちびっ子たちの中で、小人の衣装を着たい子はおいでー」

「わーい」


 フェニックスは、年少組を集めて魔法をかけだした。希望者の衣装を小人にしている。これで白雪姫と大勢の小人ができあがった。年少組はもちろん体が小さいため、なかなか絵になる。フェニックスは気に入ったようだ。


「あら~、怪我の功名ね!」


 ハルキは気が付いたことをホークに尋ねる。


「ホーク先輩、姫の頭に耳が……」

「ああ、姫は猫の獣人なんだ。昨日は、冠……ティアラといったか。ティアラを付けていたのでわかりにくかったかもしれないが」


 今日は黒髪に赤い飾り。そこにセルリアンブルーの猫耳。


(昨日はティアラと金髪で見えなかったのかな?)


 尻尾は、大きなスカートの下なのか見えない。


「ハルキ、こっちだ。ここに並ぶ」


 朝食はバイキング形式である。テーブルの上は、野菜と果物とパン。肉は鶏肉関係のみのようだ。


(昨日の夜はごちそうだったんだ)


 しかしながら野菜も果物も新鮮であった。

 大きく分かれて、男子と女子に分かれて座るようである。食べものをとり、ホークに連れられてテーブルにつくと、マナトとジョーと名乗る同年代の少年達から同席を求められた。ハルキに否はない。


「おまえ、すげーな。昨日のでかかったよな」

「そうだよな。でかかったよな。あれならすぐに上達するぜ」


(そうか、また新人なんだ。追っかける方なんだ。頑張らないと……)


「ありがとう、がんばるよ」


 ハルキは回答しながら鶏肉を口に運ぶ。


「食った、食ったぞ」

「食ったな、うまいか?」

「ん? うまいけど」

「それ、ウサギ肉だぞ」

「そうそう、ウサギ食ったな!」

「ん……鶏肉かと思った。うまいよ」

「え……ちぇ、つまんねぇ」

「おえってなるかと思ったのに」


(なんだよ、そういうことかよ、やけにフレンドリーかと思ったら。……食えて、うまかったらなんでもいいけどな)


「うまいよ、いけるいける」

「……悪い悪い、ウサギうまいよな」

「やるねぇ、やるじゃん」


 2人はハルキが平然を装ったのを最初は若干不満だった様子であるが、逆に、平気で食べたのを見て、感心したようだ。


「今日は助かった」

「小人はさすがに勘弁だぜ」

「ここ最近、ひどいよな」


 小声でホーク達が話をするのが聞こえる。小人の衣装は不人気なようだ。ハルキは昨日のイベントの際に、壇上のメンバーが不機嫌そうだったのを思いだす。やはり、あのような衣装を着るのはフェニックスの強い意志が働いており、多くのメンバーは嫌がっているようである。

 食事を終えると、各自の食器は各自で片づけるようだ。おかわりに行くホークに断りを入れ、マナトとジョーに案内してもらう。生ごみは分別。食器は自分で洗う。なかなかきちんとしている。ハルキは去年、学校で行った宿泊訓練を思いだした。

 1階裏手のトイレにみんなで行った後、親切にも教えてくれるらしいので、二人について行くと、2階の教室の1つに案内された。教室は見慣れた感じの、純日本風の教室である。机も椅子も数日前に見たものと何ら変わりはない。黒板があり、黒板の上にはおおきく「あとぜき」とかいて書いてある。なんだろう。

 窓際にはたくさんの板や箱が置いてある。板は、昨日、ホークが持ってきてくれたやつだ。形が違うものもちらほらある。教室の後ろ側の棚にも、たくさんの板や箱が置いてある。棚は区分されており、水、空気、土、火、電気、振動などと上に書いてある。ジャンル別になっているようだ。

 そのうちの一つを二人が持ってきてくれた。説明が始まる。


「ほら、ここの魔法陣に手を挙げて……」


(ふふふ、予習はばっちり!)


 いとも簡単に羽毛を動かすと、次に紙も動いた。


「すげぇ、俺、1週間かかったのに!」

「初日で紙とかありえねぇ!」


 2人は自分のことのように喜ぶ。


「じゃあさ、石いってみようぜ、石」

「いいよ」

「あのさ、その、魔法を流す感じってのを覚えるといいらしいぜ」

「あ、ありがとう」


 2人は一生懸命教えてくれる。以外といいやつらかも。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「気を付け、礼」

「よろしくお願いしまーす」

「はい、よろしくお願いします」


 白雪姫が小人の生徒に向かって授業を開始する。なかなかシュールな絵だ。通路側に、フェニックス、スパロー、ホーク、タイガーが立っている。ある程度使えるようになると、屋内では危ないので外での練習になるようである。大きい子供を中心に、半分くらいは外のようだ。


「えっと、今日は新しいお友達も増えましたので、基本のお話をしたいと思います」


 姫が手にもった杖を、黒板の上にさっと振ると、黒板の上の四角い部分に文字が現れる。


「できると思ったら できる」

「さんはい」

「できると思ったら できる」


 みんなで唱和した。ハルキも唱和する。


「できると思ったら、できるの。できると思ったら、目的までの三分の1くらいは終わってるわ」


 姫が杖を振ると、杖が小さなドラゴンに変化する。ドラゴンは羽ばたきながら、姫のまわりを1周し、姫の手に止まると、杖に戻る。


「さぁ、今のこれを見て、「できない」って思った子は、できないわ。でも、どうやってるんだろうとか、何の魔法だろうとか、自分もやりたいなと思った子は、できる可能性があるの。つまり!」


 姫は大きく手を振り上げる。


「人間、遺伝子の99%以上は一緒! 1日は平等に24時間! 食べてるものは同じ! さあ!」


 みんなと姫が指をまっすぐ伸ばして唱和が始まる。


「アイツにできて!」


 次に自分を指さす。


「自分にできないわけがない!」


 姫はにっこり笑う。横に控えているフェニックスがなぜかグッジョブをしている。


「さぁ、今日もがんばりましょう!」

「はーい」


 生徒たちがばらけ始める。実習を中心に、年長組がアドバイスをするという感じの授業形式なのだろうか。フェニックスは姫に近寄る。


「姫、今日もステキです!」

「ありがとう。では新人さんたちは、こちらへどうぞー」


 どうやら姫自ら教えてくれるらしい。そして、3人は板の前に立たされる。もっともハルキとモエミは見覚えのある板だ。


「えっと、この板はね、えっと……すごいじゃない!」


 ハルキは小石を浮かせた。


「えっと、じゃあ、ハルキ君はもう次、こっちだね」


 姫は違う箱をしめす。大きく「何秒維持できるかな」とメッセージが書いてある。


「これで、3秒いってみよう!」

「は、はい」


 ハルキはふと不安になって回りを見渡す。同じような板がたくさん置いてあるが、よく見ると、それぞれメッセージが書いてある。


「もうちょっと上まで挑戦しよう(20センチ)」

「1回魔法を込めると10秒間だけ浮きます」

「もうちょっと遠くのものを動かそう(50センチ先)」

「同時に2つのものを動かそう」


(うわぁー、板ごとに内容が違うんだ……)


 どうやら先は長そうである。

お読みいただきありがとうございます。

改稿しておりますが、

初心者ゆえの、細かい修正です。

内容を変更しているものではございません。

スペースを入れたりとか、タイトルをきちんとしたりとか・・・

温かい目でみていただければと思います。

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