後編 その3
5階のミニ動物園の動物は各種1匹ずつ。
「ペガサス、ユニコーン、ライオン、ジャガー、ゾウ、カバ・・・スズメ?」
「いや、ツバメじゃね?」
「・・・あの少し大きい鳥はキジ?」
「キジ・・・かなぁ」
何かが引っかかる。何か思いつきそうな気がしながら、思いつかない。
もどかしい気持ちを抱えながら奥の部屋に入ると、思ったより広い空間。
左手は窓、正面と右手の壁には、何か読めない文字が書かれた、いろいろな大きさの紙が張り付けられており、壁の手前のテーブルには、実験につかうのであろう、種々の機材が置かれている。もちろん、土を入れた大きな箱や、水の入った大きな水槽も置かれている。
まだ奥がある様子で、扉はないが、右手の奥の応接セットの脇に、扉サイズの出入口が壁面に穿たれている。
4人が部屋に入ると、その出入り口から姫が顔を出した。
今日の衣装は魔女・・・姫なのに、どちらかというと毒りんごをお姫様に食べさせるほうの衣装だ。でも、顔が美しいので違う意味でアンバランス。
きちんと覚えていないが姫は毎日違う服を着ている。
フェニックスさんのレパートリーには脱帽する。
「いらっしゃーい、まってたわよ」
応接セットに案内する姫。
「フェニックスさん・・・お茶を・・・誰かに頼んでもらえる?」
「はい、わかりました~」
姫の願いに、一度退出するフェニックス。
椅子を勧められ、残った3人は、姫と対峙して椅子に座る。
「えっと、先に、お話ししよっか。まずは、ちょっとお小言なんだけどね」
姫がかわいい顔をちょっと顰める。
「あなたたち、部屋で実験してるでしょ?」
「実験?」
顔を見合わせるモエミとハルキ。
「「ええ、まぁ」」
頷くしかない。
「えっと、あの、ドカンというか、爆発系はまだいいんだけど、何かすごい植物に悪いことしてない?」
「「・・・」」
思い当たることはあるが、どれのことをさしているのかが不明なモエミとハルキ。
答えようがない。
「わかんない? すごい臭い空気を出すやつ」
「ああ、はい」
一応、頷くモエミ。
「気づいていると思うけど、この城は生きてる木なの。生きている木にお願いして、木の中に住んでるの。それでね、あれは木が嫌がるのよ」
「は、はい・・・「すみません」」
再び顔を見合わせ、二人で謝るモエミとハルキ。
「まあね、一生懸命、工夫をしようとしているのは、いいことだと思うんだけど、部屋での実験は禁止ね」
「禁止・・・ですか」
思ったより厳しいことを言われたなと思うモエミ。
自分たちの部屋での実験はモエミとハルキの生命線。
モエミとハルキは新しい魔法を開発したわけではない。
火の魔法は何かを燃焼させるということを強制的に行う魔法。
その材料に水素を当てはめたことで爆発的な燃焼を起こしているだけであり、新しい魔法・・・つまり新しい魔方陣を作り上げたわけではない。
つまり、初歩の簡単な魔法を工夫によって、難しい魔法と同じような効果を生み出したに過ぎない。
「あ、やっぱり、実験したい?」
黙り込むモエミとハルキに尋ねる姫。
「えぇ、したいです」
きっぱりと顔を上げて肯定するモエミ。
「しかたないね、じゃ、ここを使っていいよ」
「「え?」」
何のことかわからないモエミとハルキに対し、驚いて質問を重ねるホーク。
「姫、この部屋は、立ち入り禁止では?」
「あ、奥の部屋はだめよ、この練習場のみ。ここならねぇ、えい!」
姫が窓に向かって何かの魔法を発動する。
壁に設けられたいくつもの窓が一斉に、外側に向かって倒れた。
ちょうど、ティーセットを持って入ってきたフェニックスがびっくりして、ティーセットを落としそうになる。
「あ、ごめーん」
「ひ、姫!」
「ごめん、ごめん、うふふ」
いたずらを成功させた子供のように笑うと、モエミとハルキに向き直る。
「私も、同じようなことをよくやっちゃうから、緊急換気機能をつけてるのよ!」
さぁ、褒めてといわんばかりの姫。
「あ、そ、そうなんですね」
相槌をうつことしかできないモエミに対して、ハルキは模範解答を出した。
「姫、すばらしいです」
嬉しそうにほほ笑む姫。ハルキは姉で鍛えられている。
一方、無言のホークの顔は「そこは褒める所か」と言っているようだった。
「えっと、それで、占める時はあのレバーをくるくると・・・」
「あ、俺がやります」
ホークが窓まで歩いていき、窓際の壁器設置されたレバーをくるくる回す。
よく見ると窓に紐が取りつけられており、窓がだんだんと閉まっていく。
「えっと、あーゆー感じで、元に戻すの」
フェニックスが紅茶を給仕し始める。
もちろん自分のも入れて5人分。
紅茶のいい香りが広がる。
「えっと、蜂蜜もってくるね」
姫は入ってはいけない奥の部屋に入ると、すぐに戻ってくる。
手には蜂蜜が入っていると思われる壺を持っている。
まっさきに、自分が蜂蜜を自分の紅茶に入れると、手についてしまった蜂蜜をペロッとなめながら、みんなにすすめる。
「蜂蜜どうぞぉ」
「はーい」
真っ先に手を出したのはフェニックスから蜂蜜を入れ始める。
まだフェニックスが蜂蜜を入れているのに、勝手にいただきますをして、紅茶をすすって話を続ける姫。
「えっと、あと、部屋なんだけど、とりあえず、モエミちゃんは、スパローが居た部屋に移ってね、ハルキくんは、男子側は開いてないので、とりあえず今の部屋のままということでね」
モエミとハルキは顔を見合わせるが、うなずくしかない。
「「はい」」
かわいらしくほほ笑むと話を続ける姫。
「えっと、それから、スパローがいなくなったので、困ってるの。あ、畑の話ね。それで、魔力量も多いし、ハルキくんは土魔法系が得意のようなので、2人で畑のお仕事をお願いします」
再び、顔を見合わせるモエミとハルキ。
「あの、何をしたらいいのか、よくわからないんですけど」
おずおずとモエミが答える。
「大丈夫だ。タイガーに聞けばよい」
ホークが答える。
つまり、話はできあがっているということだとモエミは認識する。
「わかりました。ハルキもいい?」
「はい」
二パッとほほ笑むのはフェニックス。
「よかった! では、姫、後は一番大事なことですね!」
「「・・・」」
いきなり空気が変わる。
姫は明後日の方向を向く。
「ね! ホーク!」
ホークは目をそらした。
フェニックスは目じりに若干の怒気を含むが、すぐに二パッと笑い、モエミとハルキを見ると、高らかに宣言した。
「モエミちゃんとハルキくんのニックネームを考えなきゃ!」
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