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ライラの苦悩 前編

本編とは全く関係ありませんが書いてしまいました

宜しくお願いします

高い宿だけあって、ドアにノッカーがきちんとついている。

 それも金属製のちょっとおしゃれなやつだ。

 左手でノッカーを使う。

 しばらくして応答がある。


「はい? どちら様?」

「ライラかい? 久しぶりだけどわかるかい? カーミラだよ」

「お師様!?」


 扉の向こうからでも、声が驚いているのがわかる。

 それだけですこし嬉しい気がする。

 ガチャリと鍵が開き、勢いよくドアが開く。


「お師様!」


 そのまま、私の顔を確認すると、胸の中に飛び込んでくる。


「こらこら、せめてドアを閉めてからにしないかね」

「あ、あ、ごめんなさい」


 すかさず、部屋の中に招き入れてくれる。

 そして再び抱き着いてくる。

 もう涙ぐんでいる。


「久しぶりだね、ライラ。辛い顔をしてるねぇ、大丈夫かい? あんまり根を詰めてはだめだよ」

「はい・・・」


 武骨なアタッチメントが付いている右手ではなく、左手で頭を撫でてやる。


「噂話では聞いてるが、アミカが戻ってこないんだって? あたしでよけりゃ、話を聞くよ」

「あ、ありがとうございます! あ、えっと、その前に、何か入れますね」

「いいよ、わたしがやろう、お土産に茶葉を買ってきたんだ」

「ほ、ほんとうですか? ありがとうございます」


 高い宿だけあって、簡単なキッチンが備え付けられている。

 もちろん、本来はメイドあたりに使わせるのだろうが。


「それで、アミカが帰ってこないんだって?」

「はい」


 アミカがぽつり、ぽつりと話し出した。

 送り出しの術式の時に、停止者の襲来があり、かなり離れたところに送り出してしまったような気がすること。

 一応、成功したようで、アミカから連絡があったこと。

 しかし1カ月後くらいから、急に連絡が取りづらくなったこと。

 1年後の召喚は失敗してしまったこと。

 召喚の術式を改良したが、2年後の召喚も失敗したこと。

 万全の備えを行った3年目の召喚も失敗したこと。

 そして、今回の4回目の召喚で失敗すれば、この儀式は終了してしまうということ。


「そうかい・・・空間魔法は詳しくないが、その、あれだ、手応え的にはどうなんだね? 失敗の原因はわかってるのかね?」

「・・・よくわかりません。でも、何かを呼び寄せてるような感じはあるんです。こう、なんていいますか、釣りをしていて、釣り針に魚がかかるような感じはあるんです」

「・・・おもしろい例えだねぇ、それで、その魚はどうなっちまうんだい」

「なんかこう・・・」


 ライラは真面目な顔をしながら、持っているスプーンを使って釣りをする仕草をする。


「途中で、糸が切れるというか、他の大きな魚に奪われるというか・・・すべては、あいつらが、あいつらさえ邪魔をしなければ・・・あいつら・・・」


 ポキっと持っていた木のスプーンを折ってしまうライラ。


「ライラ、蜂蜜を入れてあげよう」

「あ、す、すみません」


 そう言いながら、ばつが悪そうに、小声で木のスプーンを修復してから、紅茶をかき混ぜるライラ。


「そうかい。今回失敗したら終わりなんだってね。ま、失敗を前提に話をしたくはないが、カゲン王は知っているから、あたしもついてって、話くらいしてやろうか?」


 がばっと顔を上げるライラ。


「本当ですか? つ、ついてきてくれるだけで嬉しいです! でも、孤児院は大丈夫なんですか? あ、でも、なぜ王都に?」

「孤児院は大丈夫だよ。実はウェブレンとこの・・・あ、今はウェブレン候と呼ばないと失礼かな、ウェブレン候のところの、はねっかえり娘の護衛・・・というよりか拘束で、王都に来たんだ。来てみると、ライラが部屋に籠りっきりってきいたんで、心配になって、顔を見に来たんだ」

「ありがとうございます・・・レヴィちゃん、見つかったんですね・・・ニコラス君は?」

「行方不明のまんまだよ」

「そうですか・・・」

「レヴィの馬鹿も、自分を追いかけて家出したニコラスが行方不明になったもんで、意気消沈だよ。拘束っていったけど、かなり素直についてきたよ」

「そうなんですね・・・みんな、大変なんですね」


 沈んだ顔をするライラ。


「また、暗い顔をするなって、明後日だろ? シガ国には明日、入るのかい? あたしもついてってやるから、元気だしな! それにアミカのことだ。絶対に元気だって」

「そうですよね。アミカは元気しかとりえのない子ですものね」


 うふふと少し笑うライラ。


「あ、それで、ちょっとアドバイスが欲しいところがあって・・・お師様、私の魔法陣を見てもらっていいですか?」

「ああ、もちろんだとも」


 ライラの話や悩みを聞くカーミラ。


(大丈夫じゃないね。この子、このままじゃ、こわれちまうよ・・・)


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「だからさ、1年後のことを、今、決めなくてもいいじゃないのさ」

「カーミラ様、そう言わんでほしい、大体、この取り組みはヒジ国主導、それにヒジ国内での儀式。我が国もなんとも言えんのだ」


 ヒジ国特有の全面木でできた部屋の中での会話。

 木は磨き抜かれ、黒光りしている。

 魔法に造詣の深いカーミラは、その組み合わせそのものが、何らかの魔法的な意味を持っていることを理解するが、見ただけではどのような効果があるのか不明だ。

 少し実験してみたいが、今日の目的を果たすために、その欲望をぐっと我慢する。


「なんだよ、頼りにならないね。あんたの頼みだからレビィを連れ戻して来たのにさ」

「それについては大変感謝する。帰国後、追加の報酬も支払う」

「アミカは在学中に、レビィと仲良かったらしいよ。アミカがこのまま、異世界から帰ってこなかったら、レビィも・・・そうそう、そしてあんたの娘も悲しむんじゃない?」

「・・・そういわれても」


 思わぬ方向からの攻撃にたじろぐカゲン。

 

「9歳にして、大規模火炎魔法を改良した天才。そのときの基礎理論の術式の手伝いをしたって聞いたんだが、その魔法の師匠を、見殺しにしたとなると、こりゃぁ・・・」


 思わぬ効果的な攻撃方法を発見したカーミラがたたみかける。


「わ、わかった、それ以上、言うな。一応、かけあってみる」

「頼んだよ!」


 そこに楔帷子に胴当ての兵士が駆け寄ってくる。


「まもなく儀式開始です。よろしければ・・・」

「ああ、いこう。カーミラ様も同席されればよい」

「そうだね、獅子王もいるんだろ? 獅子王にもお願いしなきゃね」


 カーミラは、かつて勇者とともに活躍し、英雄と言われていた立場を、とことん利用する気でいた。


お読みいただきありがとうございます。

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