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その5 襲撃

「緊急出航する。魔法兵、風のコントロールに入れ、離岸時の水流援護が間に合わなくても出すぞ! 帆の方向を調整しろ!」


 ひげ面でそれらしい帽子を被った、いかにも海軍風の男が、金属のパイプの穴に向かって叫ぶ。伝声管とよばれるもので、遠方への連絡と拡声を兼ね備えた設備で、魔力を使用せずに船のあちらこちらに船長の声を届ける。

 近くの伝声菅から次々に報告がなされる。


「乗員、乗り込み完了です!」

「魔力炉、いつでも行けます!」

「よし! 出航だ! 接舷ロープをはずせ!」

「緊急出航カウントダウンを開始します!」


 そこに悲鳴じみた声が聞こえる。


「艦長! 目の前です!」

「何!」


 出航の大騒ぎを余所に、高速で波の上を滑るようにやってくる少女。

 モエミやハルキが見ればサーフィンのようだと言うだろう。


「いやっほぉ!」


 ゴーレムは減速せずに、港の入口の灯台砦に向かって水面から飛び出す。

 そして勢いそのまま、灯台砦の砦部分の最上部、つまり灯台が置かれている部分に、半ば突っ込む形で突入する。

 

 どっがーん!


 最上部のカタパルトや大型の石弓を弾き飛ばして、灯台にぶつかって、灯台の外壁にめりこむ。

 破壊を免れたカタパルトや大型の石弓は、いずれも後ろ方向を打つようにはできていない。

 偶然か意図的かどうか不明だが、いきなり大型兵器を無力化されるのが見て取れる。

 水際での抑止は失敗。


「船の備え付けの兵器での攻撃は禁止する! 砦の向こうは市街地だ! 船から降りろ! 白兵戦に移行する!」


 船長の厳しい口調で支持する一方、場違いな感想を述べている者もいた。


「あっちゃー、思ったより大きな街ねぇ、すぐわかると思ったんだけど。出ておいで」


 着地の時にゴーレムから飛び降りた少女は、遠巻きに兵士に囲まれつつも、ゴーレムに支持を出す。

 ゴーレムは、灯台の壁に入り込んだ体を移動させ、立ち上がる。

 臆病風に吹かれたわけではないのだろうが、いきなり現れた可憐な容姿の少女に、問答無用で切りかかることができない兵士。ちなみに兵士は何かの皮でできた胴の部分を覆うような鎧を装着し、その下に楔帷子を着ているという装備。

 幸いにもけが人はいるが、死亡した者はいない様子。

 左腰に下げている刀状の武器に手をかけつつ、丸腰の美少女の襲来に戸惑いを隠せない。

 相手が少女で、西洋風のかわいらしい服をきている――顔もかわいらしく、他国の貴族の娘と言われればそのまま通りそうな顔・姿――のもあるだろう。


「よいしょっと」


 ゴーレムの背中に、とてとてっと乗るとゴーレムに何やら支持を出す。

 するとゴーレムが、灯台に窓やでっぱりを利用して、灯台を登り始めた。


「と、止まれ!」


 かろうじて兵士の一人が声を出した。

 しかし、可憐な姿と裏腹に、流暢なシガ国語でとんでもない言葉が吐かれる。


「うっせんだよ! びびってんなら、すっこんでな! それともおとなしく儀式の場所を教えるっていうのかよ! どうせ、聞いても知らないんだろ? へっ!」

「あ、う・・・」


 かわいらしい唇から紡ぎだされる罵詈雑言に返す言葉をみつけられない兵士たち。


「何を手間取っている」

「た、大公!」


 黒をベースに金糸・銀糸刺繍が美しい、いかにも高級な着物を着た人物が現れて指示をだす。


「魔法兵! 手順丙にて状況開始」

「はい!」


 魔法は同じ対象に複数で影響させると、干渉して無効化されることがある。その為、複数人の魔法兵が同時に魔法を行使する場合、攻撃方法については手順が決めれられている。

 左右、あるいは上下。

 火魔法と氷魔法。

 物体移動系と遠距離投下系。

 干渉しないペアが、干渉しない組み合わせで次々に魔法の攻撃を行う。

 しかし、いかなる魔法の攻撃も、少女の能力か、ゴーレムの機能かは不明であるが、すべて弾き返される。

 少女は涼しい顔をしながら、ゴーレムの背中から、兵士を無視して、街並み見物を洒落込む。

 水面都市の沿岸部の港は、沿岸沿いの土地よりも高所。

 高所である港の灯台からは、都市が一望できる。


「えっとぉ、でかい木・・・、おぉ、でかいあれだね! 凄いわねぇ、あれなら次元の狭間まで根が伸びていそう」


 空間魔法の研究者、あるいは植物魔法の研究者の一部しか知らない仮説。

 年経た樹木は、その根をこの世界だけでなく、他の世界にも伸ばしているらしいというレポートが存在する。

 本来、一つであった世界が、何らかの原因で分かれていった平行世界。

 平行世界に分かれた生命の魂は、やがてどちらかの世界における輪廻転生の軸にのるが、平行世界に分かれる前からずっと存在している長寿の樹木のみは、その両方において命を存在させ続けることにより、結果として、2つの世界をつないでいるのではないか。

 空間魔法の研究者と植物魔法の研究者が、別々に導き出した結論が奇しくも一致していた。

 少女のさりげない一言が、魔法研究の秘中の秘を、なぜか言い当てている危険性に、この場にいる兵士たちは気づかない。


「効かぬか。兵は抜刀にて待機、ウガチを持て!」

「はい、ここに!」


 大公が指示すると、後ろに控えていた兵が、かなり長い刀をすかさず差しだす。


「よし、儂が出る。魔法兵、タイミングを合わせよ」

「はい!」


 長い刀を抜き放つ大公。

 鞘を刀を持ってきた兵に渡すと、静かに構えかと思うと、次の瞬間、地面をけり、一気に灯台の上部に陣取っていたゴーレムに迫る。

 しかし、ほぼ同時に、ゴーレムも灯台から市街地の方向にジャンプしていた。


「な!」


 大公が目標のゴーレムを逃し、一度、半分破壊された灯台の上部に足をつけると、ゴーレムと少女を目で追う。ゴーレムと少女は倉庫の屋根を足場にし、エレベーター塔を経由して、一気に城の方面、つまり、儀式に行われている千年楠に、そのまま上方から突入しようとしていた。


「きゃはははは!」

「まずい!」


 振り向くと、下の兵に向かって大声で叫ぶ。


「城に連絡! 千年楠の周りに兵を展開! お前たちも迎え! 儂もこのまま向かう!」


 キーン!

 どどーん!


 高音が響き、一瞬、千年楠の周辺が強く輝く。

 防御結界が作動したようだ。


「ゴーレムごときではあの結界は破壊できぬ。しかし、これ以上、好きにさせんぞ!」


 大公が灯台を蹴って飛び出した。

明日、更新できるかな・・・

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