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ハルキ、入れ替え戦い前夜

「どぱん」


 ウルフが短い詠唱をする。

 おそらくは、水を集め、目標を設定し、そこに高速で射出するまでの魔法陣を構築するためのキーワードとして選択した言葉。

 高速で飛来する小さな水の塊。

 小さいとはいえ、馬鹿にしてはいけない。

 水は結構、重い。

 空気は圧縮しないと効果が薄い。火は火種が必要。土は適切な石などが必要。

 そういった中で、比較的お手軽に集めることができ、なおかつ、重さがあることから、高速でぶつけられると、かなり痛い。

 しかしながら、なぜか土の鎧とは相性が悪く、水で土の鎧を壊すのは困難。

 それが、ウルフがタイガーを倒せない理由。

 そして、ウルフが4階組最弱と言われる理由。

 土の鎧は人気がある。

 中級者の男子は、ほとんどみんな使える。

 中級者から見れば、倒せそうで倒せない。

 それがウルフのポジション。


「どぱん」


 ハルキは大きく避けずに、姿勢を低くして避け、接近戦に持ち込む。

 ハルキの攻撃は避けられ、距離を取られる。

 その間も指鉄砲でターゲットされた、水鉄砲は飛んでくる。


「どぱん」


 いくら土の鎧で防ぎやすいといっても、何発も食らうと、鎧も崩れる。

 鎧の再構築。


「どぱん」


 右からの接近を試す。


「どぱん」


 右からの接近を牽制に、背後に周りこもうとする。


「どぱん」


 姿勢を低く保ちつつ、左右にフェイントを入れつつ、正面突破を試す。


「どぱん」


 何度やっても、接近まではできるが、決定打にはつながらない。


「うーん、やっぱり勝てない」


 ハルキが目を開ける。

 目の前で姉が、うつぶせになって足をぶらぶらさせながら、自分で作った魔法陣のノートを見ている。


「ねぇ、何かいい考えはない?」


 眉間に皺を寄せて、ハルキを見るモエミ。


「は? そんなの自分で考えなさいよ」

「・・・だって、何回やっても、イメージの中では勝てないんだもん」

「・・・イメージはできてるのね」


 モエミは目を細めると、やおら立ち上がる。


「あなたの勝ちパターンは?」

「腹に一発、ドカン」


 モエミは腕を組む。


「接近して、腹にドカン?」

「うん、でも、イメージではいつも避けられる」

「うーん。足を止めるとかは? 『泥沼』は?」

「水使いに、水系を含む魔法はまずい気がする」

「なるほど、試合会場付近の水に対する支配権はウルフに取られているのが前提ね・・・ま、不確定要素は排除したほうがいいものね」


 モエミは考え込む。


「あ! ウサギさんたちにお願いしたら?」

「・・・そこまでのコミュニケーションはできてないよ」

「そう? 仲良さそうだったよ?」

「それとこれとは・・・」

「じゃぁ! あれよあれ! 今日、マナトがやったやつは!」

「マナト・・・ああ、ロケットパンチね」

「あれって、接近戦だと初見殺しじゃない?」

「そうだけど・・・」

「ん? 飛ばし方がわかないかな?」

「いや・・・かっこわるい」

「かっこわるい?」


 モエミは怪訝な顔。


「うん。第一、せっかく作った拳を飛ばすとかダメじゃね? かわされたら終わりじゃん」

「ああ、まぁね」


(腕が飛んでいくとか、昔のロボットアニメじゃあるまいし。回収はどうするんだろ?)


 感覚的にロケットパンチが受け入れられないハルキ。


 ドンドン!


 そこに本日、二度目のドアへの殴打音。


(うわ・・・きっと、まただよね?)


 ハルキがそう思いながら、姉を見ると、姉と目が合う。

 そして、同じことを考えているのがわかる。

 一瞬の沈黙。


「はーい」


 姉が返事をする。


「居留守を使える状況じゃないしね」


 小さい声で悪態をつくと、モエミはドアへ行く数歩の間に感情と表情を切り替える。


(切り替え早!)


 モエミがドアを開けると、思ったとおりピーコックだった。


「はい。お土産よ」


 ガチャン!


 鉄製の棒状の杭のようなもの束を入口に置いたのはウルフとクロウ。


「あー、重かった。まったく人使いがあらいっすよ、姉さん」

「うっさいわね。じゃぁ、おやすみ。明日は楽しみにしておくわ!」


 立ち去る3人。


「まるでド○ンジョ様ね」


 振り返るピーコック。


「え? 何?」

「いえいえ、何でもございません。お休みなさいませ」


 本当に立ち去る3人。

 ため息をつく姉。


「危ない、危ない。本音がでちゃった」

「でさ、これどうするの?」

「うーん、せっかくくれるんだからさ、もらっちゃおうよ」

「そうだね」


 二人で部屋の中に金属杭を運び込む。


「これで鎧作ったら?」


 姉が提案する。


「うーん。重くないかなぁ」


 頭の中でシミレーションするハルキ。


「やっぱ、鎧を持ち込むわけにはいかないっしょ。そうすると、その場で生成? うーん、魔力が・・・」

「難しいか・・・」


 姉が一度黙るが話がそれる。


「そういえば、ハルキの得意魔法って結局何?」

「さぁ、ホークさんは、もしかしたら魔力量が多いのがそうかもしれないって言われた」

「えぇぇぇぇぇ!」


 突然、崩れ落ちるモエミ。


「あ、危ないよ」


 一緒に持っている金属杭がバラバラになりかける。


「それって、もしかして私もってこと? なんでチートをくれないのよ。やっぱり、神様に会ってもらわないとダメってこと?」


(うーん。いつもながら、本当にポイントがわからない)


「チートの代名詞の空間魔法とか、あと闇魔法とかもかっこいいし!」


(もう、ほおっておこう)


 金属杭を黙々と運びながら考えるハルキ。


「影魔法とかも、ちょっとあこがれちゃうよね」


(ロケットパンチみたいに、使い捨てじゃないく・・・やっぱり剣!? って、俺は剣使えないんだった)


 金属杭を次々に運ぶ。


「回復魔法無双も楽しそうだけど、応急手当クラスしかないって言ってたし」


(土の鎧の表面にコーティングする? あ、でも複雑になるから時間がかかるか・・・防御で使うのは、なしの方向かな)


「精霊魔法とかも、語感はかっこいいけどね」


(なんとか、攻撃で活用できないかな。金属を使いたい)


 最後の金属杭を運びいれてドアを閉める。

 モエミが真剣な顔をして話しかけてくる。


「鑑定もいいけど、この世界では使えない系よね!」


(聞こえない、聞こえない)


 二人の集めた情報では、4階組の得意魔法は次のとおり。

 男子は、ホークはオールマイティになんでも魔法をこなす。みんなは言わないが、魔法陣の構築が早いのがおそらく特徴。タイガーは土、ベアは物質の形状変化、ロウは火、ルフは水。

 女子は、フェニックスは火、オウルが振動、スワンが物質の形態変化、ピーコックが生物の変化、スパローが土。ただし、フェニックスは本当は物質の形状変化が得意魔法ではないかという噂がある。

 得意魔法は伸びがいいらしい。

 とりあえず、一生懸命、魔法を覚えているが、好む魔法と得意魔法は違うらしい。


「姉ちゃん、砂魔法が得意なんじゃね?」

「ハルキまでそう思うんだったら、明日は勝ちね」

「・・・俺は?」

「・・・わかったわよ・・・」


 前日準備は続く。


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