表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/221

モエミ、決勝戦

 ヒツジと犬の着ぐるみを着た少女が対峙している。

 ヒツジの子は真剣な眼差しだが、犬の子は薄ら笑いを口元に張り付けている。

 さらには、ヒツジの姿勢の良さと比較して、犬の子は姿勢――というかむしろ態度が悪い。

 オウルが、いつものきりっとした表情でヒツジの着ぐるみを着たモエミと犬の着ぐるみを着たヒナの間に立つ。


「準備はいい?」

「はい」

「きゃはははは、やっちゃうよぉ!」


 オウルが少しイラッとした顔をしたのをモエミは見逃さない。

 伊達に仲が良くなっていない。

 オウルの変化は一瞬。

 すぐにもとの表情に戻り、フェニックスを見やる。

 アイコンタクト。


「それでははじめ!」

「よろしくお願いします」

「きゃは、よろしくお願いされちゃいまーす」


 モエミが一礼をするのに対し、ふざけた受け答えを返したヒナは、足を左右に広げ、重心を低くし、いつでも左右に動ける姿勢をとる。

 言動がふざけているので気づきにくいが、体さばきは非常にうまい。

 ゲーム的な発想でいえば、魔法使いではなく、シーフ等の職業が向いているとも思える。

 もっとも、モエミとしては同じパーティーになるのはちょっと嫌だった。

 モエミはいつも通り、周辺空気を魔法の制御下に入れる。


(手始めに、おっと!)


 モエミが得意の砂交じりの風を送ろうとすると、ヒナが足元の石ころを拾って投げてくる。

 モエミは避けるが、馬鹿にできないスピード。

 あたればかなり痛い。


「きゃはははは、よけたねぇ」


 ザワザワする観客。


「石投げたぞ」

「あれって、あり?」

「魔法の戦いじゃないの?」


 観客からの声が聞こえる。


(本当、これじゃ、ケンカね)


 手ごろな石を拾うと、再度、投げてくるヒナ。

 スピードが尋常ではない。

 これも何かの魔法か。

 気を取られていると、本人も突っ込んでくる。


(来た!)


『砂塵』


 石をかわしつつ、砂交じりの突風。


「きゃはは、同じ手は食わないわよ!」


 北壁での戦いで、砂の目つぶしを受けた経験から、手を読まれる。

 あっさり接近をゆるすモエミ。


『ライトニング』


 ヒナの右手から電気が放たれるが、モエミまで届かず、地面に吸い込まれる。


「あれ!?」


『飛礫』


 モエミがミコト戦で見せた大きめの石をぶつける魔法を使う。

 ヒナは、あっさり横に避けて、再び唱える。


『ライトニング』


 再びヒナの右手から電気が放たれるが、モエミまで届かず、地面に吸い込まれる。


「なんで!?」


『飛礫』


 再びヒナは、あっさり横に避け、三度、唱える。


『ライトニング』


 三度、ヒナの右手から電気が放たれるが、モエミまで届かず、地面に吸い込まれる。


「おおっと、ヒナ選手、調子が悪いのか、モエミ選手まで電撃が届きません!」


 フェニックスの放送が聞こえる。

 近距離での電撃を放とうと距離を縮めようとするヒナ。

 距離を取ろうとするモエミ。

 しかし何度、近寄っても電撃はモエミニ届かない。

 ヒナは若干、パニック。

 モエミは見逃さない。


『砂縛』


 ヒナの周辺に舞い踊る砂が、蛇のように集まり、ヒナの両腕にからまる。


「あ、しまっ、また!」


 ヒナにとっては、これも2回目に経験する魔法。

 北の壁の前の練習試合で、モエミにかけられた魔法。

 両腕に厚くからみついた砂は、ヒナの動きを鈍くさせる。


『ライトニング』


 重くなった腕を振り上げ、唱えるが、モエミに電撃は届かない。


『砂縛』


 今度は足に絡みつく。

 動きを奪う。


『ライトニング』


『砂縛』


 片方の攻撃は地面に吸い込まれ、片方の拘束は着実に動きを奪う。

 一方的な試合になる。

 ヒナが砂の人形と化したところで、オウルが試合終了を宣言した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「今日はラッキーだったね、ヒナが調子悪かったみたいで」

「調子が悪いですか……」


 恒例となった林の中での魔法の特訓タイム。

 モエミ的な解釈によれば科学の実験タイム。


「あ、ごめん、実力ってことよね。ごめんね」

「あ、いや、そうじゃなくてですね……」

「何?」


 怪訝な顔をするフェニックス。

 喜怒哀楽がはっきりしている。

 モエミとしては大変付き合いやすい。


「もしかしたらって思うことがあって」

「もしかしたら? 電気を曲げる魔法を作ったとか?」

「あ、えっと、見てもらったほうがいいかもです。草原まで来てもらっていいですか」

「うん、いいけど」


 いつもは城から見えにくい、木の陰で練習しているが、草原ステージのいつも試合が行われている場所までお散歩。

 そして。


「え? これを地面の中に埋めてたの?」

「さぁ、私はしりません。埋まってましたよ。これが避雷針か何かの役割をしたんじゃないですか?」


 モエミが見せたのは90センチくらいの棒状の金属。


「あなたが埋めたんじゃないの?」

「さぁ、私は知りません」

「これが埋まってると、電撃を使う子はみんな影響があるのかしら」

「さぁ? もしかしてアースの役割をしたのかなって思っただけです。もしかしたら、昔から埋まってたのかもしれませんし、まあ、今日のヒナの不調の原因じゃないかもしれませんけど」


 あくまでとぼけるモエミ。


「まぁ、いいわ。でも、これって草原ステージ全体に埋まってるってこと?」

「さぁ?」

「本当にあなたじゃないのね?」

「もちろんです」


 満面の笑みのモエミ。


「どうしよう。確認しないとだめかな」

「さぁ、ステージもサイコロで決まります。水系魔法が苦手な人が、水場ステージになることもあります。雷系魔法が得意な人のために、全ステージ、避雷針が埋まっているかをみんなで確認すると、それはそれで贔屓だってことになりませんか?」

「それはそうねぇ・・・」


 フェニックスは天を仰ぐ。


「特訓どころじゃないわねぇ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「えっと、明日の入れ替え戦に着ていく服が欲しいってこと?」

「はい。あの、今日の明日なので、作ってほしいってわけではないんですけど、もしあればと思って」

「で、どんなの?」


 スワンの部屋。

 モエミは友達の部屋には何度も入ったことがあるが、中学生の子どもではなく、大人の香りがする部屋。

 ちょっとドキドキする。


「え? まぁ、それならないこともないけど、あなたたち、何をする気?」


 モエミが要求を伝えるとおどろくスワン。


「えへへへ、あと、できればなんですけ」

「・・・言ってごらんなさい」

「愛がほしいです!」

「愛?」

「はい、愛です!」


 沈黙が支配する。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「でさ、俺にこれを着ろって?」

「うん!」


 満面の笑みでハルキに微笑みかけるモエミ。

 なぜかフード付きの服を着ている。


「着ぐるみがあるじゃん」

「あれって、安全のためだから、無理に着なくていいんだって。これだって、スワンさんがそれなりに作ってるから、魔法に対しては丈夫なんだよ」

「・・・まぁ、確かに怪獣の着ぐるみより、こっちのほうがまだましかぁ、でも黒かぁ、赤のほうがよかったな」

「あ、ごめん、赤は私が着るの」

「え、明日は3倍速く動くの?」

「・・・いいじゃん、黒ウサギとお揃いだし」

「・・・そっか、師匠とお揃いか」


 まんざらでもない顔になるハルキ。


「ところで……」


 ガンガンとドアが叩かれる。ノックではない。明らかに殴っている。


「はい? どうぞ、開いてますよ」


 なぜか薄笑いで返事をするモエミ。

 まるで、誰かが来るのを予見していたようだ。

 ドアが勢いよく開く。

 ピーコックだ。

 手に持っているものを放り出す。

 ガシャンと大きな音がでる。


「あんた、こんなことしていいと思ってるの?」

「えっと、何のことでしょう?」


 本当に困った顔をするモエミ。


「こんなもん埋めても、無駄よ。全部、引っこ抜いたから!」

「それはどこのステージの話です?」

「え? 草原ステージだけど」

「そうですか。草原ステージにはそんなものが埋まったんですね。そうですか。他のステージには埋まってないといいですね」

「!? あなたもしかして……」

「私はよくわかりませんが、明日の試合はよろしくお願いします」

「あなたがやったんでしょ! 場所を教えなさい!」

「いえ、私は何のことかわかりません。それとも何か証拠でもあるんですか?」


 舌打ちをして、後ろを振り向くピーコック。


「ちょっと、他のステージも確認するよ! 手伝いな!」

「「「えー」」」


 ピーコックの後ろから不満の声が上がる。


「俺っち、土魔法苦手なのに勘弁だぜ!」

「土魔法というより、捜すのが困難では?」

「きゃっはは、無理無理無理!」

「もう、魔力が・・・」


 モエミは扉を閉める。


「さ、あっちが勝手に消耗してくれる間に、明日の準備をしようか?」

「・・・姉ちゃん、悪いね・・・」

「ん? 何のこと?」


 天使の微笑み。


「避雷針を地面に埋めても、効果がないって教えてあげればいいのに」

「いやいや、簡単に学んだことはすぐに忘れるけど、自ら気づいたことはきちんと覚えているものよ。ここは心を鬼にするのよ!」

「意味がわからない」


 避雷針を埋めた後、実験したが、避雷針には意味がないことは実証済みだった。全部埋めずにある程度、地面から飛び出させておけば効果があるが、全部埋めると意味がなかった。埋め込みができるすべてのステージに埋めた後に実験を行い、気づいたので、昨夜は先に実験をやっておくべきだと後悔した二人だが、モエミの作戦で見事に違う方法で、相手を消耗させることになった。


「でも、なんで、姉ちゃんだけは雷が避けるんだろ? 雷にも男にも人気ないってこと?」

「は!?」


 般若顕現。


「ごめんごめん、で、これ、どうするの?」


 必死で話を転換させるモエミ。


「早速利用させてもらうのよ!」

「え~、また何か作らさせられるの?」

「またって、何よ! ハルキも有効活用すればいいじゃない」

「有効活用か・・・」


 ピーコックが置いていった鉄の棒の1本を手に取る。


「これで剣とか作ったらかっこいいかもね」

「剣? いいけど、魔法の戦いなのに武器の持ち込みOKなの?」

「そうかぁ、でもロケット・パンチもOKだったよ!」

「うーん、明確なルールっていうのはなさそうだけど、その場で魔法で作っちゃえばOKかな?」


 モエミもハルキも思案顔。


「じゃ、鉄を持ち込んで、剣を作ったら?」

「あ、それ、ハルナが土の薙刀を作ってたけどOKだったね」

「そうか! いける?!」

「でも……」


 モエミが眉を寄せる。


「ハルキ、剣、使える?」

「あ……無理だ」


 顔を見合わせる2人。


「ま、とりあえず考えましょう。先に私の作ってよ」

「……了解」


 夜はまだ終わらない。

 明日は入れ替え戦。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 その頃、森林ステージ。


「あ、こっちにもあったぜ! 誰か引っこ抜いてくれ!」

「自分でやりなさいよ! 私も土魔法苦手なの!」

「かしなさい。エイッと!」

「「さすがピーコックさん!」」


 そこに走ってくる人影。


「きゃはは、岩場ステージにも打ち込まれてるけど、どうする?」

「「「はぁ・・・」」」


 再び走ってくる人影。


「砂場ステージで発見した。かなりの数を確認している。状況を開始していいが、明日の入れ替え戦は午前中から開始だ。これ以上の作業は明日に差し障ると思慮するが?」


 雷系を使うのはピーコックのみ。

 クロウとウルフは試合の可能性があるが、雷系は使用しない。

 暗い中で視線がピーコックに集まるのがわかる。


「あぁぁぁぁ! もう! ちかっぱいむかつく! 絶対、くらす!」

「……姐さん、方言でてるぜ……」


忙しくて更新が遅れております

申し訳ありません

今月いっぱいで、前編終了予定です

お気に入りいただければブクマや評価をいただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ