ハルキ、決勝戦
「ぁあぁぁぁ・・・・・・もふもふ・・・・・・ここは天国?」
黒ウサギたちは順番にもふもふされている。
大変気持ちよさそうだ。
「姉ちゃん、帰るよ!」
「もふりんこ?」
何度言っても聞かない姉に、仁王立ちで文句をいうハルキ。
ちなみに仁王立ちだが、ちびっ子なので迫力はない。
「もうすぐ暗くなってくるよ!」
「もふもふ、も、もふもふ?」
「明日、決勝だよ!」
「・・・・・・わかったわよ! じゃぁね、モフモフ達」
姉が黒ウサギたちを開放する。
黒ウサギも気持ちよかったのか、名残り惜しそうだ。
どうやって来たのかわからない姉は、3匹との練習が終わった頃に現れ、素早く黒ウサギを捉えると、もふもふしていた。
意味がわからない。
あのウサギを捕まえる姉の身体能力。
黒ウサギも疲れていたのだろうか。
黒ウサギを引き離して、帰路に着くが、今度は柿の木を見つける。
「ハルキ! 柿だよ! おいしそうだよ!」
「知ってるって」
「え~、ちょっと持って帰ろうよ・・・・・・」
ここで、却下すると、多分、寝るまで言われる。
不本意ながら同意し、柿を採取する。
「さっそく、帰って食べようね!」
ご機嫌になった姉と帰路に着くと、姉がまた何かを見つける。
「あ! ハルキ! あれって、タラの芽じゃない?」
「そうだっけ?」
「こども自然冒険キャンプで食べたじゃん!」
「・・・・・・そういう気もする」
「天ぷらにしてもらおうよ!」
採取を始めるモエミ。
仕方なく付き合うハルキ。
「でも、暗くなるよ」
「ちょっとだけよ、ちょっと・・・・・・あ、これ!」
「今度は何だよ」
「このハートの葉っぱ、自然薯じゃない?」
「よく知ってるね?」
「テレビでやってたじゃん!」
「・・・・・・それっぽいね、でも、掘るの大変だよ? 道具もないし・・・・・・」
ハルキはとても嫌な予感がした。
腰に手を当てて不敵に笑うモエミ。
「ふっふっふ! 私達には、土魔法がある!」
「え~、マジ!?」
「さて、どれくらいの深さかな? さぁ、ハルキ、頼んだわよ!」
(決勝の前の日に何してるんだろう)
ハルキの苦労もあり、めずらしい食材は、特にスワンとベアに喜ばれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「で、このガラクタの山をどうしろと?」
「明日のマナトってさぁ、電撃使いでしょ? 一緒に対策しようよ」
「それはわかったんだけど・・・・・・」
ハルキとモエミは落下物回収施設横のガラクタ置き場。
持ちかえった食材をネタに、自由にガラクタを漁る権利を得ていた。
さすが姉。
何も考えていないわけではなかった。
もう薄暗い。
部屋から蓄光球を持ち出して光源にしている。
「あのね、銅を捜して・・・・・・」
「銅と言われても・・・・・・そういえば、電線の中身って銅じゃなかった?」
「・・・・・・多分そうだけど、量がいるのよ。電線の中身を一々出す? カッターか何かで皮を剥くの?」
「そうですか・・・・・・」
とりあえず、金属風なものを集める二人。
「それでどうするの?」
「そうだね、そろそろ作業分担しようか、この魔法使える? 対象を金属にセット」
モエミが魔法陣を差し出す。
「う、うん・・・・・・うわ、結構、魔力食うよ、これ!」
金属の形を変える魔法。
「やるじゃん、私、何となく苦手なのよね。土や砂は楽勝なんだけど、金属は勝手が違うのよ」
「へぇ、俺、大丈夫かも、魔力は食うけどさ」
「じゃ、私、金属探すね、ハルキは形を変えて」
「ああ、いいよ」
金属を集めて、金属の形を変える。
プラモデル大好き。
工作大好き。
土魔法でも、何かの形を作るのが大好き。
(あ、俺、これ、好きかも・・・・・・)
モエミが金属系の何かを捜してくるスピードより、ハルキの生成スピードが速い。
手持無沙汰なハルキは、魔法陣を改変して、電線の中身だけ取り出す魔法を工夫する。
思ったより、簡単にできてしまう。
(おぉ、楽しい)
金属でできた大きな棚を、よいしょ、よいしょと持ってきたモエミがハルキの魔法に気づく。
「あ、ハルキ、やるねぇ。・・・・・・こういう形できる?」
「ちょっと待って・・・・・・こんな感じ?」
「やるじゃん。長さがこれくらいで・・・・・・」
夜の色が濃くなっていく。
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■木の掲示板■
だんし ┌──┴──┐
○───┴──× │
×──┴──○ │ │
×─┴○ ○─┴× │ │
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│カ││ユ││ハ││ジ││ユ││マ│
│ ││ ││ル││ョ││|││ナ│
│ズ││ウ││キ││|││シ││ト│
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じょし ┌──┴──┐
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×──┴──○ │ │
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│ル││エ││ハ││モ││ミ││ヒ│
│ ││リ││ル││エ││コ││ │
│ナ││カ││ナ││ミ││ト││ナ│
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<しかいかいじょう>
みず ぬま ○くさ
すな いわ もり
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「さて、本日は、4階への挑戦者を選ぶ決勝戦です。草原ステージからお伝えします。今日はどっち? あ、えっと、今日は男子からです。とうとうここまで勝ち残ったハルキ選手とマナト選手の対戦です。ホークさん、どう見ます?」
「うむ、ハルキの破壊力は見事だった。しかしマナトは一撃必殺の電撃使い。いずれも近接戦闘向き。接近戦での勝負になろう。決着は一瞬かもしれん」
今日もフェニックスの司会に、ホークの解説。
「なるほど。目が離せない勝負になりそうですね。まもなく試合開始です」
観客席から出発する。
みんなが声をかけてくれるが、今一、耳に入らない。
マナトは言われるととても嫌がるが、ヒナとよく似た戦い方をする。
持ち前の動体視力で、魔法を避けながら、近接してからの電撃。
2人とも射程距離が短い雷系魔法なので、中長距離からの攻撃方法に乏しく、距離を取られると手が出なくなるとことも同じ。
違いと言えば、電撃の規模と、土系魔法併用の有無。
土系魔法が苦手なことから、相手の攻撃を完全に避ける傾向のあるヒナに対し、マナトは土系魔法を身にまとい、若干、被弾しながらも前に進むところ。
現時点では、ハルキにも中長距離の攻撃方法はない。
つまり接近戦。
射程が短いといっても、ハルキのパンチやキックより、マナトの雷系魔法の射程は長い。
(さて)
試合が行われるあたりで立ち止まる。
マナトもすぐ横を歩いていたのだが、もちろん会話はない。
お互いにとって、大事な試合。
「おい、ハルキ」
「はい、なんでしょう」
ハルキの丁寧な答えに、思わず少し笑ってしますマナト。
「手加減しないぞ」
「もちろんです」
全員が魔法使いの先輩である、この世界。
相手にとって不足はない。
「そろそろ始めるぞ」
タイガーが伝える。
「「よろしくお願いします」」
静かな立ち上がり。
ハルキは土系魔法で防具を作る。
マナトは土系魔法でハルキより簡単な上半身と腕を中心とした防具を作ると、違う魔法を行使し始める。
空気が震えるような感覚。
マナトは帯電した。
「いくぞ」
先に動いたのはマナト。
体に電気を帯電させつつ、ハルキに迫る。
(うわっ、やっぱ怖え!)
何度か練習の時に見たが、迫力がある。
モエミ曰く、ヒナは、それと分るほど帯電しないらしい。
ハルキは逃げる。
「おっと、ハルキ選手、逃げました」
フェニックスがマイクでしゃべると、野次が飛ぶ。
「こら~、逃げんなぁ」
「試合しろ~」
「かっこわりぃぞぉ~」
ハルキの急な攻勢への転換。
思わず魔法を発動するマナト。
バリバリっと空気が震える。
読み切ったかのように避けるハルキ。
素早く、帯電しなおすマナト。
(やっぱりそうか)
マナトの電撃の魔法は3段階。
帯電、目標の設定、発動。
電撃の魔法はコントロールが難しい。
そのための電撃誘導のための諸段階。
対戦するとわかる。
帯電しながら、目標設定のための魔力と思われるものが放たれる。
イメージとしては、プラス極をどこかに設置して、自分がマイナス極になり、電気を流すという感じ。
一生懸命、考えたのだろう。
しかしながら、魔力を見ることができる相手には悪手。
目標設定のための魔力と思われるものが飛んでくる。
避ける。
バリバリっと空気が震える。
「おっと、ハルキ選手! 神業のように避けます!」
フェニックスの声が聞こえる。
(なるほど、4階組には勝てないわけだ)
ハルキにとっては、やりたいことが丸見え。
昨日の姉との下準備に頼るまでもない。
さらに幾たびかの交差。
(さて、そろそろ・・・・・・!?)
マナトが電気を纏わない。
(魔力切れ? チャンス!)
ハルキは飛び込み、右手のフェイントから、左手のボディに繋げようとする。
カウンター気味にパンチを合わせてくるマナト。
左手のフェイントを中断し、1度、下がろうとするハルキ。
そこにマナトの手だけ・・・・・・砂魔法の鎧の手だけが飛んでくる。
(!? ロケット・パンチ?)
思わず、右手を前に出すハルキ。
前に出すだけではとても勢いを殺せない威力。
しかし、なぜか、ロケット・パンチは砂にかえる。
「は? うそ!? ふげじっ!」
驚愕したマナトに対し、冷静に左腕をマナトの腹に突きさすハルキ。
「ブレイク! ブレイク! ・・・・・・勝者ハルキ!」
タイガーが宣言した。




