ハルキ、3試合目
林の中で3匹と1人の真剣な演舞。
巧みに舞い、躱し、すり抜ける。
そしてカウンター。
「はっ!」
カウンターのはずのパンチを足でいなされ、その勢いで違う方向へと飛んでいく。
もちろん黒ウサギはノーダメージ。
「ちっ!」
再び、舞い、躱し、すり抜ける。
そしてカウンター。
「くっ!」
また、同じようにあしらわれる。
見えるようになった。
躱せるようになった。
でも当たらない。
当てられない。
決着がつかない。
「はぁ、はぁ、はぁ」
肩で息をする。
3匹も限界のようだ。
構えを解く。
きちんと、一礼をする。
そして、ハルキはニンジンを4本とり出して、3匹と並んでたべる。
「うーん」
拳を見つめる。
「ユウの防御は紙だったし、カウンターだからあんなに吹っ飛んだのかな?」
3匹の黒ウサギを見つめる。
「ウサギ師匠に対しては、決定力不足だよな」
黒ウサギたちはニンジンを食べて満足そうだ。
「何か方法を考えないと……今日のは、単なるラッキーパンチ……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ハルキが部屋に入ると、姉が水槽の横で何か実験をしていた。
「姉ちゃん、何してるの」
「あ、ハルキ、お帰り。ちょっと、これもって」
「はい」
「違う、こっちが右手、こっちが左手」
右手と左手に針金のようなものを持たされる。
「じゃ、電気流してみて!」
「電気って、俺、電池じゃないし……」
「電気の魔法よ! 習ったでしょ!」
「あ、えっと……」
「もう!」
モエミはパラパラとノートをめくり、魔法陣の一つを指し示す。
「これ!」
「ああ、これね」
「そ、そ、右手がプラスで、左手がマイナスって感じで」
「いきなりよくわかんないけど、やればいいの?」
「そう、やってみて!」
針金の先をたどると水槽の中へ。
「早く!」
「わかったよ……」
何も起こらない。
「ちゃんと魔法使ってる?」
「使ってるよ」
「もっと強いの!」
「わかったよ……」
水槽の中に入っている金属の周囲から泡が発生する。
「お、出た出たいい感じ、そのままをそのまま」
水の中にビーカーを入れ、発生した気体をキャッチするモエミ。
「確か、こっちが……」
とても変なにおいが充満する。
「姉ちゃん……」
「……何? ちょっと待ってよ、気体を集めないと」
「ちょ、ちょっと待ってって、臭くない?」
「臭い? ……うわ、臭い!」
「うげっ! これ水じゃないの?」
「え!? 食塩水だけど違ったかな?」
「臭いよ! これ! 何か違うんじゃない?」
魔法で同時に複数の窓を開けるハルキ。
すぐさま魔法で空気を入れ替えるモエミ。
「何? 何の実験? バカなの? 死ぬの?」
「あんたにそのセリフを言われたくないわよ! えー、どうしよう……どこが違ったかな」
勝利をつかむための準備は続く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、今日は岩場ステージからお送りします。本日の最初の試合、今日は男子からです。昨日、勝利した選手である、ハルキ選手とユーシ選手の対戦です。ホークさん、どう見ます?」
「うむ、ハルキは目がいい。昨日は相性がよくて勝った。しかしユーシは男子に人気の土魔法。真っ向なら、やはりユーシに一日の長があると見る。ユーシの勝利だろう」
今日もフェニックスの司会に、ホークの解説。
「なるほど。今日は当たるといいですね、ホークさん。さぁ、まもなく試合開始です」
ユーシと対峙するハルキ。
「おい、ハルキ、ガチだからな! お互い手加減なしだぞ!」
「お、おお、わかった」
今日も男子のメイン審判はタイガーだ。
「準備はいいか?」
うなずく2人。
サインを送るタイガー。
カーン。
ゴングが鳴る。
「よろしくお願いします」
二人とも一礼した後に、鎧を生成する。
タイガーの影響か、土の鎧は男子で大流行だ。
完成のタイミングはほぼ同じ。
「おっと、ハルキ選手、やっぱり鎧の生成スピードは負けてませんね」
「よく練習したのだろう」
鎧生成終了後、飛び道具を放つユーシ。
小石を避けながら近づくハルキ。
何発か当たるが無視して接近し、大ぶりのパンチ。
かわされる。
離れて小石を放つユーシ。
また、避けながら近づくハルキ。
大ぶりのパンチ。
かわされる。
同じことが繰り返えされる。
「とっておきだ!」
石の礫と呼べる量が飛来する。
しかし、ハルキは亀のようにそれをやりすごすと、再び接近する。
「しつけぇし、硬てー!」
再び同じことが繰り返される。
徐々に1発のパンチにすべてを込めながら、接近をあきらめないハルキの姿に応援が集まる。
そして、変化は現れるのはユーシが先。
「ユーシ選手、どうしたのでしょうか、弾数が減っています」
「さすがに、あれだけ撃てば疲れたのだろう」
とうとう接近を許したユーシの鎧をハルキの拳がかすめる。
砕け散るユーシの鎧。
驚くユーシはバランスを崩してこける。
そこにハルキの寸止めの拳。
「そこまで! ハルキの勝利!」
タイガーが試合を止める。
寸止めの手を引っ込めて、ユーシに手を貸すハルキ。
「ハルキ、やるなぁ、はぁ、はぁ、スタミナ、すごいな」
「持久走は得意なんだ」
「……そうじゃ、ないんだが……」
フェニックスがホークをからかっているのが聞こえる。
「ホークさん、またはずれましたね」
「いや、あの……次はがんばる」
実はあの二人、仲がいいんではないだろうかと思ってしまう。
ハルキとユーシが観客席に戻ると、ジョーが祝福してくれる。
「やるな、ハルキ!」
しかし、明日、決勝で当たるマナトの目が怖い。
「おい、ハルキ、何をやった?」
「はい?」
ジョーとユーシも怪訝な顔をする。
「あんな風に鎧が壊れるわけないじゃん。何をしたんだ?」
「何って……」
「……そういえば、変だよね。初めてだよ」
「そうそう、俺の鎧も砕けたな!」
3人に言われるが心当たりのないハルキ。
「そう、言われても……」
次の試合のアナウンスが始まる。
「さて、次の試合、昨日、勝利したモエミ選手とミコト選手の対戦です。ホークさん、どう見ます? こんどは当てて下さいね」
「……うむ、テクニックで言えばミコトの勝利だろうが、持久戦に持ち込めばモエミに部がある。」
「おっと、そうきましたか、ダメですよ、ちゃんと予想しなきゃ」
「えぇぇぇ」
少し壊れるホーク。
モエミとミコトの試合が始まる。
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