モエミ、初戦
「さて、本日の最終試合、ハルナ選手とモエミ選手の対戦です。ホークさん、どう見ます?」
「うむ、モエミはまだ日が浅い。やはりハルナの勝利だろう」
「えっと、準備がまだのようですね。姫にも聞いてみましょう、姫はどう考えますか」
「はい、楽しいです」
「あの、そうではなくて、次の試合なんですけど」
「ん? 楽しみだよ? モエミちゃんの練習は見たことあるけど、試合は始めてだもん」
「あ、言われてみればそうですね。先ほど、ハルキ選手は公式戦初試合を勝利で飾りました。モエミ選手はどうなるでしょうか! まもなく試合開始です」
オウルとタイガーが手招きする。
準備完了ということだろう。
ハルナと歩いていく。
分かれて所定の位置につく。
(さて、あんまり考えてなかった。ハルナは土魔法系だっけ。エリカの件ばかり考えてて、ハルナの対策、考えてないな)
「準備はいい?」
オウルの声に、二人とも頷く。
オウルが手をあげる。
カーン。
ゴングが鳴る。
(どうしよう……とりあえず)
『風陣』
風がモエミの周りに集まる。
フェニックスの教えの一つ。
動いていない空気を、いきなり動かすと時間がかかる。
空気の流れがないときは、まず自分の周りの空気を動かし、次の魔法の発動の準備をすること。
(でもなんで、魔法障壁は教えてくれないだろう。知ってて当然って感じ?)
ハルナも動きがある。
土で大きな薙刀を作り上げる。
薙刀を持つ姿が凛々しい。
いつものほほ笑んでるハルナはどこかにいってしまった。
(絶対、薙刀の経験者だよね? あれって重たくないのかな?)
薙刀を振り回す。
滑らかな動き。
経験者の動き。
気合が伝わってくる。
(な、なんか……怖い! まずいわね、これは……)
「ハッ!」
鋭い声とともに、ハルナが踏み込んでくる。
「うわっ!」
あわててモエミは風をまとって回避。
ハルナにも効果がないと思いながら、一応、風をぶつける。
「キヤ」
なぜかハルナが尻餅をつく。
「へ?」
ハルナが手を挙げる。
「まいりました~」
オウルが一瞬、逡巡したあと宣言する。
「勝者、モエミ!」
場が沈黙で満たされる。
「えっと、モエミ選手の勝利のようですが、なにがあったんでしょう、ホークさん」
「う、うむ、何か空気の固まりかなにかをあてたのかもしれん。実のところ、よく見えなかった」
「そ、そうですよね、それでは……」
「えー、つまんなーい」
姫がマイクをフェニックスのマイクをひったくった。
「みんなも、つまんないよねぇ~」
「……あっけなかったよな」
「なんか早くね?」
「見えなかった」
「ハルナさんって、あんなに打たれ弱かった?」
「何の魔法?」
姫の言葉に反応するギャラリー。
駆け寄るオウル。
姫がほっぺたを膨らまして何か言っている。
「えっと……」
ハルナが自ら立って、お尻の泥を払う。
「ハルナさん……大丈夫」
ハルナが近寄ってくる。
「うふふ。勝てる気がしなかったんので、早めに降参したんだけどねぇ」
「勝てる気がしなかったのは私です」
姫とフェニックスをオウルが話をしている。
ホークとタイガーも参加する。
「なんかもめてるね。ごめんね。もうちょっと、うまくやればよかったかな」
「え、いや、そんな……」
「あのね、私、薙刀やってるけど、演武と寸止めなの。相手に当てるとか、本当は嫌なの。バレると標的にされそうで、誰にも言ってないけど」
「そうなんだ」
「甘いよね。たぶん。でも、モエミちゃんを攻撃したくない。だから、降参した」
「あ、ありがとう。でも、ルナ、ヒナよりも強いんじゃ……」
「うふふ、ルナの変化魔法と、ヒナの電撃にはからっきしで……」
「あ、そうなんだ」
(魔法防御が低いって感じ?)
フェニックスがマイクで話し出す。
「今の試合は、モエミ選手の勝利です。えっと、それで……」
口ごもるフェニックスから、マイクを取り上げ、姫が話し出す。
「みんな、モエミちゃんの魔法見たいよね?」
「「「……」」」
マイクから口を離し、「ここはイエーイとか言うところよ」とかみんなに言っている。
丸聞こえ。
「えっと、やりなおし、みんな、モエミちゃんの魔法見たいよね?」
「「「イエーイ」」」
「じゃ、仕方ないかな。今から、えきびじしょん……なんだっけ? そう、それ、エキシジションマッチを開催します。モエミちゃんよろしくぅ!」
嫌な予感的中。
顔を見合わせるモエミとハルナ。
「えっと、どういうこと……」
ハルナは青い顔。
「しょうがないわよ。ちなみに姫の言ってる事って、過去の経験から言って、覆れることが可能と思う」
「……言いだしたら、聞かない」
「そっか、しょうがないよ」
しかたなく手を振ってみんなに応えるモエミ。
歓声が上がる。
姫が続ける。
「では、誰とやってもらいましょうか? えっと、サイコロで決めましょう。いつもの部屋番号で、6なら私ということで!」
(え? 4階組との試合?)
姫がサイコロを振るがここからは見えない。
「てい! あ、これって……てへ、ピーコックさんよろしくぅ!」
(うわー、ここで当たりますか!)
ピーコックも予想してなかったのか、少し驚いた顔をしているが、こっちを見て少しほほ笑んだのがわかる。
ピーコックは、いつも魔法使いらしい恰好をしているが、歩いてくるピーコックは、魔法使いというより、魔女に見えた。
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