モエミ、収賄する
「モエミ姉ちゃん、一緒に食べよう」
モエミが中級組の女子と座る位置を決めかねていると、ちびっ子が袖を引く。
目配せで、了解を得る。
「はいはい、じゃ、みんなでここに座って食べよう」
「わーい」
「じゃ、わたしこっち~」
「あ、私が隣がいい~」
「え……じゃ、膝の上~」
「だめだよ、ご飯の時は~」
ちびっ子達が小さな諍いをはじめる。
「A popular person 人気者ね」
「うふふ、慣れてるわね」
「妹もいるの?」
中級組が尋ねる。
「あ、いや、ミニバスの時に、小さい子がたくさんいたから」
無事、田沼と一緒に帰還した7人は、着替えて夕食に来ていた。
田沼のそばにはスパローが付いている。
土魔法つながりかタイガーもそばにいる。
(いや、タイガーさんは、スパローさんかな。若いっていいわねぇ)
「おねぇちゃん、イチゴ持ってくるね」
「あ、わたしも何かもってきてあげる~」
「わたしも~」
一方で、モエミはちびっこに大人気だ。
「ありがとう」
若干苦笑しながら、見回すとハルキが居た。
「ハルキ、ボロボロだな」
「さすがのハルキもホーク先輩のお供はきついか」
「そうそう、無理しない無理しない」
「腕が上がらないようだな。協力しよう」
憔悴しきったハルキを中級者の男子4人が介助していた。
「わ、悪い、ありがと」
(あれ? 特訓を受けたの? MPというより、HPのバーがかなり削られてる感じね。どんな練習したのか聞かなきゃ)
一方で、突き刺さるような視線を感じる。
なるべく目をあわせないように見るとやはりピーコックだ。
左右に座るルナとヒナの目は死んでる。
ちょっとやりすぎたかな。
でも、今、ちびっ子達に人気がでている理由なのだから仕方がない。
ピーコックに続き、ルナ・ヒナのコンビを撃破したことは、もう広まっている。
3人とも少し横暴で自分勝手なところがあったらしく、被害を受けていた子達からは英雄扱いだ。
(難しいわね。ちょっと勢力図に加わるのが早すぎたわ。3人からの圧力が鬱陶しくなりそうね。異世界まできてチートをもらえない上に、くだらない勢力争いなんてイヤね)
ちびっ子が給仕してくれたフルーツを食べながら、決して笑顔を絶やさずに、黒いことを考えるモエミ。
ホークが壇上に上がる。
「えー、いろいろあったが、入れ替え戦は予定通り行う」
「「「おぉぉぉ」」」
場が盛り上がる。
「4階の部屋がほしい者は明日の朝食までに、男子は俺、女子はフェニックスに申し出てくれ。明日の午後からトーナメント形式の予選を行う。挑戦を受けるものはスパロー、ピーコック、クロウ、ウルフの4人となる。トーナメント1位が指名の優先権を持つものとする。ウルフの兄貴が抜けて、ウルフが部屋をもらって以来、部屋の入れ替えがない。中級者はがんばるように。多くの参加を期待する」
ちびっ子たちがモエミに群れる。
「ねぇ、出るの?」
「そうねぇ……」
モエミが言葉を濁すと、中級者の女子が一斉にモエミを見る。
「What?」
「うふふ?」
「モエミちゃん、後で、打ち合わせよ?」
「えっと……、はい」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一番広い個室である4階のモエミ・ハルキの部屋で集まるのは必然の流れ。
「で、どうやってルナとヒナを倒したの?」
「えっと……」
掻い摘んで話すモエミ。
「Ah、でもよく向かってくる魔法に当てられたね」
「うふふ、普通は盾みたいな感じで待ち構えるもんね」
「見えない空中戦?」
「あ……そう……なんだ」
ルナが驚いていた理由がようやくわかるモエミ。
「うふふ、それに、よく、砂地で泥沼の魔法ができたね」
「「そうよね」」
「ええ、ちょっと仕込みを……」
「Oh,あらかじめ水を撒いてたとか?」
「うふふ、罠みたいなもの? 悪い子だぁ」
「えぇ、まぁ」
詳しくは話さないモエミ。
「By the way,入れ替え戦、出るんでしょ?」
[ええっと……]
「うふふ、迷ってるの? 当然出ると思ってた」
「ルナ、ヒナにも勝ったのになんで?」
「前にピーコックさんに魔法で攻撃されて、そのときはなんとかなったけど、今日、ルナの魔法を見たけど、明らかにそれより強い魔法だった気がするの。あらためて、ピーコックさんの魔法からよく逃げられたなと、ちょっと思ってね」
淡い沈黙。
「うふふ、そうよね、来て数日だもんね」
「あ、いや、出るわよ、出るけど、出るからには勝ちたいのよね……そうだ」
モエミが立ち会が得る。
クローゼットを開けて、奥のほうから何やら取り出す。
「あ、これ、姫からもらったチョコレートなんだけど」
「「「!」」」
歓喜の前に驚愕。
「Oh,really?」
「うふふ、チョコです」
「……出したということは、食べさせてもらえると?」
(やはり、チョコはレア、いやSレアクラスね?)
「えっと、チョコってめずらしいの?」
「「「もちろん!」」」
「しょうがないわねぇ。じゃあ、どうぞ」
歓喜の声があがる。
「Oh,My……」
「うふふ、チョコだ」
「やはり姫なら入手できるのかぁ。い、いいなぁ、モエミ」
微笑むモエミ。
包みを広げて、1かけらづつ渡すモエミ。
そもそも見せたのはチョコの1部。
駆け引きに使えそうだと判断したモエミは食べずに全てとキープしていた。
「で、さぁ、不安だから、もうちょっと、いろいろ教えてもらえないかななぁ……」
全員が、くちにチョコを含んだまま頷く。
チョコを味わっていると、ガチャリとノックなしでドアが開いた。
お気に入りいただければ
ブックマークや評価などしていただければ嬉しいです




