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ハルキ、試合う

 ベアが柿を丁寧にむく。

 慣れた手つきだ。

 まわりでウサミンとフォクシーが興奮して、テーブルに体重をあずけ、足をバタバタさせて待っている。


「早く、早く、早くむくのです。柿は珍しいのです」

「早急に賞味いたしたい!」

「あぶないからね、まってね」


 むき終わって、爪楊枝を刺して、テーブルの上にのせる。

 さっと手を出すウサミンとフォクシー。


「おー、おいしいです。もっと欲しいです」

「うーん美味!」


 ベアが一口食べる。


「この柿はうまいですね」

「そうだろ。うまいだろ」


 かすかにドヤ顔のホーク。


「ええ、今回の探索で一番のお手柄じゃないですかね」


 蜘蛛の巣の横の小屋の前で柿を食べる。

 この世界にやってきたときに、野イチゴを食べたところだ。


「シバッチ、食べるですか?」

「肉なら食いたいが、フルーツだろ? 俺はいい」


 ウサミンが落下物の整理をしているシバッチに声をかけるが断られる。

 全員が食いしん坊ではないらしい。いや、食いしん坊か。


「まだ残ってますかね」

「ああ、たくさん残っている」

「それでは収穫部隊を編成したほうがいいですね」

「せっかくだから、そうしたいな」

「スパローが戻ってきたら相談しましょうね」

「そうしてくれ、場所は俺かハルキがわかる」

「そうですか、では、その時はお願いしますね。ハルキ君もお手柄ですね」

「ありがとうございます。あの、ご相談が……」


 ハルキがまっすぐベアのほうを向く。


「えっと、僕かね?」


 ベアがちょっと驚く。

 ホークも隣で怪訝そうな顔をする。


「はい。あの、お仕事を手伝いますから、ニンジンを少しもらえませんか?」

「ニンジン?」

「はい、ニンジンです」


 顔を見合わせるベアとホーク。


「何に使いたいのかは知らないが、ニンジンはたくさんできる一方で、人気がない……とくに小さい子が食べたがらない食材なんだ。スパローの作るニンジンは天下一品なのにね。かなり在庫はある。本当はスパローに確認しないといけないんだろうけど、ニンジンなら少しなら持ってっていいよ」

「ありがとうございます」

「何に使うんだ?」


 ホークがハルキを見やる。


「特訓です」

「「特訓?」」


 顔を見合わせるホークとベア。


「ふふふ、そうかね。まったく面白いな君たちは。そういえば、姉ちゃんは「実験です」っていってたね?」

「はい?」

「あれ? 同じ部屋だろ? 見てないのかね?」

「えっと……」

「電線とか水槽とか、あとビニールでできた、なんというか、うーん、よくわからないものを、いろいろと持ってったね」

「あ、そうですか……、あ、僕も何かあればもらえますか?」

「あぁ、そこの置き場にあるものは、基本的にいらないものだ。持っていっていいよ」

「ありがとうございます」


 ホークが立ちあがる。


「フェニックスに報告に行ってくる。ハルキはどうする」

「あ、ちょっと、寄り道していいですか」

「そうか、今日はお手柄だったから、好きにしていいぞ。魔力ももうないだろう」

「あ、はい。ありがとうございます」


(おかしいな、魔力、まだあるんだけど……、ま、自由時間がもらえるのなら、そういうことにしておこう)


「おーい、味見してんだろ? こっちにももって来てくれよー、せこいぜー」

「そうだ、そうだ、おこっちゃうよーん」


 落下物の見張りの当番のグレイとクロミンが、蜘蛛の巣の上から要求する。


「わかった、わかった、ちょっとまて」


 ベアが柿をむきだす。

 夕食まで、まだ時間がある。

 柿をむき終わったベアに連れられ、近くに保管庫でニンジンを受け取ったハルキは、城の前のグラウンドまで戻る。

 あたりを見回す。

 城の窓の中までは確認できないが、周りに人はいない。

 できるだけ目立たないようにグラウンドの端沿いに、今しがた森から帰還した場所に向かう。

 再び森に入ったハルキは、魔法を発動して、先ほど覚えた柿の木へと向かう。

 朝、森に入ったときとは別人とも思える上達を見せつつ、柿の木へ到着する。

 そのまま静かに、ウサギを捜す。

 因縁の黒いウサギ。

 ホークには発見を伝えていない。

 呼吸を整える。

 ホークと登った木に登る。

 再び探す。

 静かに、木と一体化したかのように、静かに探す。

 ほどなく見つける。

 おそらく、このあたりに巣があるのだろう。

 ハルキは静かに近づく。

 しかしながら、草木を踏む音までは消せない。

 黒ウサギが気が付く。

 しかし、黒ウサギは逃げない。

 さらに近寄る。

 他の2匹もやってくる。

 3匹の黒ウサギと対峙するハルキ。

 よくみると、片耳がちぎれたウサギ、左目のところにどこかの剣士のような傷があるウサギ、そして見るからに大きめのウサギの3匹だ。

 ウサギのくせにふてぶてしく、こわがりもせずにこちらを見つめる。

 何のようだと言わんばかりだ。

 おもむろにリュックの中に手を入れるハルキ。

 警戒する3匹。

 リュックの中から取り出したのはニンジンだった。

 目の色が変わる3匹。

 ハルキは静かに魔法を発動させる。

 そして、土の鎧をまとうと、鎧の形を工夫し、おでこ、腹、背中にニンジンを取り付けた。

 構えるハルキ。


「さぁ、ニンジンがほしければかかってこい」


 男子、3日合わざれば括目せよ。

 1日しか経っていないが、かなり練習した。

 特訓も受けた。

 昨日とは違うはずだ。

 どれだけ強くなったか試してみたい。

 3匹の黒ウサギは意図を察したのか、以前見た配置につく。

 これが彼らのフォーメーションなのだろう。


「違うか」


 自ら心境の変化に気づくハルキ。

 一度、構えをといて頭を下げる。


「よろしくお願いします」


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