モエミ、契約してしまう
「あら~、奇遇ねぇ、ほとんど方向が一緒じゃない」
「あは、よろしくですぅ」
とりあえず、あいさつするモエミ。
「そろそろ分かれないと意味がない」
にべもないオウル。
「わかってますよ、オウルさん。じゃ、そろそろこの辺で分かれますか。でも、偶然、また会ったらよろしくですわ」
偶然の部分を強調するピーコック。
「バイバイ~」
陽気なルナ。
「あ、あたしもこっちにいくわ、ね、ヒナちゃん、いいわよね」
ちょっと挙動不審なスパロー。
「いいよぉ、ピーコックさん、オウルさん、ルナ、またね。えっと、きゃははは、モエミちゃんもまたね」
意味不明に笑うヒナ。
「あぁ、どうもです」
北側は、湖……というより少し大きめの池を迂回すると、林に入る。結構大きな木々が多いが、下生えの植物が少なく、起伏もなだらかな登りであり、歩きやすい。
歩いてしばらくは離れて歩く、ピーコック・ルナのペアと、スパロー・ヒナのペアの姿が時折見える。
動物の影はない。
鳥もあまりいないようだ。
木漏れ日の中を無言で登る二人。
風もなく、小枝や枯葉を踏みしめる音が静寂さを引き立てる。
(やはり、地球ではなさそうね。でも植生は日本だよね)
考え事をしていると、木々が低くなり、見晴らしがよくなる。
北側が少し標高が高いのか、木々の向こうに城が見える。
だんだんと木々がまばらになるのが見て取れる。
「あの……」
思い切ってモエミが話かける。
立ち止まって、モエミを見つめるオウル。
「助けていただき、ありがとうございました」
「……多分、助けきってない」
「いえ、考えて準備する時間があります。ありがとうございます」
再び歩き出すオウルは、あたりを警戒しながら、小さな声で続ける。
「あなたの魔力は巨大。本来、帰ることを考えるのであれば、あなたを敵に回すのは悪手。あの子たちは目の前のことしか考えていない」
突然の告白に返す言葉がないモエミ。
「あなたは頭がいい。わたしはあのようなタイプの子達とは群れたくない。話をしてて面白くない」
「……あ、ありがとうございます」
(うわぁー、このメガネっこ、辛辣!)
「でも、ルナ、ヒナは結構、強い。というより怖い」
「強力な魔法が使えるんですか?」
「それもあるが、相手に攻撃魔法を使うことに躊躇がない」
「……なるほど」
「3対1にはさせない。でも2対1はありうる。いっそ、このまま逃げるのもあり」
「そうですよね。よろしければ、あの2人の得意魔法を教えてもらえるというれしいんですけど」
再び立ち止まるオウル。
「条件がある」
「条件ですか?」
ドキドキするモエミ。
よく見るとオウルはかわいい顔立ちをしている。メガネを外すとかわいかったという典型ではないだろうか。
「私には、彼女たちの得意魔法だけでなく、この先の地形まで含めて、可能な限りの情報を提供する準備がある」
「……はい。それで条件とは」
ちょっとうつむいてなぜか頬を染めるオウル。
「モエミを同志と見込んでのお願いだ。他言無用でお願いしたい」
「な、な、なんでしょうか」
もっとドキドキするモエミ。
「あ」
「あ?」
さらに顔をそらし、恥ずかしがるオウル。
今までのちょっとクールそうな印象からほど遠い。
「アニメの話が聞きたい」
「アニメ……ですか」
「たぶん、もう何年も見てないのだ」
今度はきちんと目を合わせてくるオウル。
(かわゆす!)
「……承りました」
さっと、オウルの手を取って握りしめるモエミ。
「私の知りうる範囲でよければ」
「契約成立?」
「ええ、あの丘の向こう側を見にいきましょう!」
それを聞いてかるく頭をふる。それは「それは理解するが、今はそれではない」と語っているようだった。
何かポージングを始めるオウル。
「告げる! 汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に! 聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら我に従え! ならばこの命運、汝が剣に預けよう……!」
(そっち!? ま、眼鏡だし! えっと……)
「我が名に懸け誓いを受ける! 貴方を我が主として認めよう!」
ちょっとモエミもポージングを行うと、満足そうにうなずくオウル。
だが、次の瞬間、我に返り、うつむいて頬を染める。
「す、すまない。つい、興に乗ってしまった」
「いえいえ」
「しかし……」
再びじっとモエミを見つめるオウル。
「私の目に狂いはなかった!」
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