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モエミ、やっぱり目をつけられる

 モエミが、昼食をとりながら、中級者クラスの女子と女子トークを繰り広げていると、ホークとフェニックスが壇上に立つ。


「えー、連日ですまないが、田沼が迷子のようだ。姫に頼んで城の周りを見てもらったが、近くにはいないとのこと。一応、引き続き捜していただいているが、遠いと、発見しても、救援に時間がかかるので、午後は久しぶりに、田沼の救援を兼ねた探索隊を組織する」


(迷子?)


「初めての者もいると思うが、何か有益な物品が落ちてないかとか、果物の木が生えてないかなどを確認しながら、壁に向かって捜索してくれ。あ、もちろん、メインは田沼の捜索。危ない生き物は黒ウサギぐらいだが、追い込まなければ、向こうからは攻撃してこないはずだ」


(……行方不明?)


「田沼を見つけた班のみ、田沼を連れて、途中帰投してくれ。ほかは、壁まで行ってくれ。班分けは、昼食後、発表する」


(……家出?)


「この黄色いキーウィ甘いね。ところで、壁までどれくらいの時間がかかるの?」


 モエミがエリカ、ミコト、ハルナに向かって尋ねる。


「緑色のキーウィも甘いわよ。壁まで? えっと、1時間くらい?」

「1時間じゃつかないわよ、1時間半はかかるわ」

「休憩入れて、半日で往復できるから、そんなもんかな」


 1時間半。そう言えば、初日に壁まで5キロくらいと言っていたから、そんなものかと納得するモエミ。


「リンゴって、みずみずしいのより、ちょっと時間が経って、さくって感じのほうが好きなのよね」

「わかるわかる。甘いのが多いよね」

「壁って、どんな感じなの?」

「それは、見てからのお楽しみよ!」

「そうそう、ま、圧巻だけどねぇ」

「登る気、失せるわよ!」

「メロンおいしいわ。あ、もしかして、田沼さん、登る気だったんじゃ!?」

「あー、かもねー、ま、そういう考えなら、説得するより、一度、見たほうがいいかも」

「だよねー、あれ見るとねー」

「このイチゴもあまーい」

「本当? あ、本当だ。スパローさんって本当、すごいよね。商売できるよ」

「そうよそうよ、戻っても、スパローさんのフルーツが食べられなくなるのはさみしいよね」

「だよねー、戻るにしても、何とか連絡とる方法を考えないとねー」

「こら、だめだよ、これ系の話。フェニックスさんに怒られるよ」


(午前中は4階組の少なくとも中級担当者は練習に来ていない。来ていないのに捜索していない? それとも近所だけ捜索したのかな。……近所だけなら、もっと早く手がうてるはず。うーん、田沼さんが行方不明なのがわかっていながら、大々的に捜索しないのは、現実を見せるため? ワザと後手に回ってる? ……いや、そうじゃなくて、きっと慣れてるんだ、こういうことに……)


「モエミ、やさしいのね。大丈夫よ、どっかで見つかるわよ」


 思案顔のモエミに、早くも名前を呼び捨てで、ミコトが肩をたたく。


「That’s right! 城の外で行き倒れになった子なんていないし」

「最悪、姫のミツバチがきちんと見つけてくれるわ」

「ミツバチ?」

「姫の飼っているミツバチは、姫の……なんだっけ?」

「ペット?」

「手下?」

「もしかして、使い魔?」

「おぉ、モエミ、ナーイス! そう、そういう感じ。ミツバチが姫の言うことを聞いてくれるのよ」

「頑張れば、ミツバチの見ているものを、姫も見えるらしいよ」

「え? 視界の共有ができるの?」

「おぉ、モエミちゃん、理解が早いね」


(しまった、まずい、話を変えなければ)


「いやいや、そんなことないよ。それなら、姫が探せば早いのでは?」

「見るのはかなり、疲れるらしいよ。それに、いくら姫のミツバチでも、この世界の全部を網羅してないっていうか……」

「木々が豊かなのは中心部で、壁に近いと、植物も小さくなるし」

「そうそう、花も咲いていないから、ミツバチもあんまり端っこでは見ないもんね」

「え、じゃ、あの巨大な壁にくっついてる蔦は?」

「あー、あれ、なんだろう?」

「……さぁ」

「いいじゃん、ちょうどいいから見てくれば」

「あは、だねぇ」


(そうだ、魔法に夢中になってて、脱出のこと考えてなかった。ま、そういう意味では、壁を見ておくのは悪くないわね)


「姫のミツバチって、蜜を集めるだけじゃないんだね」

「そうよ。でも、蜜集めが、私たちにとっては重要よねぇ」

「「ねぇ」」

「甘いもの少ないもんね」

「あー、ショートケーキ食べたい」

「エクレア食べたい」

「だから、こういう話は駄目だって!」


 小声でたしなめるハルナ。


「おいしそうな話、してるじゃん」

「えー、なになに、まぜてまぜて~」


 比較的、容姿の似た2人が割り込んでくる。着ぐるみで言うと二人とも犬。モエミやハルキと同様に、複数で同時召喚されたレアケース、従妹同士のルナ、ヒナだ。


「いや、何でもないわよ」

「食べたいなって話だけよ」


 にこやかに応対する、ミコトとハルナ。


「イチゴ、いただき! 本当?」

「メロン、いただき! 隠してんじゃないの?」


 果物をつまんだ指を服で吹きながら、きゃははと笑う二人。

 

「本当よ」


 エリカは当たり障りがない範囲の言い方でダメ押しをする。


「あんた、モエミちゃんだったわよね。昨日はすごかったねぇ」

「やるわねぇ、目立つねぇ」


 モエミは理解する。エリカ、ハルナ、ミコトとルナ、ヒナは違う派閥だと。


「それに今日から中級? ちょっと背伸びしすぎじゃない?」

「碌に魔法が使いないのに、気を付けないとだめよね~」


 きゃははと笑う。話を聞いているのかどうかもよくわからない。


「イチゴ、もう1個」

「あたしも、メロン、もう1個」


 二人は絡むだけ絡むと、最後にフルーツをつまみ食いして、また服で指を拭きつつ離れていった。


「えっと……」

「2人とも、正確も魔法も超攻撃的だから、気を付けてね」

「それに……」


 ちょっと言いにくそうな3人。


「あの2人、ピーコックさんと仲がいいの」

「……へぇ、犬だけに雉と仲がいいのか」

「こら、モエミ」

「ダメよ、モエミ」

「あーっと、モエミ、ピーコックは雉じゃなくて、孔雀よ」

「あら~、ごめんなさい」


 わかっているけど、わざといったのがあからさまにわかる受け答え。

 食べる気がなくなった4人は片づけに入る。


「あ、そういえば、班分けはいつもどうなってるの?」

「班分けって言うけど、4階組がバラバラになって、それぞれが誰か相棒を指名して出かける感じよ。昼ごはんの後、指名があるのよ。ただし、いつもフェニックスさんと、落下物担当のベアさんは居残り」

「フェニックスさん抜きで、指名……」


 限りなく嫌な予感しかしないモエミが、食器の片づけを終え、ホールに戻ると、壇上にホークが立ったところだった。


「えっと、では班分けを発表する。ちなみに居残りはいつも通り、フェニックスとベアに頼む、まず……」

「「あの~」」


 ルナ、ヒナのコンビがユニゾンで手を上げる。


「「お腹が痛いので免除にしーてくーださーい?」」

「お腹……」


 ホークはフェニックスを振り向く。

 咄嗟のことに、首をかしげるフェニックスだが、傾げた首を縦に振る。

 ホークが向き直る。


「わかった。ほかの者はいいな。それでは……」

「はい!」


 ピーコックが手をあげて、宣言した。


「私は、モエミさんと組みたいですわ!」


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