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プロローグ

 召喚は恐ろしい。


 第1に召喚先はもちろんであるが現代日本ではないことが多いと思う。先に言葉の問題を思い浮かべるかもしれないが、その前に治安が悪いのを心配したい。世界の中でもっとも治安が良いと思われる日本から、いきなりそうでないところに召喚されるなど、正に生命の危機である。1回目、2回目の召喚の時は、最初の数分で死ぬところだった。1回目は治安とは別の要因ではあるけれども。

 死に戻りみたいなチートな設定になっていればいいが、そんな保証はない。全くない。だって今までチートは経験したことがない。もちろん死んだこともない。死んでみて確認する気も全くない。

 アニメやラノベのように、それなり地位におられる方々が召喚の儀式を行い、それなりの準備をもって優しく受け入れてくれるならよいかもしれないが、異世界召喚どころか、現在の地球でも、突然、治安の悪い国に瞬間移動するだけで、私は生きていく自信はない。


 第2に言葉だ。赤ちゃんに転生する系なら、じっくり現地の言葉を覚えることができるが、そうでないなら、よくある自動翻訳設定でも神様にいただかないと、会話はできないだろう。もちろん文字だって読めない。自動翻訳こそチートだと思う。

 1回目の召喚の時は機械の翻訳機があった。2回目は女神さまの加護というか、そういう世界だった。3回目は日本語ベースの世界。こんな幸運が毎回続くとは限らない。ちなみに1回目と2回目は、結局、ほとんど字が読めないままに帰ってきた。


 第3は、帰って来れる保証がないことだ。誰かがそれなりの段取りを持って召喚したからといって、帰す手段を準備しているとは限らない。私のように、たまたま召喚のようなことが起こった場合、帰って来れるだけで奇跡ではないかと思う。2回目、3回目は呼ばれていったような気がするが、1回目はたまたま引っかかった感――野良召喚とでも言うべきか――が強い。年間にかなりの人数が行方不明になっているという番組をテレビで見たことがあるが、この何割かは召喚なのではないだろうか。もっと言うと、召喚って、もしかして、ちょっと昔なら神隠しと呼ばれる類のものじゃないかなと思う。


 したがって、召喚は恐ろしい。できればもう勘弁してほしい。


 女子としてどうかとも思うので友達には言ったことないが、正直に言うと、魔法を使ってみたり、ステータスが開いたりするようなことにはちょっと憧れがある。そういった異世界召喚限定で、完全に安心・安全なら行ってみたいかもしれない。でも現実的な考えから思慮すると、これってVR技術の発展をまったほうが絶対安全だし、そっちのほうがいい。

 経験から言うと、結局3回とも、魔法は使えず、ステータスもメニューも開けず、鑑定もできなかった。おまけに異世界召喚はリスクが高い。

 3回という少ない召喚経験の中から、いつもなぜか一緒に召喚される弟のハルキと話し合った結果、冷静に考えて召喚は超危険であるとの結論に達し、2人で対策をとることにした。

 しかしながらとれる手段は少ない。やれることといえば、召喚される条件が似通っていたことから、その条件を整えないように頑張るというものぐらいだった。

 その条件とは、

・場所としてはテーマパークに行くと召喚されるらしい

・3回とも姉弟が一緒に召喚されている

・2人っきりになったときに起きる

 というものだった。笑ってはいけない。真剣に考えたのだ。

 実際、私が小学校3年生の時に召喚されるまで、市内の水族館に姉弟で何回も行ってはいたが、同じ市内で近いため、私の友達、ハルキの友達と大人数で行くことが多く、2人っきりという場面はなかったように思う。小学校3年の時に、隣市のテーマパーク「ルナ・ワールド」で2人乗りの乗り物に、姉と弟で乗ったのが運の尽きだったようだ。ちなみにそれ以前は、弟は幼稚園だったため、保護者が一緒にのる乗り物しか乗れなかった。

 3回目の召喚から帰ったあと、この結論を2人で導きだした。家族で旅行する時が一番危ないような気がすることから、私も弟もバスケットボールのスポ小に入った。私の住む地区では、男子と女子のバスケのクラブは別々なので、練習時間も違えば、試合の日にちも違う。従って家族旅行は激減。行ったとしてもテーマパークは2人で反対。特に忍者を中心としたテーマパークに行こうと父親が言い出したときは、生きて帰って来れる自身がなく、死ぬ気で反対した。

 頑張ったかいもあったのか、1回目の召喚から毎年恒例だった召喚は、そのまま3回で途切れ、再度召喚されることもなく、最後の召喚から2年が経過していた。中学生にもなり、部活にテスト。家族で旅行に行く時間がない。

 ちょっと油断していたのかもしれない。

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