テンプレ異世界召喚を真っ向から否定して第四の壁も易々突破する男子高校生とテンプレ異世界召喚しかできない神様のどうしようもないやり取り。
ちょっと第四の壁突破系主人公の小説を書きたくなって練習に書きました('ω')
恥ずかしいので、しばらく公開した後に削除or封印の予定です。
「こういう強引なのは感心しないな」
俺は目の前の男とも女とも見える存在に、開口一番抗議を叩きつけた。
「えっ……ちょ、えっ?」
「まぁいい。俺は帰る」
「待て待て待て、ここどこかわかってる?」
やたらと真っ白な空間。
常に落ちてるような感覚。
アレだろ?
なろう系ラノベによく出てくる神様がいる場所だろ?
「わかってるならなんでそんな態度なの……ッ?!」
「心読むとこまでテンプレか。まったくもって度し難いな!」
「ちょっ……あっ……あれ……読めない、なんで?」
そりゃ読まれないように工夫してるからだ。
「それはともかく、オホン。君は他の世界に転s」
「しない。以上。帰る」
そう、夕方5時55分からのアニメが俺を待っている。
今期のアニメで最も楽しみにしてる神アニメなんだ。
一話たりともリアルタイム視聴を見逃すつもりはない。
「おかしいでしょッ! なんでそんな平然としてられるの!?」
「この展開にはもう飽きた。これを読んでる読者諸君もそう思ってるはずだ」
「……え」
だいたい、朝から煩わしいことこの上ない。
教室のど真ん中に魔法陣を出現させるわ、無人のトラックが突っ込んでくるわ、妙な霧に包まれるわ。
どれもこれもテンプレ過ぎる。
もっと意外性のある誘拐方法はないのかと問いたい。
問い詰めたい。
そうこうしてるうちに、放課後になって謎の爆発事故。
次いで航空機が学校へ墜落。
何としてでも俺を殺そうという気概がようやく見えてきたかという時に、諦めたかのような突然の転移だ。
なぜもう少し粘れなかったのか。
「大体キミね、魔法陣は叩き壊すわ、トラックは避けるわ、霧は無視して抜けてくるわで本当に人間?」
「やっぱりお前の仕業か。いい加減やめたらどうだ……転生とか転移とか。オリジナリティの欠片もないぞ」
読者諸君も、もうお腹いっぱいだろ?
これで俺がチートもらって「ステータスオープン」とか言い始めたら目も当てられない……そう思ってるはずだ。
安心しろ。
RPGのようなステータスで人間が測れるわけないし、どうでもいい理由でモテモテ! とか現実味の欠片もない事は起こらないから。
あと「現代ではこんなこと常識だ」なんて得意げな顔もする予定はない。
「あの……いったい誰と話してるんですかね」
「うるさい黙ってろ。お前よりずっと重要な存在だ。……とにかく、お前の希望には添えないので、とっとと俺を帰してくれないか」
「いや、だから、異世界に行ってもらわないと始まらないわけで」
「何を始めるって言うんだ。まったく……右を向いても異世界、左を向いても異世界。現実でも特段上手くいってるわけじゃない俺が、異世界でどうこうできるわけないだろ?」
「その為に、キミにスキルを授k……」
近寄ってマネキンみたいな神を平手打ちする。
「それが安直だと言ってるんだ」
「ヒェッ……」
異世界での言語パックがついてきます?
いくらでもアイテムが入る魔法の収納スペースが付与されます?
目を凝らすだけで鑑定できます?
ちゃんちゃらおかしい。
テンプレはもういいんだよ。
そういうのは、『なろう』でやってくれ。
……これも『なろう』だって?
キミたちは実に賢明だ。
わかってるなら右上に、ほら、『×』ボタンが見えるだろ?
あれを左クリックするだけの簡単な作業に戻りたまえ。
まったくもって無駄な時間を過ごしていることを、ここにお知らせする。
……?
「スマートフォンで読んでるからブラウザボタンはありませーん」?
ホームボタンでも押せばいいだろう。
主体性を持って読むのをやめることをお勧めするよ。
「わ、わかったよ。どうしたいんだい? キミは」
「だから帰せ」
「それはできない」
「できるかな? と聞いてるんじゃない。やるんだよ」
まったく神を嘯く癖に、使えないやつだ。
「できるわけないだろ! 導入にケチをつけられたのは初めてだよ!」
「役立たずが。はあ……。それで? 俺を送るとしてどういう塩梅にしてくれるんだ?」
まぁ、責めるだけでは大人げない。
譲歩するフリだけでもしてやろう。
「えーっと、キミが行くのはいわゆる剣と魔法のファンタジー世界で……」
「このダボがッ!」
再度の平手打ちを神に加える。
「ヒェ……ッ なんで? 何でぶつの? 神様なんだよ?」
「うるさい。お前が神だなんて俺は認めないぞ」
いい加減、剣と魔法の事は忘れてくれないだろうか。
『異世界イコール剣と魔法』みたいなオリジナリティの欠片もないことを、よくも恥ずかしげもなく口にできる。
何故そこで「謎の巨大生物ひしめくカンブリア紀で……」とか言えないんだ、このクソテンプレ野郎!
読者ウケする?
バカか!
読者ウケで行先を決められてたまるか!
「じゃあ、どうしろっていうのさ……」
「お前の受け持ち世界は剣と魔法の世界しかないのか?」
「……はい」
ホント使えない。
今世紀で最も使えない。
「わかった。……それで?」
「ええと、魔王がいて」
「ああ」
「それを倒す勇者として……」
「勇者召喚で呼ばれました、と?」
「……そう、だけど」
脛を蹴り上げる。
「ぎゃあッ」
「失せろ。お前のようなヤツがいるからいつまでたってもテンプレが終わらないんだ」
「ひどくない!?」
まったくもって不愉快だ。
どうせ、呼び出した姫様があくどいヤツで奴隷の首輪かなんかつけられそうになるけど、なんだかんだと理由をつけて俺だけ助かるんだろ!
様式美といえば聞こえはいいが、早い話が中古もいいところじゃないか。
「わかった。じゃあこうしようじゃないか……いいか? よく聞け」
「……は、はい」
「俺はなんの力も持たない現状の一般人として異世界へ渡る。言葉も通じないし、無限のアイテム倉庫もないし、便利なスキルもない」
「それはちょっと……」
「黙って聞け」
「は、はい」
「登場方法はこうだ。『農民が畑を掘ってたら芋と一緒に出てきた』」
「いくらなんでもあんまりだ!」
「譲歩してやったのに文句ばっかりだな」
そもそも、異世界のどこの馬ともわからん輩を無条件に信じて魔王討伐をさせる?
どう考えてもおかしいだろ。
それ、勇者って名前の暗殺者だろ?
少しばかりでもまともな国であれば、軍を編成し、適切な配備と補給線をもってきちんと勝利するのが、正しい戦争の在り方だ。
「キミはおかしいよ!」
「おかしいのはお前とお前の管理する世界だ。まったく。もういい、俺はこれで失礼させてもらう」
「英雄になりたくないのかい!?」
「控えめに言って今期の神アニメの感想をSNSに書き込んでる方が有意義だな」
「そこまでッ!?」
さて、帰ろう。
ほら、読者諸君もいつまでもこんなの読んでないで散った散った。
「帰れると思ったら大間違いだぞ……って、帰った!? 普通に帰っていった……ッ!?」
当たり前だ。
執筆者すら俺を制御できないんだぞ。
特に、あいつ今酔ってるからな。
これに懲りたらテンプレとかやめてくれよ。
そうだな、現実世界より文化レベルが高い世界なら行ってやってもいいぞ。
では、諸君。
これでこの話は終わりだ。
すみやかに解散して、爽やかな気持ちで評価ボタンを押したら、きれいさっぱり忘れて普段の生活に戻るといい。
ここまで付き合ってくれたことに感謝はするが、暇を持て余すのは良くない。
たまには外に出て、神アニメでも鑑賞するんだ。
いいね?
【スペシャルサンクス】
ひょろ氏
名前の使用に快諾いただきありがとうございます('ω')!