表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

クレア 6

時すでに遅し、とはよく言ったものだ。

「まあ、まだ大丈夫でしょう。」

「もうちょっとしてからでも。」

そう言いながら一日、一週間、一か月、一年と経過した。

まだ大丈夫だと高を括っていたのが悪かった。


それはある日突然、国中に張り出された。


『本日より身分を問わず皇太子様の妃見習いを募集する。

希望する者は応募用紙に必要事項を記入し役所に提出せよ。』


更に下の詳細を読むと、まずは第一選抜が履歴書・面接。

第二選抜が教養・健康診断テスト。

最後に皇太子との顔合わせを行い皇太子が気に入るかどうかで決まるようだ。


ダリアが喜々として応募用紙にサラサラとペンを走らせ、両親の認印とサインを貰っているのをクレアはただ不貞腐れた顔で見ていることしか出来ない。


反対したいが堂々と反対出来る名分が見つからず金平糖でもガジガジとかじって紛らわすことしか出来ない。


ごちゃごちゃになっている頭の中をまずは整理してみよう。

もしかしたら良いアイデアが見つかるかもしれない。


メリット

1、もしマレ家から妃が排出できればマレ家は安泰、名も売れ更に家業は盛り上がるだろう。

更に子が出来れば王家へと名を連ねることが出来るかもしれない。

2、何より本人であるダリアが希望している。

母に軽く諦めるように諭された時も、愛されなくても傍にいるだけで幸せだと言い切ったダリアである。

本当に切望して掴んだチャンスだ、応援したい気持ちもある。


デメリット

1、ダリアと離れ離れになり、たまにしか会うことが出来なくなってしまい寂しい。


ああ、やっぱり駄目だ。

いくら考えてもメリットのほうが大きい。


寂しい、だけどダリアが幸せになるのなら、だけどやっぱり。

その繰り返し。

あの応募用紙を今すぐ奪って破りたい衝動を何度抑えただろうか。


「嫌だ嫌だ嫌だ。」


「クレア姉ちゃん、五月蠅い。いい加減にしろって。

ダリア姉ちゃんだっていつかこの家を出るんだ、それが少し早まっただけの話じゃないか。」

「で、でも・・・。」

「王家へ嫁ぐなら苦労することもないだろうし、何より大好きな皇太子様がいるんだ。」

「そうだけど、でもね、」

「ずっと一緒に居られるわけじゃない、そろそろ離れるべきだ。」

「一緒にいたっていいじゃない。」

「それはダリア姉ちゃんが望んでいない。望んでいるのはクレア姉ちゃんだけだ。」

痛いところを突いてきた。

「・・・クレア姉ちゃんとダリア姉ちゃんは違うだろ?

ダリア姉ちゃんのことを今でも養子とか妾の子とか言って侮る奴もいるんだ。

もしそれが嫁いだ先でも続くのなら可哀相すぎる。

それならせめて離れるなら大好きな人の元へ行かせてあげなよ。

幸い後宮なら侮る奴もいないだろうから安心できる。」

王妃以外が全て妾になる後宮なのだから、と苦笑した。



マレ家はきちんと税金を納め罪を犯した者もおらず、たまに募金やボランティア活動もしている善とした家柄である。

ダリアは婚約者もおらず婚姻歴もない。

養子ではあるが実子のように可愛がって大事に育てられているのは周知の事実、履歴に何も問題はない。

容姿も幼い頃から変わらず、いいや、それ以上に輝きを増した。

可愛らしい小さな蕾は綺麗で鮮やかな大輪の花へと成長した。

かといって性格は高飛車でもなく我儘でもない。

大人しく控えめで思いやりがある優しい女性へと育った。

どこへ出しても自慢できる、それがダリア。


あっという間にダリアは軽々と妃見習い試験を全て突破してしまった。


最悪最低な日、この日をクレアは忘れない。


ダリアは銀の刺繍が入った仮婚礼衣装を身に纏い笑顔で馬車に乗って行った。


ダリアの妃見習いが正式に決まり、泣き泣き見送った日。


あんなところに、あんな男の元へなんて行かせなきゃよかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ